八百万の学校 其の弐

浅井 ことは

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平穏な日々

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しばらくして祖母が帰ってきたので、迦具土がお風呂に入っていることを言い、兄の帰ってくる日を聞く。

「金曜に仕事休んで来るって言ってたから、そのまま学校に行くんじゃないかしら?」

「純平に乗せていってもらって私も行くが、本当に一校しか受けないのか?」

「うん。その方が勉強のやり甲斐もあるし、行きたい学部もあるし」

「もう一つ滑り止めに……」

「いいんだって。落ちたら就職するよ」

「だがなぁ……」

「爺ちゃん、もう決めたんだ!」

「まぁ、あとは先生との話を聞くしかないんだが、本当に大丈夫なのか?やっぱり塾に……」

「絶対に嫌だ!」

「翔平は頑固だからねぇ。でも、もし、お父さんとお母さんのことを気にしてるのなら、それはあなたが悩むことじゃないのよ?」

「うん。それも分かってる。兄貴からも色々聞けたし、親父達のことはいいんだ。爺ちゃんたちの籍に入る事も。ただ、高校を卒業したら今までみたいに甘えてばかりも居たくないって思ってて」

「何を言ってるの。まだまだお婆ちゃんたちも元気なんだから、なんの心配もいらないのよ?しかも石長さんのお墨付きですからねぇ」

「あ、兄貴と石長さんてどうなってるの?婆ちゃん何か聞いてない?」

「石長さんは今まで籠りきりだったから、色んなところに行けるのが楽しいって言ってたわねぇ。でも、普通のお友達のようよ?」

「そうなの?」

「おい、術のことなんだが……」

「うわぁぁ!いきなり後ろから声掛けんな!」

タオルで頭を拭きながら、お茶片手に立っている迦具土。

ドライヤーの中に火が入ってると思いこんでて、未だに髪を乾かそうとしない。

夏だからいいのだが……

「兄貴の術のこと?」

「かけ直さなくてもいいと思うんだが、お前どう思ってる?」

「どうって?」

「だから、このまま手伝わせるのか手伝わせないのか、当主のお前が決めないと」

そのままでもいいと思うのだが、兄が帰ってきたら祖父と三人で話し合いたいとだけ言い、部屋に行って参考書と格闘する。

翌日の夕方、早々にご飯を食べ終えて祖父と公園経由で神社に向かうことになったのだが、迦具土は面倒臭いと言って付いてこなかった。

「爺ちゃん、変なのでたら俺やだよー」

「無理はしなくていい。翔平の出来ないものは私が変わりにやろう」

公園で、ぼやーっと見える変なものがいることを祖父に言うと、やはり見え方が違うのか、祖父にはハッキリと見えるらしい。

「困ったな……」

「ちょ、やめて?俺ホントに苦手だから!」

「いや、そうじゃなくて……」

「何?怖いんだけど」

「ほら、まだ鈴の振り方を教えてなかっただろう?」

「あ!爺ちゃんにパス!」

「じゃあ、あの電灯の下のを祓うから見てなさい」

祖父が近付いて、鈴を一振りすると、ぼやっとしていたものが、跡形もなく消える。

「どうやったの?鈴の音もしないし」

「これを使ったのは初めてだが、音はしたぞ?」

「そうじゃん!変なの居たら鳴るんじゃなかった?」

「翔平も一度やってみるか?ほら、足元……」

「ゲッ!」

言われてみてみると、足元に小さな動物のような形をしたモノがいる。

なにかまでは分からないが、紐を持ってただ振るだけでいいと言われたので、言われた通りに振ると、ガラガラジャラジャラガッシャーン!となにかの工事現場の様な音がしてうるさい。

「何これ……それに消えてないしっ!」

「力を込めすぎだからだ。もっと優しく振る感じで。鳴らすと言うより、紐を揺らす感じのがわかりやすいか?」

「こう?」

まっすぐ持った紐をさっきは縦に振ったが、そっと横に揺らしてみると、綺麗な音で『ちりーん』と鳴る。

足元のモノもすぅっと消えたので、ほっとしていたら、次々に祖父が指示を出してくるので、恐る恐る近づき鈴を鳴らすこと一時間。
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