八百万の学校 其の弐

浅井 ことは

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奈良へ__

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「爺ちゃん、兄貴と石長さん仲良かったから……その……」

「純平は会社がある。それに奈良までは日帰りでは行けんのはわかるな?」

「うん」

「まずは今の状況を話すとしようか」

祖父が電話をかけ、わかる所だけと説明をすると、そばで聞いている時には返答があったのに、連れ去られたと祖父が言った瞬間から声が聞こえない。

「兄貴?聞いてんの?」

「……あ。すまん。聞いてる」

「それで、明日翔平が茅葺きの家に行くから、その時にもっとわかることがあると思う。わかったらすぐに連絡するからなるべく電話に出てくれんか?」

「わかった」

兄貴との電話を終えると、迦具土が荷物の整理だけしておけと言うので、二日分の着替えと、祖母にお金をもらってそれを財布に入れる。

毎回思うが、県外へ行く時は基本10万渡されるのでちょっと心臓に悪い……

翌朝はご飯を簡単に済ませ、祖母に渡された重箱と大きめの水筒二つを持って神社へと行き、分かってはいてもキョロキョロとあたりを見回してから茅葺き屋根の文化財の中に入る。

「おはようございます」

声を掛けると、「こっちだ」と道真さんの声が聞こえたので、あの隠し部屋か!と思って降ろしてあるはしごを登っていく。

「何してるんですか?」

「あぁ、話は大国様から聞いているんだけど、その伝言というのが要領を得なくて、思い当たる事だけでもと文献を探しているんだが……よく似た妖などの記述書があったはずで……おお、これだこれだ」

数冊渡され、後は降りてから少し読みたいとの事だったので、降りるのを手伝う。

「あ、婆ちゃんから昼飯にってご飯持たされました。水筒に冷たいお茶と、コーヒーありますけど、コーヒー飲めましたっけ?」

「最近、ブラックコーヒーというのを飲んだけど、あれば目が冴えていい。夜どうし本が読めるから」

それはちょっと違うと思うけど……

とりあえず、手を洗ってくださいとおけに水を入れて持っていき、手ぬぐいを渡す。

「済まぬな。夏の休みと聞いて、前楽しい思いをさせてもらった礼にと、古文などを私でよければ教えようと思っていたのだが、こんなことになってしまっては……」

「いえ、ありがとうございます。勉強は教えて貰えるとありがたいんですけど、石長さんのことが気になって手がつけられそうにないんで……」

「その、聞いた話で考えられるのは、もしや、救世観音に触れたのではないか……という見方が一つできる。黒い何とか……と言うのは妖ではないかとも。夏は盆の時期。そういった輩が増えもするし、あの仏像には聖徳太子の怨念が入ってるとも言われておる。だから、我らもそれには触れることは無い。その事は石長比売もよく分かっておるはずなのじゃ」

「はい……」

「気のせいであってほしいが、あの像はいつも狙われておる。遠い昔からの。私には書物での書付を見るしか出来ぬが……助け出さないことには雷を落とすことさえ出来ぬから」


いえ、雷落とさないでください!
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