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居候
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「粉ぁ?小麦粉じゃないだろうな?」
「何か薬が混ざっているみたいでしてね、ちょっと同胞を助けるのにも、どのような薬か知りたいんですよねぇ。お願いできます?」
「お前、場所わかるのか?」
「全然わかりません。あの地図ではですが……」
「失礼なやつだなぁ。手書きだぞ?それも私が丁寧に書いてやったろう?地図!」
「だから分からないんですよ。ユーリさんに書かせたら良かったじゃないですか」
「馬鹿者!」
「狐です……」
「あー!分かったよ。持ってこい……粉。一旦預かる。今から来れるか?」
「普通に住所を言ってくれれば行けます」
「えーとだな、ここどこだっけ?」
やはりあなたが馬鹿ですと言いたいのを堪えて待つ。
「お電話変わりました。お久しぶりでございます」
「お久し振りです。お元気そうで何よりです」
「冬弥様も。場所なのですが、そちらからですと……」
「はい、分かりました。意外と近かったんですね」
「ええ、どのくらいでこられます?」
「走って15分と言った所ですかねぇ」
「では、おいしいお酒をご用意してお待ちしております」
姿を消し走って暫くするとビルが立ち並んで居たので、路地に入って姿を現す。
教えてもらった目印を探すより前に、一つのビルの看板に目が止まる。
他の看板よりかなり小さいのだが、目立って見えるのはあの店主の人外の者への配慮かもしれない。
『天満堂薬店→』矢印の横には何故か鍋マークが付いており、その鍋がどうしても梅壺に見えて仕方ない……
矢印の通りに歩いていくと、大きいビルの横に小さな店がある。
「ここですか……」
戸を開けると、見たことも無い妖がカウンターに居たので声をかける。
「電話した者ですが」
「はい、こちらへどうぞ」
案内され、隣の扉を開けてもらい中へ入ると、昔の商店街時代を思い出す作りとなっていた。
「来たか。久しぶりじゃないか」
「ええ、それにしてもよくこんなところに作りましたねぇ」
「人外のやつも飲みに来るからな……で、粉は?」
これです。と、懐から出して渡す。
袋を開けるなり「くっさ!」と横にいる男性に投げ渡している。
「あ、ユーリさん駄目ですよ?そんなに近くで嗅いだら……」
言うと同時に匂いを嗅いでしまったユーリさんは咳き込んで口を覆い、店主の目の前に袋を戻す。
「だから言ったのに……それでどのくらいかかります?」
「まずこの匂い、意識を一時的に奪うものだろ?」
「その様ですねぇ。で、この巻物の術を使ったらしいんですけどねぇ……むやみに解いて良いものか、薬のことを詳しく知りたかったんですよ」
「誰がやられた?」
「那智ですよ。ご存知でしょう?」
「ああ、あの生意気な奴か。一度腕を治したことはあるが、小煩い奴だった」
「気位だけは1人前ですからねぇ」
「明日はここに居ないんだ。明後日に来てくれるか?」
「分かりました。巻物も預けましょうか?好きでしょう?」
「これでお代はチャラにしてやる」
ニヤリと笑う店主は珍しい書物や、術など種別に拘らずに弱い。
今まで高い薬代を取られなかったのは、貸しても問題のない古くからの書物を貸したりしているからだが、薬の効き目は面白いほどに効く。
これで姫という肩書きが付いているからさらに面白いのだが。
それはいつも口に出さず黙っていることにしている。
「何か薬が混ざっているみたいでしてね、ちょっと同胞を助けるのにも、どのような薬か知りたいんですよねぇ。お願いできます?」
「お前、場所わかるのか?」
「全然わかりません。あの地図ではですが……」
「失礼なやつだなぁ。手書きだぞ?それも私が丁寧に書いてやったろう?地図!」
「だから分からないんですよ。ユーリさんに書かせたら良かったじゃないですか」
「馬鹿者!」
「狐です……」
「あー!分かったよ。持ってこい……粉。一旦預かる。今から来れるか?」
「普通に住所を言ってくれれば行けます」
「えーとだな、ここどこだっけ?」
やはりあなたが馬鹿ですと言いたいのを堪えて待つ。
「お電話変わりました。お久しぶりでございます」
「お久し振りです。お元気そうで何よりです」
「冬弥様も。場所なのですが、そちらからですと……」
「はい、分かりました。意外と近かったんですね」
「ええ、どのくらいでこられます?」
「走って15分と言った所ですかねぇ」
「では、おいしいお酒をご用意してお待ちしております」
姿を消し走って暫くするとビルが立ち並んで居たので、路地に入って姿を現す。
教えてもらった目印を探すより前に、一つのビルの看板に目が止まる。
他の看板よりかなり小さいのだが、目立って見えるのはあの店主の人外の者への配慮かもしれない。
『天満堂薬店→』矢印の横には何故か鍋マークが付いており、その鍋がどうしても梅壺に見えて仕方ない……
矢印の通りに歩いていくと、大きいビルの横に小さな店がある。
「ここですか……」
戸を開けると、見たことも無い妖がカウンターに居たので声をかける。
「電話した者ですが」
「はい、こちらへどうぞ」
案内され、隣の扉を開けてもらい中へ入ると、昔の商店街時代を思い出す作りとなっていた。
「来たか。久しぶりじゃないか」
「ええ、それにしてもよくこんなところに作りましたねぇ」
「人外のやつも飲みに来るからな……で、粉は?」
これです。と、懐から出して渡す。
袋を開けるなり「くっさ!」と横にいる男性に投げ渡している。
「あ、ユーリさん駄目ですよ?そんなに近くで嗅いだら……」
言うと同時に匂いを嗅いでしまったユーリさんは咳き込んで口を覆い、店主の目の前に袋を戻す。
「だから言ったのに……それでどのくらいかかります?」
「まずこの匂い、意識を一時的に奪うものだろ?」
「その様ですねぇ。で、この巻物の術を使ったらしいんですけどねぇ……むやみに解いて良いものか、薬のことを詳しく知りたかったんですよ」
「誰がやられた?」
「那智ですよ。ご存知でしょう?」
「ああ、あの生意気な奴か。一度腕を治したことはあるが、小煩い奴だった」
「気位だけは1人前ですからねぇ」
「明日はここに居ないんだ。明後日に来てくれるか?」
「分かりました。巻物も預けましょうか?好きでしょう?」
「これでお代はチャラにしてやる」
ニヤリと笑う店主は珍しい書物や、術など種別に拘らずに弱い。
今まで高い薬代を取られなかったのは、貸しても問題のない古くからの書物を貸したりしているからだが、薬の効き目は面白いほどに効く。
これで姫という肩書きが付いているからさらに面白いのだが。
それはいつも口に出さず黙っていることにしている。
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