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居候
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「でした?」とピクッと耳が動くのがわかる。
「那智様のところが近かったのですが、噂で冬のお爺様が亡くなったと聞き、那智様も臥せっておられると。うちの小さな社も母が亡くなり、私がそのまま選ばれたのですが、先日襲われ……対応するも妖力が野孤にさえかなわず。珠だけ持って逃げてきてしまいました」
「それでまだ3本ですか……」
「はい。次の祭りで飛べば増えると頑張ってきたのですが……」
「とにかく話は明日にしましょう。粥が出来たようです。食べてください」
タイミングよく雪翔が粥を運んできたので、紹介する。
「あなたも見えるの?」
「も?って他にもいるんですか?」
「ええ、もうお亡くなりになられましたけど、お婆さんが」
「多分血縁ですね。雪翔の祖母でしょう」
「申し遅れました。私は音々(ねね)と申します。その方は早乙女様とおっしゃいまして、幼少の頃はこちらに住んでいたとか。年に数度神社へ来ていました」
「おばあちゃんだ……」
「冬弥様、ご無礼を承知でお願い致します。私をここに置いてくださいませんでしょうか?なんでも致します」
お辞儀をされるもここは男所帯。かと言って啓示のあった社に戻れとも言えない。さて、どうしたものか……
「食べながら聞いてください。ここは下宿屋でして、男所帯です。流石に女性の方は……」
「冬弥さんの家は?」
「夫婦でもあるまいし……社には守りがいますからねぇ」
「そこを何とか……」
声が大きいのでみんなが寄ってきて、泊めてあげろだの、冬弥さん冷たいだのさんざん言われ、まずは傷が治るまでこの客間にと言うことで収まった。
「あ、狐と知っているのは雪翔だけです。私の家は下宿の横です。今夜は"月"が綺麗ですからねぇ。このような日は寒いですが月を見ながら酒を飲むのも良い日ですね」と暖かくして寝てくださいと言って襖を閉める。
深夜、縁側を開けっ放しにしておいて、囲炉裏で煙草を吸いながら酒を飲み、月を見ていると、やはり音々がやってきた。
「どうぞ。寒いので閉めてください」
「私はここで……」
「いいですから。あの言葉がわからなかったら私が凍死しているところでした。どうぞ」
お邪魔しますと囲炉裏の前に来るので、やかんから急須にお湯を入れて暖かいお茶を出す。
「流石に酒とは言えませんから」と銚子から注ごうとすると、私が……と行ってくるので手で制す。
「一つ伺いたいことがあります。あなたの影はその1匹のみですか?」
「残ったのはこの子だけです。出てきなさい、静」
「これは、あなたの親代わりですねぇ」
「はい。みんな逃げろと守ってくれて……社自体は無事なんですが、悪孤も野孤も社にいついてしまって……」
「片付けるのは簡単ですよ?でもその後またあなたが社で守らなければいけないのに、眷属が居ないと小さくとも守りきれないでしょう?」
「はい……私が社に戻れないとなると、どうなるのかご存知ですか?」
「新しい狐が選ばれるでしょうが、あの地の社には守がいります。爺さんと仲が良かったのなら聞いているでしょう?」
「詳しくは分からないこともありましたけど、大体は把握しております」
「爺さんの所は尾の部分。この社は頭の部分、秋彪と那智の社は左右の手と言えばいいでしょうか。そしてあなたの所は胴の中心なんですよ。それを我らが鎮めていると言ってもいいのですが、そこの社を任されるのであればそれなりの力があるはずなんですよねぇ……」
「それなんですが、まだ未熟なので少しの防御しかできません。攻撃は風や雪を操りますが、得意とするのは、治癒なんです」
「秋彪と面識は?」
「ありません。女狐は社から離れてはいけないとの教えを受けてきましたので」
「それ、かなり古いですよ?しばらくここに滞在するとしてですけど、守っていただきたいことがあります」
「那智様のところが近かったのですが、噂で冬のお爺様が亡くなったと聞き、那智様も臥せっておられると。うちの小さな社も母が亡くなり、私がそのまま選ばれたのですが、先日襲われ……対応するも妖力が野孤にさえかなわず。珠だけ持って逃げてきてしまいました」
「それでまだ3本ですか……」
「はい。次の祭りで飛べば増えると頑張ってきたのですが……」
「とにかく話は明日にしましょう。粥が出来たようです。食べてください」
タイミングよく雪翔が粥を運んできたので、紹介する。
「あなたも見えるの?」
「も?って他にもいるんですか?」
「ええ、もうお亡くなりになられましたけど、お婆さんが」
「多分血縁ですね。雪翔の祖母でしょう」
「申し遅れました。私は音々(ねね)と申します。その方は早乙女様とおっしゃいまして、幼少の頃はこちらに住んでいたとか。年に数度神社へ来ていました」
「おばあちゃんだ……」
「冬弥様、ご無礼を承知でお願い致します。私をここに置いてくださいませんでしょうか?なんでも致します」
お辞儀をされるもここは男所帯。かと言って啓示のあった社に戻れとも言えない。さて、どうしたものか……
「食べながら聞いてください。ここは下宿屋でして、男所帯です。流石に女性の方は……」
「冬弥さんの家は?」
「夫婦でもあるまいし……社には守りがいますからねぇ」
「そこを何とか……」
声が大きいのでみんなが寄ってきて、泊めてあげろだの、冬弥さん冷たいだのさんざん言われ、まずは傷が治るまでこの客間にと言うことで収まった。
「あ、狐と知っているのは雪翔だけです。私の家は下宿の横です。今夜は"月"が綺麗ですからねぇ。このような日は寒いですが月を見ながら酒を飲むのも良い日ですね」と暖かくして寝てくださいと言って襖を閉める。
深夜、縁側を開けっ放しにしておいて、囲炉裏で煙草を吸いながら酒を飲み、月を見ていると、やはり音々がやってきた。
「どうぞ。寒いので閉めてください」
「私はここで……」
「いいですから。あの言葉がわからなかったら私が凍死しているところでした。どうぞ」
お邪魔しますと囲炉裏の前に来るので、やかんから急須にお湯を入れて暖かいお茶を出す。
「流石に酒とは言えませんから」と銚子から注ごうとすると、私が……と行ってくるので手で制す。
「一つ伺いたいことがあります。あなたの影はその1匹のみですか?」
「残ったのはこの子だけです。出てきなさい、静」
「これは、あなたの親代わりですねぇ」
「はい。みんな逃げろと守ってくれて……社自体は無事なんですが、悪孤も野孤も社にいついてしまって……」
「片付けるのは簡単ですよ?でもその後またあなたが社で守らなければいけないのに、眷属が居ないと小さくとも守りきれないでしょう?」
「はい……私が社に戻れないとなると、どうなるのかご存知ですか?」
「新しい狐が選ばれるでしょうが、あの地の社には守がいります。爺さんと仲が良かったのなら聞いているでしょう?」
「詳しくは分からないこともありましたけど、大体は把握しております」
「爺さんの所は尾の部分。この社は頭の部分、秋彪と那智の社は左右の手と言えばいいでしょうか。そしてあなたの所は胴の中心なんですよ。それを我らが鎮めていると言ってもいいのですが、そこの社を任されるのであればそれなりの力があるはずなんですよねぇ……」
「それなんですが、まだ未熟なので少しの防御しかできません。攻撃は風や雪を操りますが、得意とするのは、治癒なんです」
「秋彪と面識は?」
「ありません。女狐は社から離れてはいけないとの教えを受けてきましたので」
「それ、かなり古いですよ?しばらくここに滞在するとしてですけど、守っていただきたいことがあります」
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