下宿屋 東風荘

浅井 ことは

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居候

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「姿を見せない……ですか?」

「いえ、人のように振る舞い、力は絶対に使ってはいけません。今、あなたの社を見に影に行かせています。爺さんも殺されました。この土地を狙ってるものが那智をも操ってしまいましてねぇ。明日術を解きに行くのですが」

「私にそのような話をされていいのですか?」

「構いませんよ?あなたが敵でも味方でもね」

「味方でございます!冬弥様、私の事は音々とお呼びくださいまし。この静も同様に使っていただいて構いません!」

「ふふふっ。面白い……」

「わ、笑うなんて酷いです」

「いえ、とにかく明日はもう調子はいいが、大事をとってしばらくいるとみんなに伝えましょう」

酒がなくなったので、取りに行こうとしたら、眷属の静が運んできてくれた。

「おや、気が利きますねぇ。この徳利に入れておくれ。火の横に置いておくと丁度いい温度になる」

「私もなにかお手伝いを」

「客人扱いの間はいいですよ。兎に角社をなんとかしないといけませんからねぇ。他に手がないこともないのですが……」

「何ですか?」

「いえ、とにかく今日は休んでください。人間の服も日用品店の奥さんが持ってきてくれましたので、それを着たらいいと思います」

「着替えさせてくれたのは……」

「私ですが、なにか問題でも?」

「そ……そんな……見ましたよね?」

「ええ。服が汚れてましたので」

「お、お嫁に行けない……」

「そのうちいい人が現れますよ?」

「肌を見られたものと婚姻をと母に言われてきました。冬弥様、私を妻に!」

「嫌です」

「独り身でいろと?わ、私……諦めませんから!そ、それと社のことは別でお願いします」

行くわよ静!と出ていったのはいいが、大人しいと思ったらとんだお転婆を拾ってしまったらしい。

軽く酒を飲んでからそのまま影が戻るまでうとうととする。

「冬弥様」

「あぁ……どうだった?」

「あの女狐の話通りでございました」

「音々と呼びなさい。それで?」

「社の中で宴会を。外にも沢山居まして、数は50はいるかと」

「宴会ねぇ……さぞや楽しんでるんでしょうが、それも明日までですね。見つからなかったですか?」

「もちろんですとも!それに、野狐と悪狐ばかりでしたが、違うモノも沢山いました」

「ご苦労だったね。明日はみんな働いてもらうから、一日ゆっくりしておいで」

「琥珀様と漆様はどうなさるのです?」

「置いていきたいけど、来ると言いかねないだろうねぇ。代わりに誰か置いていくよ」

「では……」

影に戻ったのでそのまま布団に入って眠る。

いつも通りの時間に起きて身支度を整え、温室や畑を見てから土間へと行くと、音々が米を竈で炊いていた。

「寝てなくていいのですか?」

「血も止まったので大丈夫です。少しまだ腕が痛いですけど」

「米は炊飯器で炊いた方が早いです。竈のが美味しいのはわかってますが、それでは朝は良くても夜は足りません」

「そんなに食べるんですか?冬弥様」

「下宿人ですよ」

「おむすび三つでは足りないんですね?」

「三倍はいるでしょうね……あとは私がやります」

「いえ、女である以上、旦那様にそのようなことはさせられません!」

「結婚しないと言いましたけど?」

「必ずしていただきます!」
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