下宿屋 東風荘

浅井 ことは

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居候

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店主に持って行ってもらい、やっと静かになったと袋の中を確かめ、成る程と客間に袋を持っていく。

葉孤まだ目が覚めませんか?

「まだですが、影が1匹……出てこれないようです」

「あぁ、弱ってますね。桜孤に少し影の方の治療をさせましょうか。話せるといいのですけどねぇ」

狐に任せてみんなで銭湯へと行く。
たまには付き合わないとへんに思われる一番面倒な、でも少し楽しい一時だ。

いつも子供たちだけで行かせているが、相変わらず騒がしい。

番台にいる爺さんに、いつもすみませんねぇとお代を払い、中に入る。

「騒がないでくださいよ?」

「だっていつも貸切だもん」

「この時間一番少ないんですよ。3時にご近所さんと入れ替わりで空いててつい。すいません」

「いいですけどね。でも、公共の場だと自覚してくださいよ?」

「はーい」

「はぁ……」

髪と体を洗って湯に浸かり、長湯してもと早々に上がる。

椅子に座って冷たい水を飲んでいると、3人が出てきて、服も着ないでタオルだけ巻き、フルーツ牛乳とコーヒー牛乳で、腰に手を当て「せーの」と一気飲み勝負をしている。

「雪翔……参加しないでくださいよ?」

「無理みたいです」

と言うその手には2回戦用の牛乳が手にされていた。

勝ったのは言うまでもなく海都。2番が隆弘、3番目の雪翔はまだ飲んでいる。
飲み終わったのを見計らって、「さ、帰りましょうか」と銭湯を後にする。

下宿に帰ると、賢司と堀内が板の間におり、お茶を飲みながら本を見ていた。

「早かったんですねぇ。今夜はご飯ないんですよ」

「いや、大丈夫。途中で会ったから飯食ってきた。それより、客室に誰かいるの?物音するから」

「ええ、怪我をされた方を寝かせてありますので、静かにしていてあげてください」

「じゃぁ、俺達も風呂行くか」

「そうですね」

2人が銭湯に行き、みんなが部屋に荷物を置きに行ったので、客間の襖を開ける。

「あっ……」

「起きてましたか。どうですか?痛むところはないですか?」

「はい。貴方が冬弥様……ですか?」

「冬弥は私ですが……」

良かった!といきなり抱きつかれ、狐達に冬弥様のエッチなどと言われるが、声がしたので見に来たのであろう3人にも見られてしまった。

「もしかして彼女?」

「いい男だからいない方がおかしいんだって。でも連れ込むとは大胆な……」

「海都も隆弘も違いますよ!これは事故、そう、事故です。まだ混乱しているのだと思いますよ?」

「まぁいいや。俺お茶入れてくるよ」

僕も行きますと雪翔まで逃げ、隆弘には頑張ってと言われてしまう。
頑張るも何もこの狐が雌だという事しか知らない。

「離していただいてもいいですかねぇ?」

「あの、ごめんなさい。私ちゃんと人の姿に見えてるんですね?」

「見えてますよ?うちの前で倒れてたんです。配達の車に轢かれなくてよかったですよ」

「すみません……」

「あなたが狐という事は分かっていますが、野孤……では無さそうですね?」

「はい。前に冬の神社のお爺様に、困ったことがあればここへ来たらいいと言われ頼ってきました。私は、ここの東風神社と夏風神社の間にある小さな神社の狐でした」
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