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居候
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「どうって……この人お狐様じゃないんですか?耳としっぽあります。3本だけど……」
「見えますか。葉孤、この狐についててください。どうも、今記憶が曖昧なようです。姿は消して下さいね」
「はい、冬弥様」
バタバタと音がし、店主が荷物を下ろしたことを告げに来る。
「土間に置いといたよ。肉と魚は早くしまった方がいい。入れ物は明日取りに来るよ。で、どうだい?病院連れていかなくていいかね?」
「ええ、一日ここで様子みますね。轢いたわけじゃないんでしょう?」
「当たり前だい。ふらふらーっと出てきて慌ててブレーキ踏んだんだから」
「お聞きしただけですよ。後、明日にでも奥さんに言って若い女の子の洋服や下着一式用意していただけませんか?」
「え?この子女の子かい?」
「ええ。寝巻きに着替えさせる時に……サイズは」
「冬弥さん、あ、あんたもまた堂々と……」
「泥が付いたまま寝かせるわけにもいかなかったので。それにこのような場合仕方が無いかと……」
「だよな。その服預かってうちのに見せるよ」
お願いしますと言って店主を玄関まで送り、肉や魚をしまう。
ここは男の住まいだ。
いくら年を重ねた狐とはいえ、女に変わりはない。
「さて、どうしたものか……」
「あの、もうみんな帰ってくる時間ですけど」
「あ……お米も炊いてませんし、今日は3人しかいませんから、出前でいいですかねぇ?」
「お米残ってないんですか?」
「ありますけど、葉孤だけに見せているわけにも行かないでしょう?」
「僕、作りましょうか?三人分なら炒飯とか野菜炒めくらいしかできないけど」
「今日は海都と隆弘と私たちだけですから、三人分でいいですよ。私は酒とつまみがあればいいので」
「その人のは……」
「目が覚めてからにしましょう。野孤ならば追い出して終わりですけど、身なりもちゃんとしてましたからねぇ」
「あ、じゃあ、どこかのお狐様なのかも」
「そうですね。とにかく少しだけ米を残して、作ってください。何使ってもいいですよ」
「はい。作ってきます」
隆弘と海都が一緒に帰ってきたので、事情を話して客間へは入らない様にと言う。
それでも覗きに行こうと海都が行こうとするので、先に銭湯へと行くように言う。
「出来ましたけど……」
机に並べられたものは野菜たっぷりの野菜炒めと炒飯。
「中々上手じゃないですか」
「美味そうだな」
頂きますとみんなが食べているのを一口もらい、美味しいですねとどう作ったのか聞く。
「切ったものを全部ボウルに入れて、そこにご飯と卵、塩コショウをして混ぜたんです。そこで少し味見して、一気に炒めて、最後に醤油をひと回ししただけなので……使ったものは野菜炒めの時に洗っておいたので」
「これなら別々で炒めて焦がすこともないから良いですねぇ。覚えておきます」
「そんな……」
「ほんとに美味いよ。また作って!」
「はい」
「海都?今日は事情があるとは言っても、入るのも禁止、ご飯も頼りきってはいけないですよ?」
「わ、分かってるって!危ないのは隆弘さんだろ?」
「残念。俺は紳士だから入らないよ。それに怪我してるんでしょう?医者行かなくていいの?」
「ええ、轢かれたわけでもないので軽いケガだけです。あすの朝日用品店の店主が来ますから……」
ピンポーン
「誰でしょう?」
返事をして開けると、日用品店の奥さんと店主だった。
「どうしたんですか?」
「いやね、うちの人が迷惑掛けちゃって。これなんだけど、みんなで食べて頂戴。あとね、明日でいいって聞いたんだけど、女の人だろう?目が覚めたら必要だと思ってね、商店街で買ったから流行りのものじゃないけど、下着と服と要りそうなもの入れておいたから」
「すいません、こんなに沢山」
「やだねぇ、男には女のいるものなんてわからないだろう?うちで見てあげれればいいんだけど」
「大丈夫ですよ。目が覚めたら連絡します。あ、ついでに入れ物持って行ってもらっていいですか?」
「見えますか。葉孤、この狐についててください。どうも、今記憶が曖昧なようです。姿は消して下さいね」
「はい、冬弥様」
バタバタと音がし、店主が荷物を下ろしたことを告げに来る。
「土間に置いといたよ。肉と魚は早くしまった方がいい。入れ物は明日取りに来るよ。で、どうだい?病院連れていかなくていいかね?」
「ええ、一日ここで様子みますね。轢いたわけじゃないんでしょう?」
「当たり前だい。ふらふらーっと出てきて慌ててブレーキ踏んだんだから」
「お聞きしただけですよ。後、明日にでも奥さんに言って若い女の子の洋服や下着一式用意していただけませんか?」
「え?この子女の子かい?」
「ええ。寝巻きに着替えさせる時に……サイズは」
「冬弥さん、あ、あんたもまた堂々と……」
「泥が付いたまま寝かせるわけにもいかなかったので。それにこのような場合仕方が無いかと……」
「だよな。その服預かってうちのに見せるよ」
お願いしますと言って店主を玄関まで送り、肉や魚をしまう。
ここは男の住まいだ。
いくら年を重ねた狐とはいえ、女に変わりはない。
「さて、どうしたものか……」
「あの、もうみんな帰ってくる時間ですけど」
「あ……お米も炊いてませんし、今日は3人しかいませんから、出前でいいですかねぇ?」
「お米残ってないんですか?」
「ありますけど、葉孤だけに見せているわけにも行かないでしょう?」
「僕、作りましょうか?三人分なら炒飯とか野菜炒めくらいしかできないけど」
「今日は海都と隆弘と私たちだけですから、三人分でいいですよ。私は酒とつまみがあればいいので」
「その人のは……」
「目が覚めてからにしましょう。野孤ならば追い出して終わりですけど、身なりもちゃんとしてましたからねぇ」
「あ、じゃあ、どこかのお狐様なのかも」
「そうですね。とにかく少しだけ米を残して、作ってください。何使ってもいいですよ」
「はい。作ってきます」
隆弘と海都が一緒に帰ってきたので、事情を話して客間へは入らない様にと言う。
それでも覗きに行こうと海都が行こうとするので、先に銭湯へと行くように言う。
「出来ましたけど……」
机に並べられたものは野菜たっぷりの野菜炒めと炒飯。
「中々上手じゃないですか」
「美味そうだな」
頂きますとみんなが食べているのを一口もらい、美味しいですねとどう作ったのか聞く。
「切ったものを全部ボウルに入れて、そこにご飯と卵、塩コショウをして混ぜたんです。そこで少し味見して、一気に炒めて、最後に醤油をひと回ししただけなので……使ったものは野菜炒めの時に洗っておいたので」
「これなら別々で炒めて焦がすこともないから良いですねぇ。覚えておきます」
「そんな……」
「ほんとに美味いよ。また作って!」
「はい」
「海都?今日は事情があるとは言っても、入るのも禁止、ご飯も頼りきってはいけないですよ?」
「わ、分かってるって!危ないのは隆弘さんだろ?」
「残念。俺は紳士だから入らないよ。それに怪我してるんでしょう?医者行かなくていいの?」
「ええ、轢かれたわけでもないので軽いケガだけです。あすの朝日用品店の店主が来ますから……」
ピンポーン
「誰でしょう?」
返事をして開けると、日用品店の奥さんと店主だった。
「どうしたんですか?」
「いやね、うちの人が迷惑掛けちゃって。これなんだけど、みんなで食べて頂戴。あとね、明日でいいって聞いたんだけど、女の人だろう?目が覚めたら必要だと思ってね、商店街で買ったから流行りのものじゃないけど、下着と服と要りそうなもの入れておいたから」
「すいません、こんなに沢山」
「やだねぇ、男には女のいるものなんてわからないだろう?うちで見てあげれればいいんだけど」
「大丈夫ですよ。目が覚めたら連絡します。あ、ついでに入れ物持って行ってもらっていいですか?」
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