下宿屋 東風荘

浅井 ことは

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居候

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遠くから、きゃー!ごめんなさい!ガシャーン!と色々な音が聞こえ、自分には関係ないと言い聞かせながら、彼女が大分元気になったことを伝え、自分の買い物を済ませていく。

魚屋でイカを捌いてもらっている間に、音々がボロボロと言ってもいい感じに汚れて到着した。

一口大にまで切ってもらったイカと、ゲソ。他にもアサリやタコなどを買い、八百屋で紅生姜とコンソメ、ほんだしなど粉も買って、早々に下宿へと戻ろうとする。

「待ってくださいー」

「嫌です。この距離を怪我しながらどうやって移動できるんですか?はずかしいを通り越して他人になりたいです。一時的な下宿人と考えれば他人ですが」

「酷いです。女性が困っているときに助けるのが王子様の役目と決まっているんですよ?」

「生憎、狐ですので」

「そう言うことじゃないんですっ。母上が言っていました。女性は何も出来なくとも、男性が守ってくださると!って、ちょっと待ってください!」

無言で下宿に戻り、冷蔵庫に買ってきたものをいれてから、「いいですか?あなたの夢物語に付き合ってる暇はないんです。今宵のことも考えなければいけないのに余計な手間をとらせないでください」

「すいません。でも……」

「それと、意識がなかった状態での着替えは仕方のないものと考えてください。なのであなたの言う結婚やその他のことには一切関係ないので良く考えてくださいね?今あなたが助けてほしいのはどれか選んでください」

「え?」

「一つ、結婚」

ぱぁっと顔が笑顔になる。

「二つ、社通いの居候使用人」

少しシュンとなる。

見ていて飽きないが。

「三つ、社の取り返し」

更に下を向いてしまうが、普通答えは三つ目だ。

「全部がいいです」

頭を抱え座り込んでしまったが、これで腹もくくれる。この世間知らずな馬鹿雌狐にも手伝わせよう。

「わかりました」

「じゃぁ!」

「今宵あなたにも手伝って貰うことにします」

「え?見てるだけでいいって」

「あなたの答えを聞いて、女性だからと甘やかしていたようです。あの地は別にあなたでなくとも、我ら三人が統治すればいいだけのこと。それを親切心を利用して楽が出来ると思い込んでる馬鹿な狐等には用はない。逃げて頼るのはまだ良いが、それに甘え感謝もなく我が儘なことばかり言うような奴に興味はありません」

「そんな……酷いです」

「酷くなどないです。元々あなたの社の事ですよね?泣いても何をしても無駄だと何故分からないのです?あなたの母上は何も教えてくれなかったんですか?社を守るのに一番必要なことを」

「え?」

「いいです。今から那智、秋彪のもとへと一緒に来ていただきます……水狐、朱狐、お願いします」

「はい冬弥様」
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