ゴミ拾いで3体の夫ができた人間

那原涼

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薔薇

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毒植物があると言われてアロンの気分を一気に下げた。

警戒気味にエルドの後ろについて行き、温室の中をにらんでいたが、外で見る時よりもずっと鮮やかな光景に思わず唖然と口を開いた。

庭園も綺麗だったが、温室の中はなんと蝶々まで舞っていた。

な、なんだこれ……!

一瞬綺麗すぎて現実なのかどうか疑った。

「アロン」

呼びかけられてやっと我に返り、エルドを見つめる。

「こ、ここってなんなんだ」

「ここはさまざまな種類の花草を集めている。中には100年に一度しか咲かない珍しいものもある。今ここは春エリアだ。奥に行けば秋エリアがある。あそこは落ち着いていて読書や1人の時間に合う。他には総合エリアがあり、観葉植物が育てられている」

アロンには何が何だかわからないが、とにかくすごい場所らしい。

「こんなの、すぐに取られて売られるぞ」

「ここで盗みを働くものなどいない。私がいるからな」

「そうだったな……お前監視システムなんとかで見えるんだったな」

「ああ。例えば……」

エルドが目の横に軽く手を置いて少し沈黙すると、

「今エルヴィスは会議中だ」

「え?」

「ライネスは……軍部に戻っているようだな。軍内部のカメラをのぞくには少し手間が必要だから今見えないが、必要なら侵入してみようか」

「それ聞くだけで危ないだろ!やめろ!というかあいつの動向とか知りたくねぇよ!」

「わかった。このように見たい場所はすぐに見れる」

「へ、へぇ……でもさすがにひとりだと全部のカメラ一気には見れないだろ」

「いや。条件を絞れば見たいものだけが見れる。それに全ての映像を分析してすぐに特定の映像を探し出せることも可能だ」

「今すぐできるのか?」

「できる」

アロンが沈黙した。

本気で逃げようとしてもぜってぇ逃げれねぇな。

「たくっ、なんなんだよお前たち……」

ぼやいたアロンが顔を背けると、一際豪華に咲いた花に惹かれた。

なんだあれ。

そこには真っ赤な薔薇があった。他に白、黄色、ピンクなど、目にも鮮やかな薔薇たちがある。

エルドがその視線に気づいて薔薇の前に来ると、一本手に取った。

「おい!いいのかよ!」

見ていたアロンが思わず驚いた声を出す。

「かまわない。これは食用薔薇だ」

「食用?食べられるってことか?」

「ああ、食べてみるか?トゲには気をつけるように」

好奇心が抑えられなかったアロンは赤い薔薇を受け取って、じっと見つめたあと、かぶっと噛みついた。

一気に薔薇の半分ほどが消えていく。

もぐもぐしていたアロンは次第に疑惑的な表情になる。

「……あんまり味がしねぇけど」

「その品種はそうだろうな。ほとんどはこれと似た味だ。次はこれを食べてみるといい」

別の薔薇を渡されて、アロンは今度は慎重に一枚だけ花弁を噛みちぎって食べた。

ほんのりと甘い味がする。

「なんだか……果物ぽい味だな」

「他にも酸味や苦味を感じる品種がある。アイスやクッキーなどに混ぜて食べるのもおすすめだ。見た目が華やかなだけではなく、味の変化も味わえる」

「ふぅん。他には何があるんだ?」

初めて食用の花が存在することを知ったアロンは、少しと他の花にも興味を持ち始めた。

質問されるたびにエルドは丁寧に返し、アロンの猫のような好奇心を満たした。














夕方も近づいた頃、手に数本の薔薇を持ってアロンは部屋の前まで送り返された。

「今日はありがとな!」

機嫌のいいアロンにエルドはただ変わらない無表情を返した。

「ああ、あなたが気に入ってくれたようでよかった」

「薔薇取ったこと怒られないのか?」

「大丈夫。怒られない。それと、部屋にはすでに食事が用意されているらしい」

食事と聞いてアロンの目が瞬時に変わる。

朝食を取り忘れ、昼はエルドと温室および庭園散歩の時にパンをたくさんもらったが、アロンは食事と聞いた瞬間、それまでなかったはずの空腹感が湧き上がってきた、

「じゃあ俺は戻るまたな!」

教えられた指紋認証でそそくさとドアを開けたアロンはそのままテーブルの前に駆けていった。

ドアの前でエルドはほんの1秒ほどその光景を見つめたあと、そっとドアを閉めた。

この部屋に入れるのは限られた人物しかいない。

エルドは閉じられていくドアの隙間から必死に食事にありつけているアロンの姿を見つめた。

見つめて、見つめてーーやがてその視線が地面に落ちた薔薇に移された。

ドアが完全に閉まるとその視線もなくなり、気づかないアロンは食べながら、食べきれない分をどこに隠そうかと考えを巡らせた。













真夜中の時間帯。

アロンは体の熱さに目を覚ました。

服を引っ張っても布団を地面に蹴落としても熱さは引かず、少しずつと睡眠欲を引かせた。

耐えきれずに身を起こしたアロンははっきりとしない頭で小さな喘ぎをもらした。

「なんなんだ……これ」

下半身の熱にアロンは朧げなまま身を丸めた。

ふと鼻腔びこうに甘い香りが漂ってくる。

見ると、枕もとに置いた薔薇があった。もうすでにしおれてもとの美しさを失ったが、アロンは寝る前に食べた薔薇の甘さがまだ口の中に残っている気がした。

エルドと回った時に食べた薔薇とは違う、まるで蜂蜜のように甘みのある薔薇だった。

エルドが言うにはこれは新品種の食用薔薇らしい。確かに他に食べた薔薇より甘く、香りも豊かだった。

だからアロンは気に入り、帰りに数本もらった。

朧げな意識で美味しかったと覚え、さらに手を伸ばそうとする。

それを阻止したのはいるはずのない別の人物の手である。

「アロン、それ以上食べればあなたが持たない」

「だ…誰だ……」

「………。体が熱いか?」

「ああ……熱い……さっきから、頭がぼうとして……」

「この薔薇は効果がいい。多くても3枚までと言ったが……」

その人物、エルドは床に落ちた薔薇の残り茎を見て目を細めた。

「丸一本は食べたようだな」

「甘かった……」

「そうだろうな。………腕を伸ばせそうか?」

アロンはぼやく視界でエルドの影を見つけるとゆっくりと腕を伸ばした。

エルドはその腕をそっとつかみ、自分の肩にかけ、アロンの腰に手を回した。

「もう少し脚を広げそうか」

「………」

自分の熱い吐息にアロンはどんどん溺れていきそうな気がした。エルドの腰を支える手、脚を滑っていく手、首筋を軽く触れる唇……全ての接触が気持ちよかった。

思わずのどから気持ち良さげな息が吐き出され、エルドにしがみつく手がさらに力込む。

「もっと、触ってくれ……」

「今日は最後までしない。機会があれば次は4人でやってみよう。薔薇の効果は良さそうだからな」




真夜中で、自分を触っているのが誰なのかもわからず、アロンはただ体の主導権を全て相手に預けた。

そして朝起きる頃には、もう夜に起きたことは何一つと覚えていない。

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