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ゼノンとアルケ
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アロンの頭が数秒間思考を放棄した。
なぜエルドがここにいるのかわからない。
逆に男はエルドと呼ばれてほんの一瞬固まった。
そのまま見つめ合って、少し過ぎた頃、放ったらかしにされたアンドロイドが不満げな声を発した。
「おーい。俺は無視か?ゼノン、続きやろうぜ?」
そう言ってアンドロイド、アルケはエルドそっくりの男、ゼノンに覆い被さり、ぎゅむっと胸をつかんだ。
「んっ!いい加減にしろ!お前が人がいるほうが興奮するなんて駄々をこねなければこんな事にはッ!……まあ、いい。興が削がれた」
ゼノンはすぐさま着替えるとそれをポカンと見ていたアルケが慌ててソファーから降りた。
「嘘だろ?」
「本当だ。お前も早く服を着ろ」
「これからだってのに」
文句言いながらもアルケは茶髪寄りの金髪を撫で上げると服を着はじめた。
ふたりが着替え終わり、ゼノンがちらりと固まったままのアロンを一瞥するとそそくさと部屋を後にした。
ふたりが出て行くとしばらくしてからアロンはやっと我に帰った。
「なんだったんだ……今の。ゼノン?エルドじゃないのか?」
だがあの顔はそっくりどころの話ではない。瓜二つと言っていい。唯一違いを挙げるとすればゼノンのほうがいくばくか年上のように見えるくらいである。
他人の行為に当たったせいか、それとも変な男にからまれたせいか、アロンは疲労困憊な顔で1階に戻った。
疲れがまったく取れない。
すでにホールではみんなが食事を囲んでいた。
「アロン!もう寝なくていいのかい?」
そう言いいながらエルヴィスが自然と近づいてきた。タイミングが良すぎる。
「お前、なんで俺が寝ていると知ってんだよ」
「一回見に行ったからね」
「そーかよ」
運のいいやつだな。あんな場面に遭遇しなくて。
アロンの顔色を見てエルヴィスの顔に心配の色が浮かんだ。
「何かあった?まだ気分良くなさそうに見えるけど」
「その通りだよ。………腹減った」
「そうだね!何食べたい?あっちに食べ物が用意されているから行こう」
あっちと指された方向を見てアロンが目を輝かした。
疲れが吹き飛んでいく気がした。
壁寄りのテーブルには様々なお菓子やサラダ、肉類が用意されていた。
見た目の美味しそうな食べ物にごくっとのどを動かす。朝は車の中で渡された軽食しか口にしてない。
情けなくもお腹がぐるると鳴いた。
「ははは!可愛いなアロンは!」
「あれ全部食べていいのか?」
空腹に可愛いと言われても無視ができた。もはやアロンの目には食べ物しか映っていない。
「好きなのを食べるといいよ」
そう言われるとアロンは走ってテーブルに向かった。
どれから先に手をつけようかと迷っていると、思わずひじが誰かにぶつかり、相手が「申し訳ない」と言った。
その声に見上げると、一瞬で目に入った黒髪に思わず変な男を思い出したが、目線が相手の顔に移した瞬間、相互が固まった。
「………」
「………」
つい先ほど2階で会った。行為中の受け側ゼノンである。
お互いが目を見開いて固まっているところに「おーい、まだ取ってないのかー?」という気だるげで、どこかちゃらけた声が響いてきた。
茶色に近い金髪を整えたアルケがズボンに手を突っ込んでゆったりと近づいてくる。そして目を見開いて固まる2人を見つけた。
「何やってんだ?あれ?そこのチビ、さっきセックス中にーーむぐっ!」
ゼノンが素早くアルケの口をガシッとつかんだ。
「お前はいつもいつもそうやってなんでも言う!少しは黙れ!」
「はぁいよ。愛してるぜ、ゼノン」
「……っ、貴様は本当に」
「お前、エルドか……?」
その声にゼノンがアロンを振り返った。
どこかぽけっとした顔に額を押さえて必死に出てきそうな舌打ちを我慢する。
「違う……俺はゼノン。きみの言うエルドとは別人だ」
「そ、そうなのか?お前、アンドロイドじゃないよな?」
どう見てもゼノンは人間である。アンドロイド特有の顔のラインもイヤーセットもない。瞳も普通である。
アンドロイドの生産において、顔のライン、イヤーセット、そして機械の瞳は法律によって決められており、人間を模して無くしてはならない。同時に人間もアンドロイドの特徴を模してはならない。
アロンにはそこらへんの知識はないものの、ゼノンはどう見たって人間だとわかる。エルドと別の人物もわかるが、あまりにもコピーのような顔に疑わずにはいられない。
「チビちゃん、お名前は?」
「誰がチビだ!」
アロンはだらしなくシャツのボタンを外しているアルケをにらみ、そしてこちらに歩いてくるエルヴィスを見つけて、来い!という手勢をした。
「アロン、何か好きな食べ物でも見つけたかい?おや」
その目がゼノンに向けられた。
「ゼノンさん!お久しぶりです」
「あなたですか……。お久しぶりです。市長」
アロンがあいさつを交わすふたりを交互に見て不思議そうに口を開いた。
「なんだ、お前ら知り合いか?」
「知り合いも何も、彼はまさにエルドの外見のモデルだよ」
「はあ!?お前以前、実在している人間に似せて作れないって言っーー」
「シー。ダメだよ、大声を出しちゃ」
口の前に指を持っていかれ、アロンは渋々と黙った。
「エルドの身分は少し敏感な話題なんだ。あんまり外では言えないんだよ。ごめんね、アロン」
「……だったら早く言えよ」
「ごめんごめん。そんなにすねないで。本当に可愛い」
「もう可愛いって言うんじゃねぇ!気持ち悪りぃ!」
ふたりの掛け合いを見てゼノンとアルケが顔を見合わせた。
ゼノンが口を開いた。
「おふたりの関係性は……」
「ああ!これは遅れました」
エルヴィスがアロンの肩を抱き寄せてにっこりと笑った。
「彼は私の妻です!」
なぜエルドがここにいるのかわからない。
逆に男はエルドと呼ばれてほんの一瞬固まった。
そのまま見つめ合って、少し過ぎた頃、放ったらかしにされたアンドロイドが不満げな声を発した。
「おーい。俺は無視か?ゼノン、続きやろうぜ?」
そう言ってアンドロイド、アルケはエルドそっくりの男、ゼノンに覆い被さり、ぎゅむっと胸をつかんだ。
「んっ!いい加減にしろ!お前が人がいるほうが興奮するなんて駄々をこねなければこんな事にはッ!……まあ、いい。興が削がれた」
ゼノンはすぐさま着替えるとそれをポカンと見ていたアルケが慌ててソファーから降りた。
「嘘だろ?」
「本当だ。お前も早く服を着ろ」
「これからだってのに」
文句言いながらもアルケは茶髪寄りの金髪を撫で上げると服を着はじめた。
ふたりが着替え終わり、ゼノンがちらりと固まったままのアロンを一瞥するとそそくさと部屋を後にした。
ふたりが出て行くとしばらくしてからアロンはやっと我に帰った。
「なんだったんだ……今の。ゼノン?エルドじゃないのか?」
だがあの顔はそっくりどころの話ではない。瓜二つと言っていい。唯一違いを挙げるとすればゼノンのほうがいくばくか年上のように見えるくらいである。
他人の行為に当たったせいか、それとも変な男にからまれたせいか、アロンは疲労困憊な顔で1階に戻った。
疲れがまったく取れない。
すでにホールではみんなが食事を囲んでいた。
「アロン!もう寝なくていいのかい?」
そう言いいながらエルヴィスが自然と近づいてきた。タイミングが良すぎる。
「お前、なんで俺が寝ていると知ってんだよ」
「一回見に行ったからね」
「そーかよ」
運のいいやつだな。あんな場面に遭遇しなくて。
アロンの顔色を見てエルヴィスの顔に心配の色が浮かんだ。
「何かあった?まだ気分良くなさそうに見えるけど」
「その通りだよ。………腹減った」
「そうだね!何食べたい?あっちに食べ物が用意されているから行こう」
あっちと指された方向を見てアロンが目を輝かした。
疲れが吹き飛んでいく気がした。
壁寄りのテーブルには様々なお菓子やサラダ、肉類が用意されていた。
見た目の美味しそうな食べ物にごくっとのどを動かす。朝は車の中で渡された軽食しか口にしてない。
情けなくもお腹がぐるると鳴いた。
「ははは!可愛いなアロンは!」
「あれ全部食べていいのか?」
空腹に可愛いと言われても無視ができた。もはやアロンの目には食べ物しか映っていない。
「好きなのを食べるといいよ」
そう言われるとアロンは走ってテーブルに向かった。
どれから先に手をつけようかと迷っていると、思わずひじが誰かにぶつかり、相手が「申し訳ない」と言った。
その声に見上げると、一瞬で目に入った黒髪に思わず変な男を思い出したが、目線が相手の顔に移した瞬間、相互が固まった。
「………」
「………」
つい先ほど2階で会った。行為中の受け側ゼノンである。
お互いが目を見開いて固まっているところに「おーい、まだ取ってないのかー?」という気だるげで、どこかちゃらけた声が響いてきた。
茶色に近い金髪を整えたアルケがズボンに手を突っ込んでゆったりと近づいてくる。そして目を見開いて固まる2人を見つけた。
「何やってんだ?あれ?そこのチビ、さっきセックス中にーーむぐっ!」
ゼノンが素早くアルケの口をガシッとつかんだ。
「お前はいつもいつもそうやってなんでも言う!少しは黙れ!」
「はぁいよ。愛してるぜ、ゼノン」
「……っ、貴様は本当に」
「お前、エルドか……?」
その声にゼノンがアロンを振り返った。
どこかぽけっとした顔に額を押さえて必死に出てきそうな舌打ちを我慢する。
「違う……俺はゼノン。きみの言うエルドとは別人だ」
「そ、そうなのか?お前、アンドロイドじゃないよな?」
どう見てもゼノンは人間である。アンドロイド特有の顔のラインもイヤーセットもない。瞳も普通である。
アンドロイドの生産において、顔のライン、イヤーセット、そして機械の瞳は法律によって決められており、人間を模して無くしてはならない。同時に人間もアンドロイドの特徴を模してはならない。
アロンにはそこらへんの知識はないものの、ゼノンはどう見たって人間だとわかる。エルドと別の人物もわかるが、あまりにもコピーのような顔に疑わずにはいられない。
「チビちゃん、お名前は?」
「誰がチビだ!」
アロンはだらしなくシャツのボタンを外しているアルケをにらみ、そしてこちらに歩いてくるエルヴィスを見つけて、来い!という手勢をした。
「アロン、何か好きな食べ物でも見つけたかい?おや」
その目がゼノンに向けられた。
「ゼノンさん!お久しぶりです」
「あなたですか……。お久しぶりです。市長」
アロンがあいさつを交わすふたりを交互に見て不思議そうに口を開いた。
「なんだ、お前ら知り合いか?」
「知り合いも何も、彼はまさにエルドの外見のモデルだよ」
「はあ!?お前以前、実在している人間に似せて作れないって言っーー」
「シー。ダメだよ、大声を出しちゃ」
口の前に指を持っていかれ、アロンは渋々と黙った。
「エルドの身分は少し敏感な話題なんだ。あんまり外では言えないんだよ。ごめんね、アロン」
「……だったら早く言えよ」
「ごめんごめん。そんなにすねないで。本当に可愛い」
「もう可愛いって言うんじゃねぇ!気持ち悪りぃ!」
ふたりの掛け合いを見てゼノンとアルケが顔を見合わせた。
ゼノンが口を開いた。
「おふたりの関係性は……」
「ああ!これは遅れました」
エルヴィスがアロンの肩を抱き寄せてにっこりと笑った。
「彼は私の妻です!」
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