ゴミ拾いで3体の夫ができた人間

那原涼

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家族に友達にペット

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クラック達が駆けつけた頃、エルヴィスの事務室からアロンの怒声が廊下まで響いていた。

「殺してやる!!死ねぇ!!」

クラックが青ざめた顔で開け放たれたドアから中をのぞいた。すると、アロンが馬乗りになってエルヴィスの首を絞めている場面を見てしまった。

「アロンさん!?何やっているのですか!?」

大慌てでアロンの両脇に腕を差し込んで引き離そうとしたが、本人の執着なのか、両脚でエルヴィスの腰をはさみ、頑なに離れなかった。身を激しくよじって、体を持ち上げられようとするなか再びエルヴィスの首を絞めた。

「アロン!落ち着いてくれ!危ないから!」

「うるせぇ!!」

首を絞められているというのにエルヴィスの顔はずっと困り顔で、まったく息苦しそうには見えない。

人間とあまりにもそっくりだからおのずと肺呼吸だと思っていたが、そんなわけがなかった。エルヴィスの余裕のある顔がアロンの怒りにどんどん油を注いだ。

「絶対に許さない!!」

「本当にごめんよアロン!」

「死んで詫びれッ!」

「正確には処分か、データを破壊しなければ死なないよ。あ、でもアンドロイドに明確な死という概念はないんだ。錆びてしまうことくらいーー」

「冷静に補足してんじゃねーよ!!」

「すまない!!」

いくら力を入れても手には柔らかい皮膚の下にあるら硬い感触が伝わってくるばかりで、ライネスみたいに折れるわけではなかった。それもそうである。

やがて指が痛くなり、叫び疲れ、力が弱まってきた頃クラックに引き剥がされ、イアンに背中をなでてもらいながらなだめられた。

「アロンさん、どうか落ち着いてください」

「お前らは黙れッ!」

アロンは鎮まらない怒りに起き上がったエルヴィスをめ付け、まだ片方の足に履いてあるスリッパをその顔めがけて飛ばした。しかし、それをきれいに受け止められてしまった。

「アロン、すまない……そんなに怒らないでくれ。指は痛くなかったかい?」

「うるせぇよ!心配するな!」

「で、でもきみの手が……」

「うるせぇだっつってんだろうがっ!!」

エルヴィスは小さく肩をすくめて、考え事をするように少し上を向いた。

「どうすれば許してくれるんだい?」

「あ"?許すわけねぇ……………」

吠えた姿勢のままアロンが数秒固まる。エルヴィスが不思議そうに「アロン?」と呼びかけた。

「……俺がやりたいことを言えばいいと言ってくれるのか?」

「もちろん!できる範囲でのことはするさ!もちろん夜這いだって構わないよ!!」

「するわけねぇだろ!……まあ、確かに同意して欲しいことはあるけどよ」

「私の同意?どんなことなんだい?」

「昨日の軍用アンドロイドが集まる交流会だっけ?あれ、まだ覚えているか?」

「もちろん」

「その時に帰ってから相談したいことがあるって言っただろ?」

「あったね」

「それなんだけどさ、グレイシーを捕まえるために俺を囮にするやつあっただろ?それに協力したいんだよ……」

最後のほうは語尾が少し小さくなった。

「………」

返事がないことにアロンが目を向けると、エルヴィスはどこか底冷えするような目で見てきていた。

その目にアロンが思わず固まる。

「な、なんだよ」

「アロン、ひとつ聞いてもいいかい?」

「あ?」

エルヴィスはゆっくりと近づき、手をアロンのあごにそえた。

「まさかとは思うけど、外に出たいがための理由……ではないね?」

「そんなつもりじゃねぇよ!」

アロンがあごを引こうとするとぐいっつかまれて無理やり目を合わせられた。

「本当かい?」

「ほ、本当だ!」

「ふむ………」

やがてエルヴィスはにっこりと笑った。

「わかった!でも許可はできない」

「は?なんでだよ!あのアンドロイドどもが守ってくれるんだろ?」

「そうだけど、それが安全だって証拠はどこに?交流会だって普通に引きこもり犯に捕まっただろう?」

「それは!」

「軍用アンドロイドがたくさんいるなかで」

「………っ!」

「アロン。私はきみのことが心配なんだ。笑って生きて欲しい。傷つかずにいて欲しい。きみたちはもろく、その生命は有限なんだ。この短い時間のなかで、私達の庇護のもとで楽しく暮らすだけではダメかい?」

「でも、俺は……」

グレイシーに母のことを聞きたい。なぜ母を知っているのか?いったい母はエルヴィス達とどんな関係なのか知りたい。

グレイシーの言い方からすると、母のアルバムを持っていたライネスだけでなく、エルヴィス達も知っているらしい。

それを直接エルヴィス達に聞きたいが、そもそも教えてくれるかどうかわからない。もしかわされたらもっと警戒して母のことを言わないのではないか?

そんなありもしない心配が横切っていく。

いや、そもそもエルヴィス達が母のことを黙っている理由はないんじゃないか?それともライネスに聞くか?

「アロン、ずっとここにいて欲しい。家族である私達、そして友達のクラックとイアンにペットのフィンジャー。あと揃えたいのはなんだい?きみが欲しいと言えばなんでも揃える。だけど外出だけはダメだ。きみも何度も危険な目に遭ってきただろう?」

「それなら、俺の聞きたい答えを教えてくれ」

「何が聞きたい?」

「俺の母親のことだ」

エルヴィスがほんのわずかに目を見開いた。




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