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ロケット
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「エルヴィス、やりすぎだ」
エルドの言葉にハッとしてエルヴィスが手を離した。
「ごめんねアロン!痛かった?」
アロンは黙ってひざを見つめて、やがてぽつりと言った。
「それなら、一緒に出かけるか?」
「え?」
「エルドと出かけたみたいに、お前も試してみるか?」
「い、いいのかい!?いや、でも外出は……」
「大丈夫だろ」
グレイシーに会うのが目的だし。なりより機嫌が良くなればフィンジャーのこともなんとかなるだろうし。
そう考えてアロンは小さくニヤッと笑った。だがエルドに見つめられていることに気づき慌てて笑みを消す。
「とにかく、今回は……まあ、毎回何かあるけど、たぶん全て偶然だ」
「アロン」
何やら真剣な声に顔を向けると、エルヴィスが口もとに笑みを浮かべていた。しかし目線は相変わらずアロンが苦手なものである。
じっと見つめたままエルヴィスは言った。
「もし一度でも逃げようとしたり、その他の目的のためなら、さすがに私でも本気で怒るよ」
「………わ、わかっている」
アロンは一瞬自分の考えていることがバレたのかと思った。しかし、誰にも言っていないことを思い出して、そんなはずはないとなんとか自分を安心させた。
翌日アロンはクラックとイアンにおしゃれしてもらい、嬉々と送り出された。
車の中でちらりと横に視線をやった。
てっきりエルヴィスとふたりかと思っていたらエルドもついてきた。エルヴィスが言うにはいたほうが安心するらしい。
そして当のエルヴィスは助手席で何やらぶつぶつとつぶやいていた。
「デートならやっぱり人気スポットだろうか……でも夜景はすでにエルドが攻略済みだし、他に何かロマンチックな場所は……」
エルヴィス的にデートのつもりらしい。大差ないが、普通デートといえば好きな人と行きたいもので、そのうえでふたりきりがいいものではないのだろうか?
母の憧れを聞き続けてきたアロンにとってその認識だった。
しかしエルヴィスはどうにもエルドやライネスとアロンを等しく接しようとしている。
独占できなくてもいい。むしろそれは許さないスタンスのようである。
アロンも別に恋愛してきたわけではないが、それでも想像はつく。例えるなら好きな食べ物を独占しようとするのは当たり前だが、エルヴィスはそれを必ずエルドとライネスの間で平等に分けようとする。
普通好きなら分けようとしないはずである。その点エルドは割と独占欲があるように思う。実際フィンジャーを遠ざけてアロンとふたりきりになろうとしていた。とはいえ、エルヴィスは職務型アンドロイドだ。普通の考えをしていないのだろう。
アロンは悶々として窓の外を眺めた。
この外出自体エルヴィスは賛成的ではなかった。昨日の時点で庭園に行こうなどと言うので、アロンが必死に説得して今こうして外出できている。
誘拐が昨日の今日なのか、車の周りには他にも護衛といって2台の車が前後についてきている。
エルドの話によると遠くには監視用のスナイパーがいるらしい。
例えばの話である。自分が逃げようとすればあのスナイパーは自分の頭を撃ち抜くのではないか?そんな考えが一瞬横切っていく。
アロンはぶるりと震えて考えないようにした。
車は進み、やがてどこかの施設についた。
アロンは車から降りて周りを見た。白壁に金で縁取られた入り口や窓があり、艶やかな茶色いドアが取り付けられた建物が目の前にあった。
「珍しいな。自動で開かないタイプのドアか?」
ゴミ溜め場からここに来てからというものの、見てきたドアの大半が自動だった。こんなに綺麗な建物なら自動ドアでもおかしくはない。
「そう!一応中身は外見とだいぶ違うけどね。持ち主がこの外見を気に入って、ずっと変えずにいたんだ。さあ、入ろう」
エルヴィスがドアを開け、アロンに入るよう手で示した。
中に入ると真っ先に目に入るのが天井に吊るされた大きなロケットである。もちろん本物ではない。
しかしアロンは見入るように目を見開いた。
「もしかして、ロケットか?」
「うん!おもちゃだけどね」
「飛べないってことか?」
「そう!ここは科学館でね、いろんな面白い展示や体験コーナーがあるんだ。ロケットの打ち上げ映像もあったはずだよ」
アロンはゴミ溜め場で拾った絵本にロケットがあったのを見つけた。それに乗れば人間は宇宙にいけるらしい。
だがそれは絵本にあったもので、本当に存在しているとは思っていなかったのである。しかしロケットは現実的に存在していたらしい。
興味が湧いてきたアロンはエルヴィスとエルドと一緒に様々な展示や体験コーナーを回った。ロケットの打ち上げ映像を見て、新型アンドロイドの展示も見て、簡易通信機の作り方も体験し、新鮮な体験にアロンはガラにもなくはしゃいだ。
それを見てエルヴィスがそっとエルドに耳打ちをした。
「やはりきみの言うとおり、アロンは楽しんでいるようだね!」
「昨日のデートでアロンが幼児向けの科学コーナーに興味あったようだからな」
「やはりきみがいると上手くいくな」
「あなた達が無能なだけだ」
「きみは本当にっ」
お土産コーナーでロケットのクッキーを見つけたアロンはその前に行くと不思議そうに見つめた。
エルヴィスに頼めば買ってくれるか?
振り返って見るとエルヴィスは何やらエルドに怒っているようである。少し声をかけずらい。
ふたたび視線を戻すと誰かの手が目の前のロケットクッキーの箱を持ち上げた。
「やあ、これがほしいのかい?坊や」
坊や呼びにアロンがハッと見上げた。
茶髪の青年が目を細めてアロンを見返していた。
エルドの言葉にハッとしてエルヴィスが手を離した。
「ごめんねアロン!痛かった?」
アロンは黙ってひざを見つめて、やがてぽつりと言った。
「それなら、一緒に出かけるか?」
「え?」
「エルドと出かけたみたいに、お前も試してみるか?」
「い、いいのかい!?いや、でも外出は……」
「大丈夫だろ」
グレイシーに会うのが目的だし。なりより機嫌が良くなればフィンジャーのこともなんとかなるだろうし。
そう考えてアロンは小さくニヤッと笑った。だがエルドに見つめられていることに気づき慌てて笑みを消す。
「とにかく、今回は……まあ、毎回何かあるけど、たぶん全て偶然だ」
「アロン」
何やら真剣な声に顔を向けると、エルヴィスが口もとに笑みを浮かべていた。しかし目線は相変わらずアロンが苦手なものである。
じっと見つめたままエルヴィスは言った。
「もし一度でも逃げようとしたり、その他の目的のためなら、さすがに私でも本気で怒るよ」
「………わ、わかっている」
アロンは一瞬自分の考えていることがバレたのかと思った。しかし、誰にも言っていないことを思い出して、そんなはずはないとなんとか自分を安心させた。
翌日アロンはクラックとイアンにおしゃれしてもらい、嬉々と送り出された。
車の中でちらりと横に視線をやった。
てっきりエルヴィスとふたりかと思っていたらエルドもついてきた。エルヴィスが言うにはいたほうが安心するらしい。
そして当のエルヴィスは助手席で何やらぶつぶつとつぶやいていた。
「デートならやっぱり人気スポットだろうか……でも夜景はすでにエルドが攻略済みだし、他に何かロマンチックな場所は……」
エルヴィス的にデートのつもりらしい。大差ないが、普通デートといえば好きな人と行きたいもので、そのうえでふたりきりがいいものではないのだろうか?
母の憧れを聞き続けてきたアロンにとってその認識だった。
しかしエルヴィスはどうにもエルドやライネスとアロンを等しく接しようとしている。
独占できなくてもいい。むしろそれは許さないスタンスのようである。
アロンも別に恋愛してきたわけではないが、それでも想像はつく。例えるなら好きな食べ物を独占しようとするのは当たり前だが、エルヴィスはそれを必ずエルドとライネスの間で平等に分けようとする。
普通好きなら分けようとしないはずである。その点エルドは割と独占欲があるように思う。実際フィンジャーを遠ざけてアロンとふたりきりになろうとしていた。とはいえ、エルヴィスは職務型アンドロイドだ。普通の考えをしていないのだろう。
アロンは悶々として窓の外を眺めた。
この外出自体エルヴィスは賛成的ではなかった。昨日の時点で庭園に行こうなどと言うので、アロンが必死に説得して今こうして外出できている。
誘拐が昨日の今日なのか、車の周りには他にも護衛といって2台の車が前後についてきている。
エルドの話によると遠くには監視用のスナイパーがいるらしい。
例えばの話である。自分が逃げようとすればあのスナイパーは自分の頭を撃ち抜くのではないか?そんな考えが一瞬横切っていく。
アロンはぶるりと震えて考えないようにした。
車は進み、やがてどこかの施設についた。
アロンは車から降りて周りを見た。白壁に金で縁取られた入り口や窓があり、艶やかな茶色いドアが取り付けられた建物が目の前にあった。
「珍しいな。自動で開かないタイプのドアか?」
ゴミ溜め場からここに来てからというものの、見てきたドアの大半が自動だった。こんなに綺麗な建物なら自動ドアでもおかしくはない。
「そう!一応中身は外見とだいぶ違うけどね。持ち主がこの外見を気に入って、ずっと変えずにいたんだ。さあ、入ろう」
エルヴィスがドアを開け、アロンに入るよう手で示した。
中に入ると真っ先に目に入るのが天井に吊るされた大きなロケットである。もちろん本物ではない。
しかしアロンは見入るように目を見開いた。
「もしかして、ロケットか?」
「うん!おもちゃだけどね」
「飛べないってことか?」
「そう!ここは科学館でね、いろんな面白い展示や体験コーナーがあるんだ。ロケットの打ち上げ映像もあったはずだよ」
アロンはゴミ溜め場で拾った絵本にロケットがあったのを見つけた。それに乗れば人間は宇宙にいけるらしい。
だがそれは絵本にあったもので、本当に存在しているとは思っていなかったのである。しかしロケットは現実的に存在していたらしい。
興味が湧いてきたアロンはエルヴィスとエルドと一緒に様々な展示や体験コーナーを回った。ロケットの打ち上げ映像を見て、新型アンドロイドの展示も見て、簡易通信機の作り方も体験し、新鮮な体験にアロンはガラにもなくはしゃいだ。
それを見てエルヴィスがそっとエルドに耳打ちをした。
「やはりきみの言うとおり、アロンは楽しんでいるようだね!」
「昨日のデートでアロンが幼児向けの科学コーナーに興味あったようだからな」
「やはりきみがいると上手くいくな」
「あなた達が無能なだけだ」
「きみは本当にっ」
お土産コーナーでロケットのクッキーを見つけたアロンはその前に行くと不思議そうに見つめた。
エルヴィスに頼めば買ってくれるか?
振り返って見るとエルヴィスは何やらエルドに怒っているようである。少し声をかけずらい。
ふたたび視線を戻すと誰かの手が目の前のロケットクッキーの箱を持ち上げた。
「やあ、これがほしいのかい?坊や」
坊や呼びにアロンがハッと見上げた。
茶髪の青年が目を細めてアロンを見返していた。
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