ゴミ拾いで3体の夫ができた人間

那原涼

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きみの関心

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アロンが目を覚ました時、すでに自分の部屋の中だった。

じくじく痛む頭を押さえて起き上がると、「アロンさん!」とクラックの声が聞こえてきた。

目を向けるとベッドのそばにはクラックとイアンがおり、アロンが目覚めたのを見てうれしそうな笑みを浮かべた。

「俺……何やっていたっけ……」

何かとても大事な夢を見ていた気がする。だがうまく夢の内容を思い出せない。

「アロンさんは誘拐されていたんですよ。エルドさんが助けたみたいです」

クラックにそう言われてトイレで変な男に会ったと思い出した。

「そうだった!俺を誘拐したやつはどこにいる!?」

「エルドさんの話によれば警察に引き渡したとのことです」

「なんで毎回こんなことに遭うんだよ……っ」

グレイシーに会えなかったうえに誘拐されたと知ってアロンは怒りが収まらなかった。そして今更のようにはたと思い出したことがあった。

「そういえば……」

言いながら部屋の隅のスペースに目を向ける。

「フィンジャーは?」

あのあとフィンジャーがどうなったかを知らない。しかしクラックとイアンは顔を見合わせると何やら言いにくそうな表情を作った。

「残念なことにアロンさんを守れず、かつ外出させたことで豚箱にインされるところです!」

残念と言う割にクラックの声はどこか弾んでいる。

「外出は俺が希望したことだし、守れなかったことはさすがに仕方ないだろ」

エルドによって買い物に夢中になっていたわけだし。

アロンがどこか申し訳なさそうな表情をしていたが、クラックはずいと顔を寄せた。

「まさか!当初、市長とフィンジャーの約束では何かあればアロンさんのためならば身を差し出すことなんです!それができていなければ犬失格です!フィンジャーはもうあなたのそばにいる資格はないんですよ!もとからないですけどね!」

「もういい。直接エルヴィスに言いにいく」

アロンはベッドを降りようとした。それを見てイアンが口を開いた。

「あ、今市長こちらに向かっているみたいです。アロンさんが目覚めたと言ったらこちらに向かうと連絡が入りました」

「早ーー」

早くないか?と言い終える前に部屋のドアが開いた。エルヴィスである。その後ろにはエルドもついている。

「アロン!!目が覚めたんだね!よかった!」

エルヴィスが泣きそうな顔でアロンに抱きついた。

「離せっ!」

「ああ、本当によかった!大丈夫だよ。きみを誘拐した者はすでに罰を受けている」

「フィンジャーは?」

フィンジャー?と繰り返してエルヴィスが離れた。

「フィンジャーなら、きみを外出させ、そのうえ守れなかった罰を受けているよ。罰が終われば監獄へ送る予定だ」

「あ、いや………その、フィンジャーのせいではないだろ」

「でも事実ではある。エルドもだ!なぜアロンを連れ出した!どれだけ危険かわかるかい!?」

「アロンが出たいと言った」

「だから連れ出した!?きみはもっとアロンの身の安全を考えてくれ!」

「何かあれば相手を灰にする」

「そんなのダメに決まっているだろ!やるとすればバレないようにね!その時は私に相談するんだ!」

「おい!俺の話を聞けっ!」

「ああ、ごめんねアロン。なんだい?」

「フィンジャーのことだ」

アロンはエルヴィスに黙って外出した事でなんだか言いにくいと感じた。

「その……あいつのせいじゃない」

「フィンジャーに戻ってきてほしいのかい?」

「当たり前だろ……」

エルヴィスはあごに手をそえて深く考え込む様子で黙った。やがてぽつりと言った。

「やはり人間相手だと近づいていくんだね」

「……?」

「フィンジャーは強盗犯だし、きみを危険に晒したこともある。特別長く接してきたわけでもない。普段から仲良くなるというほどの出来事もない。それなのになぜフィンジャーを助けようとするんだい?…フィンジャーにあって私にないものはなんだ?」

じっと見つめられてアロンは思わずごくりとのどを鳴らした。なんといえばいいのだろうか。

たまにエルヴィス達から向けられるこの視線に耐えられない時がある。

普段から騒々しく、人間みたいな行動をするが、じっと静かに、ただこちらを見つめるだけの時は無機質のような、機械の表面のような、非常に冷たいものを感じる。

「別に……そういうわけじゃねぇよ。もういいだろ!」

アロンは早くこの部屋を離れたかった。正確にはエルヴィスのそばからである。

しかしエルヴィスは離れようとするアロンを押し返し、両腕をつかんで距離を詰めて視線を合わせた。

「答えてほしい。どうすればきみから関心が寄せられるんだい?きみの笑顔がほしい。目線がほしい。可能であれば意識全てがほしい。でもきみの意識は自由だ。アンドロイドのようにプログラムとして変えられない。それでもほしくて仕方がない。アロン、教えてほしい。どうすればきみは私を、私達を求めるようになるんだい?」

「言っている意味がわからねぇよ!」

悪寒を感じてアロンはエルヴィスを突き飛ばそうとした。しかし、押してもほとんど動かないところが、つかんでくる手に力が入り、その痛みに思わず顔をしかめた。






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