ゴミ拾いで3体の夫ができた人間

那原涼

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記者会見

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光を反射する大きなビルの待合室でアロンはあくびをしていた。

ずっと何が起きるのかとビクビクしていたが、10分、20分、30分…1時間経過しても誰も何もしない。

エルヴィスは向かいでどこか難しい顔をしているが、時折ちらりとアロンの機嫌をうかがうような視線を投げかける。

その視線にアロンはいい加減無視できず、テーブルに頬杖をして聞いた。

「お前、さっきから何やっているんだ?言いたいことがあるなら言えよ」

「いや、なんというか……うーん、本当はきみを連れてくるつもりはなかったんだ」

まさか連れ出しといてまた監禁するために戻すのかと、アロンが警戒してテーブルから離れた。

だがエルヴィスの後悔は別のところにあるようである。

「この記者会見、きみに聞かせるつもりなかったし、触れさせたくなかったんだ」

「何かあるのか?」

エルヴィスがどこか悩ましげな目線を送り、やがてため息とともに外した。そして頭を抱えてテーブルに突っ伏す。

わりとこんな姿初めて見るのでアロンが驚いたように目を見開いた。

「そんなに聞かせたくないなら…ここにいるけど」

「本当かい!?」

ガバッと起きてエルヴィスがテーブルに身を乗り出した。

アロンは小さく手を前に突き出しながら言った。

「単純に、その……監禁について話したかったのと、ユラに気をつけてほしいと言いたいだけなんだよ」

「アロン……っ!心配してくれるのかい?それなのに不安と言わせてしまうくらい心配かけたなんて……私はなんてやらかしをしてしまったんだ!」

エルヴィスが痛恨の表情で胸を押さえた。

そしてノックが鳴り、エルヴィスが呼ばれていき、一緒に来ていたエルドは早々にどこかへ行ってしまったので、待機室にはアロン1人となった。

エルヴィスが去り際に「例え何を聞いても、何を言われても信じてほしい。私はきみを裏切らないよ」と言われた。

何を考えて言われたのかわからないが、何か起きるに備えてアロンは心の準備をした。

そしてその心の準備は正解だった。ただ、予想を上回る事態に準備していても頭がついていけなかった。













異変を察知したのはエルヴィスが出て行ってしばらくのことである。

アロンが1人用意されたお菓子を食べていると、廊下からドタドタという大量の人の足音が聞こえた。

その足音はどんどん近づき、やがてこの部屋の前で止まり、ノックもなしに開かれた。

ドアの向こうにはマイクとカメラを持った大量の人とその一番前に立つユラの姿がある。

なんだこの人数!

アロンが驚きに立ち上がり、警戒した目を向けた。

ユラがフッと笑うと後ろにいる人々に向かって言った。

「彼が市長の伴侶です。そして今回皆様も知っている騒動の中心人物です。ね、アロンさん」

「お前……なんだこれは」

「なんだ、と言われても……あなたの真実の顔をみなさんに見せるためです。もうこれ以上エルヴィスさんがだまされないようにね」

「だましてねぇよ!」

「でもあなたのせいでエルヴィスさんは民衆から批判され、その周りにいる者まで飛び火が移っているんですよ?」

「……っ!いや待て。そもそもあの動画は真実じゃない!」

これみよがしにユラはくってかかった。

「でも子ども達を殴ったのは本当ですよね?」

「それはそうだけど、でもそれは!」

「さらに飢えた子どもを怒鳴って追い返したのもあなたですよね?」

「そうだけど違う!!話を聞けーー」

「ファルズ商会の会長であるゼノン・ファルズさんとそっくりの伴侶型アンドロイドを作りましたよね?」

反論しようとしたアロンがピタッと固まった。明らかに言っているのがエルドのことである。

その反応にユラが目に歪つな笑みを浮かばせた。

こんな大勢の前でアロンがエルドのことを暴露しようとはしない。むしろかばうだろう。今の反応がまさにそうだと言っている。

「どうしましたか?なぜ黙ったんですか?やっぱり作ったんですね。みなさん見てください。彼は子どもを殴ったことや怒鳴ったことは否定せず、その上実在の人物をモデルに伴侶型アンドロイドを作るなど道徳に反することまで否定しません。このような方が市長のそばにおり、その愛をだまして好き勝手にするのを許せますか?」

さっきから向けられるカメラのフラッシュにアロンは目の前がチカチカするのを感じた。

「違う!否定しようとしたけどお前がさえぎるからだ!」

「ではあなたのそばによくいる仮面の方をこの場にお呼びしてはどうですか?ゼノンさんとまったく違う顔でしたら他のこともひとまず違うと信じましょう。でもどうしましょう?同じ顔ならそれは法に違反していますね。エルヴィスさんがかわいそうですね」

実在の人間と同じ伴侶型アンドロイドを作ることは禁止されている。その罪をエルヴィスが負担するかもしれないことをほのめかすとアロンは明らかに動揺した。

ユラの狙いもそこにある。支配階級のアンドロイドでは痛くも痒くもない罰しか与えられないのかもしれない。

でもアロンさえ排除できればいい。その存在を落とし、名誉を挽回できないようにし、エルヴィスのそばから離れさせることが目的である。

世論が背中を押してくれるならアロンがまた返り咲くことも難しいだろう。

エルヴィスでその動揺を誘い、正常な判断をしにくくさせたところに追い討ちをかける。

エルドがこの場に来て顔を晒せるならもっといい。







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