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同じ過ち1
しおりを挟む翌日、アロンは向かいでニコニコする人物にまぶたを跳ねらせた。
「なんでいるんだよ……」
エルヴィスがニコニコと笑い、アロンの朝食を食べる姿を見つめていた。
「きみを見ていたくて仕方がないんだ。伴侶型の機体のせいかな。きみのことが頭から離れなくて、何をしてもきみの顔が浮かぶんだ」
「それ何かの病気だろ……」
「恋の病だね!」
アロンは嫌そうに視線をそらした。昨日行為を断ったばかりか、顔合わせするのを気にしていたというのに、まさかあちらから会いにくるとは思わなかった。しかも何事もなかった顔で。
「気まずくないのかよ……」
「何が?………ハッ!まさかこの顔だと気まずく感じるのかい!?」
「それはそうなんだけど、もっとこう……いや、お前理解できなさそうだな。もういいや」
「待ってアロン。私に何が理解できないんだい?もっと詳しく教えて。きみの感じたこと思っていることを私もちゃんと理解したい」
アロンは胡乱げな目を向けた。
「別に理解しなくていいって」
そもそもエルヴィスに理解できるとは思えない。
「お前のその顔と声、俺にとっては知らない人のものだって知ってるか?」
「知っている!」
「じゃあ、いや…誤解ないように言うと、嫌いではないけど慣れないんだよ。まったくの別人と面向かっているようにしか見えないし」
「でも中身は同じだよ?何も変わってない。変わったのは外見だけだ」
「知っているけど…んー、なんて言えばいいんだこれ?」
どうにも顔と声が違うことで生じる不慣れを理解できないらしい。
「お前達はよく外見が変わるのか?」
「そうだね……そんなに滅多に起きることではないけど、変わっても特に驚かないかな」
「本当かよ……」
どう言えば理解してくれるかと悩んでいると、ふと思い出したように顔を上げた。
「そういえばユラは?ユラにはその姿を見せたのか?」
「ユラさんに?まだだよ……ハッ!大丈夫だよアロン!!例え擬似生殖機能がついてもあなた以外の人とそんなことはしない!!」
「そこは疑ってねぇよ!俺が言いたいのはそいつの反応を見てみろ。俺と同じなら多少は理解できるんじゃないか?」
全員自分と同じとは断言しないが、せめて気にしないという反応を真っ先にかます人間はいないはずである。
エルヴィスは考える顔つきであごに手を置いてしばらくすると頭を振った。
「それはしたくない」
「は?」
「この姿はきみをよろこばせようとして使わせてもらった機体だ。きみ以外の人間にわざわざ見せる意味がない。それになぜかユラさんには見せたくないんだよね」
「そ、そうなのか……?」
「うん。きみは特別だからね」
エルヴィスはそう言ってにっこりした目でアロンを見つめた。
カメラのような瞳がギュインと収縮する。
「本当にいつ見てもあなたは可愛くて仕方がない。この機体の影響かな……あなたを思うと擬似心臓器官が鼓動を早まらせるんだ。まるで本物の人間になったような気分だよ。アロンもこんなことあるのかい?」
胸に手を置いて心臓の鼓動を感じる時も、質問を投げかける時も、まるで絡めるような視線をアロンに向けた。
その視線のねっとりさにアロンが目を泳がせて合わせられずにいた。
「どうして私の視線を避けるんだい?」
「聞くなよ……もういいだろ!お前はもう仕事に戻れよ!」
「今日は一日中休暇をもらったんだ」
「は?」
「一日中きみと過ごしたいと思って」
「は!?」
エルヴィスの言った通り、朝食の時だけじゃなく、その後もずっと部屋の中に留まり、アロンにベッタリとくっついていた。
しかもアロンがおかしいと気づくほどである。
「おい……」
「なんだい?」
「何やってんだ」
「抱きしめている」
「いや、そうじゃなくて……」
エルヴィスはベッドの上でアロンを後ろから囲うように抱きしめ、熊型の投影機を持って壁に投影されたドラマを見ていた、はずである。
だが先ほどからドラマを観ているのはアロンだけで、エルヴィスの視線はずっとアロンに注いでいた。
「見過ぎなんだよ!」
「そうかな……きみがあまりにも素敵で視線が離れられない」
やりずらいな……。こいつベッタリしすぎじゃないか?伴侶型の機体のせいか?でも同じ伴侶型のエルドはこうじゃなかったぞ。……ということは機体じゃなくて中身の問題か?
あまりにも見られすぎて居心地悪くすら感じる。
「ドラマ見ろよ」
「きみを見ているほうが好きかな」
「………っお前、本当に」
「アロン……」
「なんだよ」
「私のこと愛した?」
「は?愛?」
「そう。もう愛してくれた?」
「い、いや……それはたぶんまだだと思うけど……」
「そっか……早くアロンに愛してほしいな。その日が待ち遠しくて仕方がない。愛し合えたらどれほどいいだろう……きっと全てが満たされるだろうなぁ」
エルヴィスの手がそっと服の下に潜り込んだ。
「おい!」
「大丈夫、酷いことはしないよ。ただきみの体を直接触りたいんだ」
そう言って手は胸で止まり、早打ちする心臓を上から押さえた。
「きれいな音と響きだね……本当にきれい」
体を抱きしめる腕がしまり、首筋にエルヴィスの頭がコテンと垂れた。
「アロン……本当に大好きだよ。きみの声も、髪も肌も、視線のひとつすら好きでたまらない。この心臓の音も本当にきれいだ。薄い皮膚から伝わる温もりも、その下にある赤い血肉も、体を保つ骨の形まで愛している!きみを型作る全てが好きだ!」
最初は褒めから入っているのに、どんどん生くさい内容になり、聞いていたアロンが思わず固唾を飲んだ。
本当にどうしたんだよコイツ!!
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