ゴミ拾いで3体の夫ができた人間

那原涼

文字の大きさ
136 / 208

同じ過ち1

しおりを挟む









翌日、アロンは向かいでニコニコする人物にまぶたを跳ねらせた。

「なんでいるんだよ……」

エルヴィスがニコニコと笑い、アロンの朝食を食べる姿を見つめていた。

「きみを見ていたくて仕方がないんだ。伴侶型の機体のせいかな。きみのことが頭から離れなくて、何をしてもきみの顔が浮かぶんだ」

「それ何かの病気だろ……」

「恋の病だね!」

アロンは嫌そうに視線をそらした。昨日行為を断ったばかりか、顔合わせするのを気にしていたというのに、まさかあちらから会いにくるとは思わなかった。しかも何事もなかった顔で。

「気まずくないのかよ……」

「何が?………ハッ!まさかこの顔だと気まずく感じるのかい!?」

「それはそうなんだけど、もっとこう……いや、お前理解できなさそうだな。もういいや」

「待ってアロン。私に何が理解できないんだい?もっと詳しく教えて。きみの感じたこと思っていることを私もちゃんと理解したい」

アロンは胡乱げな目を向けた。

「別に理解しなくていいって」

そもそもエルヴィスに理解できるとは思えない。

「お前のその顔と声、俺にとっては知らない人のものだって知ってるか?」

「知っている!」

「じゃあ、いや…誤解ないように言うと、嫌いではないけど慣れないんだよ。まったくの別人と面向かっているようにしか見えないし」

「でも中身は同じだよ?何も変わってない。変わったのは外見だけだ」

「知っているけど…んー、なんて言えばいいんだこれ?」

どうにも顔と声が違うことで生じる不慣れを理解できないらしい。

「お前達はよく外見が変わるのか?」

「そうだね……そんなに滅多に起きることではないけど、変わっても特に驚かないかな」

「本当かよ……」

どう言えば理解してくれるかと悩んでいると、ふと思い出したように顔を上げた。

「そういえばユラは?ユラにはその姿を見せたのか?」

「ユラさんに?まだだよ……ハッ!大丈夫だよアロン!!例え擬似生殖機能がついてもあなた以外の人とそんなことはしない!!」

「そこは疑ってねぇよ!俺が言いたいのはそいつの反応を見てみろ。俺と同じなら多少は理解できるんじゃないか?」

全員自分と同じとは断言しないが、せめて気にしないという反応を真っ先にかます人間はいないはずである。

エルヴィスは考える顔つきであごに手を置いてしばらくすると頭を振った。

「それはしたくない」

「は?」

「この姿はきみをよろこばせようとして使わせてもらった機体だ。きみ以外の人間にわざわざ見せる意味がない。それになぜかユラさんには見せたくないんだよね」

「そ、そうなのか……?」

「うん。きみは特別だからね」

エルヴィスはそう言ってにっこりした目でアロンを見つめた。

カメラのような瞳がギュインと収縮する。

「本当にいつ見てもあなたは可愛くて仕方がない。この機体の影響かな……あなたを思うと擬似心臓器官が鼓動を早まらせるんだ。まるで本物の人間になったような気分だよ。アロンもこんなことあるのかい?」

胸に手を置いて心臓の鼓動を感じる時も、質問を投げかける時も、まるで絡めるような視線をアロンに向けた。

その視線のねっとりさにアロンが目を泳がせて合わせられずにいた。

「どうして私の視線を避けるんだい?」

「聞くなよ……もういいだろ!お前はもう仕事に戻れよ!」

「今日は一日中休暇をもらったんだ」

「は?」

「一日中きみと過ごしたいと思って」

「は!?」






エルヴィスの言った通り、朝食の時だけじゃなく、その後もずっと部屋の中に留まり、アロンにベッタリとくっついていた。

しかもアロンがおかしいと気づくほどである。









「おい……」

「なんだい?」

「何やってんだ」

「抱きしめている」

「いや、そうじゃなくて……」

エルヴィスはベッドの上でアロンを後ろから囲うように抱きしめ、熊型の投影機を持って壁に投影されたドラマを見ていた、はずである。

だが先ほどからドラマを観ているのはアロンだけで、エルヴィスの視線はずっとアロンに注いでいた。

「見過ぎなんだよ!」

「そうかな……きみがあまりにも素敵で視線が離れられない」

やりずらいな……。こいつベッタリしすぎじゃないか?伴侶型の機体のせいか?でも同じ伴侶型のエルドはこうじゃなかったぞ。……ということは機体じゃなくて中身の問題か?

あまりにも見られすぎて居心地悪くすら感じる。

「ドラマ見ろよ」

「きみを見ているほうが好きかな」

「………っお前、本当に」

「アロン……」

「なんだよ」

「私のこと愛した?」

「は?愛?」

「そう。もう愛してくれた?」

「い、いや……それはたぶんまだだと思うけど……」

「そっか……早くアロンに愛してほしいな。その日が待ち遠しくて仕方がない。愛し合えたらどれほどいいだろう……きっと全てが満たされるだろうなぁ」

エルヴィスの手がそっと服の下に潜り込んだ。

「おい!」

「大丈夫、酷いことはしないよ。ただきみの体を直接触りたいんだ」

そう言って手は胸で止まり、早打ちする心臓を上から押さえた。

「きれいな音と響きだね……本当にきれい」

体を抱きしめる腕がしまり、首筋にエルヴィスの頭がコテンと垂れた。

「アロン……本当に大好きだよ。きみの声も、髪も肌も、視線のひとつすら好きでたまらない。この心臓の音も本当にきれいだ。薄い皮膚から伝わる温もりも、その下にある赤い血肉も、体を保つ骨の形まで愛している!きみを型作る全てが好きだ!」

最初は褒めから入っているのに、どんどん生くさい内容になり、聞いていたアロンが思わず固唾を飲んだ。

本当にどうしたんだよコイツ!!









しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由

スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの少年二人は、15歳になり神の祝福でスキルを得た事で道をたがえる。彼らはやがて青年となり、片方は魔王討伐に旅立つ勇者として華々しい活躍をし、もう片方はただ彼の帰還を待つ相変わらずスラム暮らしの存在となる。 これは何も持たない青年がただ勇者の帰りを待つ日常を描いた作品です。 無自覚両片想いの勇者×親友。 読了後、もう一度だけ読み直して頂けると何か見える世界が変わるかもしれません。

まおうさまは勇者が怖くて仕方がない

黒弧 追兎
BL
百年前に現れた魔王によって侵攻が行われたアルキドセ王国。 国土の半分を魔物の支配下とされてしまったアルキドセ王国の国王はやむなく、国土を分断した。 ------------- 百年後、魔王の座は孫へと譲られていた。 「あー、だる……座り心地悪すぎだろ、」 しかし、譲られた孫であるセーレに魔王の素質はなく、百年間城にも攻めに来ない勇者に驕りきっていた。 ------------- その日、魔王城に戦慄が走った。 勇者が魔王城まで攻め入ったのだ。 「ひ、ひっ……!、よ、よくきたなぁ、っゆうしゃ!」 血の滴る剣を持ち、近づく勇者に恐怖で震えるセーレに与えられたのは痛みではなく、獣の皮の温かな感触だった。 「っかわいい……俺のものにする、っ」 「ぁ、ぇひ!やだやだやだっ、ひ、ぃい……」 理解できない勇者の言葉は死に怯えるセーレを混乱させ、失神させた。 ___________________ 魔王に一目惚れで掻っ攫う溺愛勇者       × 言動が理解できない勇者が怖い卑屈な名ばかり魔王 愛をまっすぐ伝える勇者に怯える魔王のすれ違い、らぶらぶストーリー。

僕に双子の義兄が出来まして

サク
BL
この度、この僕に双子の義兄が出来ました。もう、嬉し過ぎて自慢しちゃうよ。でも、自慢しちゃうと、僕の日常が壊れてしまう気がするほど、その二人は人気者なんだよ。だから黙って置くのが、吉と見た。 そんなある日、僕は二人の秘密を知ってしまった。ん?知っているのを知られてしまった?が正しいかも。 ごめんよ。あの時、僕は焦っていたんだ。でもね。僕の秘密もね、共有して、だんだん仲良くなったんだよ。 …仲良くなったと、そう信じている。それから、僕の日常は楽しく、幸せな日々へと変わったんだ。そんな僕の話だよ。 え?内容紹介が内容紹介になってないって?気にしない、気にしない。

父と息子、婿と花嫁

ななな
BL
 花嫁になって欲しい、父親になって欲しい 。すれ違う二人の思い ーー ヤンデレおじさん × 大学生    大学生の俺は、両親が残した借金苦から風俗店で働いていた。そんな俺に熱を上げる、一人の中年男。  どう足掻いてもおじさんに囚われちゃう、可愛い男の子の話。

嘘コクのゆくえ

キムラましゅろう
恋愛
アニーは奨学金とバイトで稼いだお金で魔法学校に通う苦学生。 生活は困窮、他の学生みたいに愛だの恋だのに現を抜かしている暇などない生活を送っていた。 そんな中、とある教授の研究室で何らかの罰としてアニー=メイスンに告白して来いと教授が学生に命じているのを偶然耳にしてしまう。 アニーとは自分のこと、そして告白するように言われていた学生は密かに思いを寄せる同級生のロンド=ハミルトンで…… 次の日、さっそくその命令に従ってアニーに嘘の告白、嘘コクをしてきたロンドにアニーは…… 完全ご都合主義、ノーリアリティノークオリティのお話です。 誤字脱字が罠のように点在するお話です。菩薩の如き広いお心でお読みいただけますと幸いです。 作者は元サヤハピエン主義を掲げております。 アンチ元サヤの方は回れ右をお勧めいたします。 小説家になろうさんにも時差投稿します。

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

被虐趣味のオメガはドSなアルファ様にいじめられたい。

かとらり。
BL
 セシリオ・ド・ジューンはこの国で一番尊いとされる公爵家の末っ子だ。  オメガなのもあり、蝶よ花よと育てられ、何不自由なく育ったセシリオには悩みがあった。  それは……重度の被虐趣味だ。  虐げられたい、手ひどく抱かれたい…そう思うのに、自分の身分が高いのといつのまにかついてしまった高潔なイメージのせいで、被虐心を満たすことができない。  だれか、だれか僕を虐げてくれるドSはいないの…?  そう悩んでいたある日、セシリオは学舎の隅で見つけてしまった。  ご主人様と呼ぶべき、最高のドSを…

【完結】俺が一目惚れをした人は、血の繋がった父親でした。

モカ
BL
俺の倍はある背丈。 陽に照らされて艶めく漆黒の髪。 そして、漆黒の奥で煌めく黄金の瞳。 一目惚れだった。 初めて感じる恋の胸の高鳴りに浮ついた気持ちになったのは一瞬。 「初めまして、テオン。私は、テオドール・インフェアディア。君の父親だ」 その人が告げた事実に、母親が死んだと聞いた時よりも衝撃を受けて、絶望した。

処理中です...