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裁判2
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「聞いていますか?」
「あとで聞く!シラキお前こっち来い!」
「今はわたしと話しているでしょう!?」
「お前が言ったのか!!」
「落ち着け、落ち着け。おチビ」
「ふざけるな!」
「ねぇ、わたしの話聞いてます?こっち向きなさい!」
「何自分関係ないツラしてやがるんだ!」
「いや、違う違う!まあ、聞けって」
「うるせぇ!」
「ちょっと!わたしの話をーー」
「ちょ、待っ!うわっ」
アロンはガッとシラキの髪につかみかかった。
混乱した場面にユラは頭を痛め、そして何かを取り出して床に捨てた。なんだかこの場面に少し覚えがあるが、きっと気のせいである。
「とにかく!これを受け取りなさい!わたしとエルヴィスさんの結婚披露宴よ!」
その言葉にアロンがピタッと止まった。
そして振り返ってユラを見つめた。
「なんだって……?」
「結婚披露宴ですよ」
調子を取り戻したユラが髪を払ってふっと笑った。
「来てくださいね」
「………」
ユラが機嫌良く背中を見せて去っていた。
閉まるドアにはさまりかけた封筒をにらんでアロンは一言も発さなかった。
「あのー、アロンさん?」
シラキは上目に見上げて自分の髪を指さした。
「そろそろ離してくれないとハゲそうな気がするんだけど……?」
「………」
「………。招待状だろうな、あの封筒」
「………」
「俺が代わりに破ってこようか?」
アロンはシラキをジロッとにらんだあと手を離すと封筒を拾いに行った。
しかし拾い上げたまままたもにらんで黙ってしまった。
これ、俺が行かなきゃダメなのか?
確か支配階級のアンドロイドは何人の人間を娶っても問題ないと聞いたが、いざエルヴィスがそうなると思うと複雑な気持ちが湧いてくる。
出会った初期頃のようにエルヴィス達をうっとうしいと思っていたらこんな気持ちにはならなかっただろうが、今はその頃と比べ物にならないほど思いが偏っている自覚がある。
アロンはどこか行きどころのない怒りをシラキに向けた。
「ところでよ、お前、ユラにエルヴィスのことを教えたのは本当か?俺が浮気しているって?」
「あー……それは違う。これには深い事情が……おいおい!」
アロンが封筒を床に捨て、拳をゴキゴキ鳴らしながら近づいていった。
「何が深い事情だ!」
「待っ!話聞け!」
シラキは慌てて飛びついてくるアロンの両手首をつかんだ。
「朝トイレ行ったらたまたまあの嬢ちゃんに会ったんだ!それでお前が見知らぬ伴侶型アンドロイドといちゃついているってちょこっと触れただけだ、な?信じてくれ。浮気なんか一言も言ってない」
「言ってるようなもんだろうが!!なんであいつに言うんだよ!俺とあいつの関係良くないって知ってるだろ!」
「わざとだ」
「…わざと?なんでだ」
「お前の弱みをつかんだと思わせるためだ」
「なんのために?」
「だってこうやって相手の弱みをつかめば掴むほど本人は優越感に浸って油断するもんだろ?あの女はお前を完全にコントロールできたと思ってるだろうが、それはあくまで上辺だけの事実で、実際お前はまったく脅威に晒されてない」
「言ってる意味がよくわからねぇけど、あいつが弱みを握っているのは本当だ……」
シラキはニヤッと笑って、そらされたアロンの頬をつかむと自分と目を合わせた。
「アンドロイドはお前が思っているより人間に危害を加えられる。直接でなくとも間接的に様々な方法がある。まあ、お前は嘘をつけないと見た。だから詳しくは言わないが、結婚披露宴楽しみにしろよ」
「お前何かするつもりなのか?」
「まさか!」
まさか!と言われたが、アロンはまったく信じていない。
だからと言ってシラキが何をするのか想像もつかない。
現在、結婚披露宴の会場である温室にてアロンは手持ち無沙汰にしていた。
何事もなければおそらく開始とともにエルヴィスとユラは会場に現れるはずである。
ただこの市のしきたりではアンドロイド側は先に会場内で接客じみたことをしなければいけないらしい。
アロンは会場内を見渡したが、エルヴィスの姿はまだ見当たらなかった。
あの伴侶型の機体から戻ったのかどうかもわからない。戻らなかったとして、伴侶型の機体のまま式に出るのだろうか?それすらわからない。
そして昨日何かしそうなことを言っていたシラキはアロンを見送り出してから姿を現さず、なんなら朝の雰囲気的に式には出ないようである。
華やかな場内と違ってアロンの機嫌は目に見えて悪い。
「というか、ここって式場もあるのかよ。どれだけ大きいんだ、この温室」
薔薇に隠れるようにベンチに座ったアロンは場内を見渡していた。
ちらほらと絢爛会のメンバーもいる。
時間が経つにつれどんどん人は増えていき、やがて誰が誰なのかわからなくなってくる頃、ぼうとしているとそばに誰かが座った。
「お前!」
隣に座った人物を見てアロンが驚いた声を出した。隣に座ってきたのはアロイスである。
「お前も来たのかよ……」
「ああ。あの金魚のフンみたいな女の式に参加しなければいけないのかと思うと吐き気がする」
アロイスはイラだった顔で腕を組んだ。
「しかもなんだ、この豪華な人員と装飾。まったくもって無駄だ!あの女が見合わない!」
アロンが不機嫌なのは実はこれも理由である。
アロンとエルヴィス達の結婚式は簡素に終わったが、なぜユラとの結婚式はこんなに豪華にするのか、考えるだけで怒りが湧いてくる。
当初は気にしていなかったがこの差を目の当たりにするとさすがに自分の式と比べてしまう。
やっぱりユラが言うように家の差か?
クソッ、イライラするな。
「あとで聞く!シラキお前こっち来い!」
「今はわたしと話しているでしょう!?」
「お前が言ったのか!!」
「落ち着け、落ち着け。おチビ」
「ふざけるな!」
「ねぇ、わたしの話聞いてます?こっち向きなさい!」
「何自分関係ないツラしてやがるんだ!」
「いや、違う違う!まあ、聞けって」
「うるせぇ!」
「ちょっと!わたしの話をーー」
「ちょ、待っ!うわっ」
アロンはガッとシラキの髪につかみかかった。
混乱した場面にユラは頭を痛め、そして何かを取り出して床に捨てた。なんだかこの場面に少し覚えがあるが、きっと気のせいである。
「とにかく!これを受け取りなさい!わたしとエルヴィスさんの結婚披露宴よ!」
その言葉にアロンがピタッと止まった。
そして振り返ってユラを見つめた。
「なんだって……?」
「結婚披露宴ですよ」
調子を取り戻したユラが髪を払ってふっと笑った。
「来てくださいね」
「………」
ユラが機嫌良く背中を見せて去っていた。
閉まるドアにはさまりかけた封筒をにらんでアロンは一言も発さなかった。
「あのー、アロンさん?」
シラキは上目に見上げて自分の髪を指さした。
「そろそろ離してくれないとハゲそうな気がするんだけど……?」
「………」
「………。招待状だろうな、あの封筒」
「………」
「俺が代わりに破ってこようか?」
アロンはシラキをジロッとにらんだあと手を離すと封筒を拾いに行った。
しかし拾い上げたまままたもにらんで黙ってしまった。
これ、俺が行かなきゃダメなのか?
確か支配階級のアンドロイドは何人の人間を娶っても問題ないと聞いたが、いざエルヴィスがそうなると思うと複雑な気持ちが湧いてくる。
出会った初期頃のようにエルヴィス達をうっとうしいと思っていたらこんな気持ちにはならなかっただろうが、今はその頃と比べ物にならないほど思いが偏っている自覚がある。
アロンはどこか行きどころのない怒りをシラキに向けた。
「ところでよ、お前、ユラにエルヴィスのことを教えたのは本当か?俺が浮気しているって?」
「あー……それは違う。これには深い事情が……おいおい!」
アロンが封筒を床に捨て、拳をゴキゴキ鳴らしながら近づいていった。
「何が深い事情だ!」
「待っ!話聞け!」
シラキは慌てて飛びついてくるアロンの両手首をつかんだ。
「朝トイレ行ったらたまたまあの嬢ちゃんに会ったんだ!それでお前が見知らぬ伴侶型アンドロイドといちゃついているってちょこっと触れただけだ、な?信じてくれ。浮気なんか一言も言ってない」
「言ってるようなもんだろうが!!なんであいつに言うんだよ!俺とあいつの関係良くないって知ってるだろ!」
「わざとだ」
「…わざと?なんでだ」
「お前の弱みをつかんだと思わせるためだ」
「なんのために?」
「だってこうやって相手の弱みをつかめば掴むほど本人は優越感に浸って油断するもんだろ?あの女はお前を完全にコントロールできたと思ってるだろうが、それはあくまで上辺だけの事実で、実際お前はまったく脅威に晒されてない」
「言ってる意味がよくわからねぇけど、あいつが弱みを握っているのは本当だ……」
シラキはニヤッと笑って、そらされたアロンの頬をつかむと自分と目を合わせた。
「アンドロイドはお前が思っているより人間に危害を加えられる。直接でなくとも間接的に様々な方法がある。まあ、お前は嘘をつけないと見た。だから詳しくは言わないが、結婚披露宴楽しみにしろよ」
「お前何かするつもりなのか?」
「まさか!」
まさか!と言われたが、アロンはまったく信じていない。
だからと言ってシラキが何をするのか想像もつかない。
現在、結婚披露宴の会場である温室にてアロンは手持ち無沙汰にしていた。
何事もなければおそらく開始とともにエルヴィスとユラは会場に現れるはずである。
ただこの市のしきたりではアンドロイド側は先に会場内で接客じみたことをしなければいけないらしい。
アロンは会場内を見渡したが、エルヴィスの姿はまだ見当たらなかった。
あの伴侶型の機体から戻ったのかどうかもわからない。戻らなかったとして、伴侶型の機体のまま式に出るのだろうか?それすらわからない。
そして昨日何かしそうなことを言っていたシラキはアロンを見送り出してから姿を現さず、なんなら朝の雰囲気的に式には出ないようである。
華やかな場内と違ってアロンの機嫌は目に見えて悪い。
「というか、ここって式場もあるのかよ。どれだけ大きいんだ、この温室」
薔薇に隠れるようにベンチに座ったアロンは場内を見渡していた。
ちらほらと絢爛会のメンバーもいる。
時間が経つにつれどんどん人は増えていき、やがて誰が誰なのかわからなくなってくる頃、ぼうとしているとそばに誰かが座った。
「お前!」
隣に座った人物を見てアロンが驚いた声を出した。隣に座ってきたのはアロイスである。
「お前も来たのかよ……」
「ああ。あの金魚のフンみたいな女の式に参加しなければいけないのかと思うと吐き気がする」
アロイスはイラだった顔で腕を組んだ。
「しかもなんだ、この豪華な人員と装飾。まったくもって無駄だ!あの女が見合わない!」
アロンが不機嫌なのは実はこれも理由である。
アロンとエルヴィス達の結婚式は簡素に終わったが、なぜユラとの結婚式はこんなに豪華にするのか、考えるだけで怒りが湧いてくる。
当初は気にしていなかったがこの差を目の当たりにするとさすがに自分の式と比べてしまう。
やっぱりユラが言うように家の差か?
クソッ、イライラするな。
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