140 / 163
裁判3
しおりを挟む
アロンはジロリとした目で会場内を見渡した。
見れば見るほどイラつくな。
「少し外の空気吸ってくる」
そう言って立ち上がり、外に向かおうとした。
だが立ち上がって行こうとした瞬間、何かがアロンの行く手をふさがった。真っ先に目に入ってきたのは金髪である。
「アロンさん、お茶会以来ですわね」
ネロシカが珍しくこういった社交の場で1人でいた。
「お前も来たのかよ……」
「ええ、ユラさんの晴れ舞台ですしね」
その言葉にアロイスが鼻で笑い、ベンチから立ち上がるとアロンを自分の後ろに押した。
「なんだ、あの女の保護者のつもりか?」
「あら、あなたはここでゆったりして大丈夫かしら。お父様から交流してくるように言われたと思うけれど?」
「そう言うお前はどうなんだ?いつも引き連れている犬どもはお前に構ってくれないのか?」
「絢爛会のメンバーでしたら会場内にいるわ。私はあなたと違って人員関係は広いので、例え交流に疲れてここでお休みしても大丈夫なのよ?」
「はっ!皮肉のつもりか?僕は優秀だからな!例えーー」
「それで何かあった際、誰も助けてくれないと思うけれど。あなたは優秀だから助けは必要ないのでしょう」
「………っ、お前」
「ああ、そうだった。確かあちらにご婚約者の方がいらしていたわ。会いに行かれては?」
ネロシカの指差す方向にはこちらをひかえめに見つめている女性がいた。
アロイスの表情が変わり、苦虫を噛み潰したような顔をすると「余計な世話を!」と吐き捨ててその女性のもとへ向かった。
お茶会でネロシカのアロイスへの思いを聞いたばかりか、アロンは気まずげな顔で声をひそめて言った。
「いいのかよ、あれ。婚約者ってことは将来結婚する相手なんだろ?」
「ええ。私とアロイスでは結果など出ませんからね。私の祖父は自分の実の兄に恋をし、色々とやらかしてしまったのでね、それを知っている身としては結構対立することでこの気持ちを抑えているのです。なんせ、私は祖父とよく似ているらしいので」
ネロシカはアロンに近づき、小声にささやいた。
「ご安心ください。アロイスのお友達は私のお友達。絢爛会はあなたの味方ですよ」
「どういう意味だ、それ」
「ふふ。私は利益重視です。しかし、人間であるゆえ情に流されることもあります。アロイスがあんな女を見捨てろ、と言うのでね。身内贔屓としては見捨てなければいけません」
「言ってることめちゃくちゃだろ……」
「だってアロイスが可愛くて仕方ないんです。なるべくお願いを叶えてあげないと」
ふふと笑ってネロシカは離れた。
「あいつ、意外とやばいな」
「誰がやばいんだ」
突然近くで響いた声にアロンが驚いた声を出した。見やるとエルドが手を後ろに組みながら近づいてきていた。
「お前来ていいのかよ!」
「何かダメな理由があるのか?」
「い、いや……そういうわけじゃ」
「ユラのことなら心配しなくていい」
「何が心配しなくていいんだ?」
「彼女はエルヴィスと成婚することはない」
「は?いや、でも今ーー」
「エルヴィスが来た」
アロンはパッとエルドの視線先を振り向いた。
白いスーツ姿のエルヴィスがいつの間にか会場内におり、目を輝かせてアロンに手を振っていた。
しかしすぐに近くに寄ってきた人々と挨拶を交わし、こちらを見る余裕もなくなったようである。
「式が始まるまで私といよう、アロン」
「ああ……ここでおとなしくしろよ?ユラの前には出るな」
エルドは答えず、ただ小さく笑った。
「お前今笑ったか!?」
「いや、気にしないでくれ」
絶対笑っただろこいつ!
エルヴィスが現れてからしばらく経ち、やっと式が本格的に始まった。
最初に司会らしきアンドロイドが壇上で言葉を述べ、エルヴィスが会場内に集まった人々に感謝を伝えた。
そしてそのまま滞りなく進み、会場内の入り口のドアが開き、誰かが姿を現した。
父親に手を引かれて敷かれたじゅうたんの上を歩くユラである。
白いドレスにベールを被った姿は確かに美しい。
アロンは思わず自分と比べてしまった。
アロイスはユラがこの式と見合わないと言うけれど、せめて自分よりはよっぽど見合っている気がした。
アロンはなんだかこの場にいたたまれなくなり離れようとした。
だが離れようとしたところエルドに腕を引かれた。
「離せっ!」
「最後まで見てほしい」
「は?」
意味がわからなかったが、エルドの真剣な目にアロンはしぶしぶとその場に止まった。
しかし見ていてやはり気持ちのいいものではない。
ユラはエルヴィスと同じ壇上に立つとマイクを受け取り、感謝と今後の抱負らしき言葉を言った。
しかし、程なくすると言葉の質が変わった。
アロンは最初こそ顔をそらして聞き流していたが、突然自分の名前を呼ばれたことにギョッと目を向けた。
「ーーアロンさんはとてもいい方です。しかし私はやはり彼がエルヴィスさんの伴侶であることに納得がいきません。みなさん、モニターにご注目ください」
ユラが手のひらを向けた方向には空中に投影されたモニターがあった。
そこには自分の姿が映し出され、フェスティバルの日の喧嘩をしていた映像が流れ始めた。
それを見てアロンは頭から冷水を浴びせられたかのように血の気が引いていくのを感じた。
な、なんであんな映像が、こんなところで……。
見れば見るほどイラつくな。
「少し外の空気吸ってくる」
そう言って立ち上がり、外に向かおうとした。
だが立ち上がって行こうとした瞬間、何かがアロンの行く手をふさがった。真っ先に目に入ってきたのは金髪である。
「アロンさん、お茶会以来ですわね」
ネロシカが珍しくこういった社交の場で1人でいた。
「お前も来たのかよ……」
「ええ、ユラさんの晴れ舞台ですしね」
その言葉にアロイスが鼻で笑い、ベンチから立ち上がるとアロンを自分の後ろに押した。
「なんだ、あの女の保護者のつもりか?」
「あら、あなたはここでゆったりして大丈夫かしら。お父様から交流してくるように言われたと思うけれど?」
「そう言うお前はどうなんだ?いつも引き連れている犬どもはお前に構ってくれないのか?」
「絢爛会のメンバーでしたら会場内にいるわ。私はあなたと違って人員関係は広いので、例え交流に疲れてここでお休みしても大丈夫なのよ?」
「はっ!皮肉のつもりか?僕は優秀だからな!例えーー」
「それで何かあった際、誰も助けてくれないと思うけれど。あなたは優秀だから助けは必要ないのでしょう」
「………っ、お前」
「ああ、そうだった。確かあちらにご婚約者の方がいらしていたわ。会いに行かれては?」
ネロシカの指差す方向にはこちらをひかえめに見つめている女性がいた。
アロイスの表情が変わり、苦虫を噛み潰したような顔をすると「余計な世話を!」と吐き捨ててその女性のもとへ向かった。
お茶会でネロシカのアロイスへの思いを聞いたばかりか、アロンは気まずげな顔で声をひそめて言った。
「いいのかよ、あれ。婚約者ってことは将来結婚する相手なんだろ?」
「ええ。私とアロイスでは結果など出ませんからね。私の祖父は自分の実の兄に恋をし、色々とやらかしてしまったのでね、それを知っている身としては結構対立することでこの気持ちを抑えているのです。なんせ、私は祖父とよく似ているらしいので」
ネロシカはアロンに近づき、小声にささやいた。
「ご安心ください。アロイスのお友達は私のお友達。絢爛会はあなたの味方ですよ」
「どういう意味だ、それ」
「ふふ。私は利益重視です。しかし、人間であるゆえ情に流されることもあります。アロイスがあんな女を見捨てろ、と言うのでね。身内贔屓としては見捨てなければいけません」
「言ってることめちゃくちゃだろ……」
「だってアロイスが可愛くて仕方ないんです。なるべくお願いを叶えてあげないと」
ふふと笑ってネロシカは離れた。
「あいつ、意外とやばいな」
「誰がやばいんだ」
突然近くで響いた声にアロンが驚いた声を出した。見やるとエルドが手を後ろに組みながら近づいてきていた。
「お前来ていいのかよ!」
「何かダメな理由があるのか?」
「い、いや……そういうわけじゃ」
「ユラのことなら心配しなくていい」
「何が心配しなくていいんだ?」
「彼女はエルヴィスと成婚することはない」
「は?いや、でも今ーー」
「エルヴィスが来た」
アロンはパッとエルドの視線先を振り向いた。
白いスーツ姿のエルヴィスがいつの間にか会場内におり、目を輝かせてアロンに手を振っていた。
しかしすぐに近くに寄ってきた人々と挨拶を交わし、こちらを見る余裕もなくなったようである。
「式が始まるまで私といよう、アロン」
「ああ……ここでおとなしくしろよ?ユラの前には出るな」
エルドは答えず、ただ小さく笑った。
「お前今笑ったか!?」
「いや、気にしないでくれ」
絶対笑っただろこいつ!
エルヴィスが現れてからしばらく経ち、やっと式が本格的に始まった。
最初に司会らしきアンドロイドが壇上で言葉を述べ、エルヴィスが会場内に集まった人々に感謝を伝えた。
そしてそのまま滞りなく進み、会場内の入り口のドアが開き、誰かが姿を現した。
父親に手を引かれて敷かれたじゅうたんの上を歩くユラである。
白いドレスにベールを被った姿は確かに美しい。
アロンは思わず自分と比べてしまった。
アロイスはユラがこの式と見合わないと言うけれど、せめて自分よりはよっぽど見合っている気がした。
アロンはなんだかこの場にいたたまれなくなり離れようとした。
だが離れようとしたところエルドに腕を引かれた。
「離せっ!」
「最後まで見てほしい」
「は?」
意味がわからなかったが、エルドの真剣な目にアロンはしぶしぶとその場に止まった。
しかし見ていてやはり気持ちのいいものではない。
ユラはエルヴィスと同じ壇上に立つとマイクを受け取り、感謝と今後の抱負らしき言葉を言った。
しかし、程なくすると言葉の質が変わった。
アロンは最初こそ顔をそらして聞き流していたが、突然自分の名前を呼ばれたことにギョッと目を向けた。
「ーーアロンさんはとてもいい方です。しかし私はやはり彼がエルヴィスさんの伴侶であることに納得がいきません。みなさん、モニターにご注目ください」
ユラが手のひらを向けた方向には空中に投影されたモニターがあった。
そこには自分の姿が映し出され、フェスティバルの日の喧嘩をしていた映像が流れ始めた。
それを見てアロンは頭から冷水を浴びせられたかのように血の気が引いていくのを感じた。
な、なんであんな映像が、こんなところで……。
7
あなたにおすすめの小説
分厚いメガネ令息の非日常
餅粉
BL
「こいつは俺の女だ。手を出したらどうなるかわかるよな」
「シノ様……素敵!」
おかしい。おかしすぎる!恥ずかしくないのか?高位貴族が平民の女学生に俺の女ってしかもお前は婚約者いるだろうが!!
その女学生の周りにはお慕いしているであろう貴族数名が立っていた。
「ジュリーが一番素敵だよ」
「そうだよ!ジュリーが一番可愛いし美人だし素敵だよ!!」
「……うん。ジュリーの方が…素敵」
ほんと何この状況、怖い!怖いすぎるぞ!あと妙にキモい
「先輩、私もおかしいと思います」
「だよな!」
これは真面目に学生生活を送ろうとする俺の日常のお話
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
乙女ゲームのサポートメガネキャラに転生しました
西楓
BL
乙女ゲームのサポートキャラとして転生した俺は、ヒロインと攻略対象を無事くっつけることが出来るだろうか。どうやらヒロインの様子が違うような。距離の近いヒロインに徐々に不信感を抱く攻略対象。何故か攻略対象が接近してきて…
ほのほのです。
※有難いことに別サイトでその後の話をご希望されました(嬉しい😆)ので追加いたしました。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
帝に囲われていることなど知らない俺は今日も一人草を刈る。
志子
BL
ノリと勢いで書いたBL転生中華ファンタジー。
美形×平凡。
乱文失礼します。誤字脱字あったらすみません。
崖から落ちて顔に大傷を負い高熱で三日三晩魘された俺は前世を思い出した。どうやら農村の子どもに転生したようだ。
転生小説のようにチート能力で無双したり、前世の知識を使ってバンバン改革を起こしたり……なんてことはない。
そんな平々凡々の俺は今、帝の花園と呼ばれる後宮で下っ端として働いてる。
え? 男の俺が後宮に? って思ったろ? 実はこの後宮、ちょーーと変わっていて…‥。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる