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裁判4
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映し出された映像の中でアロンは一方的に相手を殴っているように編集された場面が映し出され、その話題にもなっている映像を見て人々の間からざわめきが起きた。
「あれはもしかして例の……?」
「殴っている人間が市長の伴侶という方かな?」
「まあ、なんて酷いことを!」
人々の中には隣市の市長であるユスヴェルの姿もある。
「おやおや……」
ユスヴェルは腕を組みながらあごをさすり、スッと視線をアロンのいる方向へ向けた。
人々の論議する声にアロンはただ固まって動けなかった。
「立つのがつらいなら私につかまるといい」
エルドはアロンの手を取ると安心させるようにぎゅっと握った。
「エ、エルド…………そうだ!お前早く隠れろ!こんなところにいたら見つかってしまう!」
もしこんな大勢の前でエルドのことを言いふらされ、何かあって連れて行かれてしまうのではと危惧し、アロンはなんとか見つかる前にエルドを外に出したかった。
しかし、ユラがそれを見逃すはずがなかった。
「みなさん、あちらを見てください。アロンさんと一緒にいるのはエルドという伴侶型アンドロイドです。アロンさんが想いを寄せている方とそっくりに作られた違法アンドロイドです」
アロンがパッと振り返った。
ちょうど自分を指差すユラと目が合い、フッと笑いかけられた。
こいつ……っ!!
周りを見ると人々の視線は全員こちらに向いており、疑いの目でささやき合っていた。
ダ、ダメだ!早く離れないと!
「でもわたしが言うだけではきっと証拠になりませんよね?なのでとある方を招待いたしました。申し訳ありませんが、前へ上がっていただいてもよろしいでしょうか?ゼノンさん」
その名前にアロンがハッとした。
会場内は人が多いため、みんな各々好きに散らばって楽しんでいる。そのため移動する人物をすぐには見つけられない。
だが、一箇所だけ人々が視線を移動しながら追っているところがある。
その全ての視線を集める人物は着実に壇上へ近づき、ユラの隣に立った。
間違いなくゼノンである。
アロンはドッと冷や汗を吹き出した。
水族館の件以降、アロンはゼノンと会っていない。
ゼノンの反応からエルドのことはとっくに知っているだろうし、ユラに協力する理由もあるとは思えない。何より自分とゼノンのあいだに恨みはないーーそこまで考えてアロンは思い出した。
自分はないが、ライネスとはあるかもしれない。
水族館で中身を入れ替えられたゼノンの恋人、アルケの機体の首をへし折ったのがライネスである。
ゼノンとアルケの仲の良さを間近で見たことあるアロンは、まさか、と思い震え出した。
ゼノンは恋人の機体を破壊させられた恨みでユラに協力しているのか?
本当にそうならいくらこっちが違うと言っても同じ顔のゼノンが被害を訴えればエルドは廃棄処理になるかもしれない。
それに思い当たり、アロンは急に全ての逃げ道をふさがれた気がした。
ど、どうする!?
アロンはエルヴィスに視線を向けた。だがあちらはただ黙ってユラを見つめ、怒りも笑いもしない。
今度はエルドを見るとアロンは今さらのように気づいた。
仮面つけてない!これじゃあゼノンと同じ顔の事実がごまかせない!
「ゼノンさん、彼はあなたと同じ顔に見えますか?」
ゼノンは一瞬だけアロンと視線を合わせた。
「……ああ、同じだ」
「やはりあなた本人から見てもそうですね。法律上、人間と同じ顔を作るのは違法とされています。あなたが訴えればあそこにいるアンドロイドは廃棄可能です」
ゼノンはわずかに首を傾げてエルドと視線を合わせた。
「………彼の廃棄は結構だ」
「ええ、そうですよね……え?」
ユラが驚いたようにゼノンを振り向いた。
「あの、それはどういう……だってあなたの顔を盗んで作られたアンドロイドですよ?何をされているかもわからないし、勝手に伴侶型としてコピーされるのは気持ち悪くないんですか?」
ゼノンは口もとを隠し、ボソリと言った。
「……あの人の作ったものを、気持ち悪いと表現するな」
「あの、すみません。今なんと言いましたか?少し聞き取れなかったのですが……」
「いや、気にしないでくれ。彼についてのことは先ほども言ったように廃棄はしなくていい。彼の存在は知っている。市長が私の顔とそっくりだということを知って直々に尋ねてきた。問題はなかったので、そのまま同意書にサインをしている。これはその電子書類だ」
そう言って腕輪型端末を操作し、何かを空中に投げ出した。
「同意書……?そんなものがあるのなら、なぜ私の誘いに乗ったのですか!」
「きみが間違いを正したいと言ったではないのか?」
「そうですけれど、でもこんなの……しかし、アロンさんがエルヴィスさんの伴侶にふさわしくないという意見は変わりません。エルドさん以外にも伴侶型アンドロイドがいますよね?」
アロンはすぐに伴侶型の機体を使っているエルヴィスのことだと気づいた。
ユラが端末を操作し、投影された映像から一転、アロンのよく見慣れた場所が映し出された。それは自分の部屋の前である。
「あれはもしかして例の……?」
「殴っている人間が市長の伴侶という方かな?」
「まあ、なんて酷いことを!」
人々の中には隣市の市長であるユスヴェルの姿もある。
「おやおや……」
ユスヴェルは腕を組みながらあごをさすり、スッと視線をアロンのいる方向へ向けた。
人々の論議する声にアロンはただ固まって動けなかった。
「立つのがつらいなら私につかまるといい」
エルドはアロンの手を取ると安心させるようにぎゅっと握った。
「エ、エルド…………そうだ!お前早く隠れろ!こんなところにいたら見つかってしまう!」
もしこんな大勢の前でエルドのことを言いふらされ、何かあって連れて行かれてしまうのではと危惧し、アロンはなんとか見つかる前にエルドを外に出したかった。
しかし、ユラがそれを見逃すはずがなかった。
「みなさん、あちらを見てください。アロンさんと一緒にいるのはエルドという伴侶型アンドロイドです。アロンさんが想いを寄せている方とそっくりに作られた違法アンドロイドです」
アロンがパッと振り返った。
ちょうど自分を指差すユラと目が合い、フッと笑いかけられた。
こいつ……っ!!
周りを見ると人々の視線は全員こちらに向いており、疑いの目でささやき合っていた。
ダ、ダメだ!早く離れないと!
「でもわたしが言うだけではきっと証拠になりませんよね?なのでとある方を招待いたしました。申し訳ありませんが、前へ上がっていただいてもよろしいでしょうか?ゼノンさん」
その名前にアロンがハッとした。
会場内は人が多いため、みんな各々好きに散らばって楽しんでいる。そのため移動する人物をすぐには見つけられない。
だが、一箇所だけ人々が視線を移動しながら追っているところがある。
その全ての視線を集める人物は着実に壇上へ近づき、ユラの隣に立った。
間違いなくゼノンである。
アロンはドッと冷や汗を吹き出した。
水族館の件以降、アロンはゼノンと会っていない。
ゼノンの反応からエルドのことはとっくに知っているだろうし、ユラに協力する理由もあるとは思えない。何より自分とゼノンのあいだに恨みはないーーそこまで考えてアロンは思い出した。
自分はないが、ライネスとはあるかもしれない。
水族館で中身を入れ替えられたゼノンの恋人、アルケの機体の首をへし折ったのがライネスである。
ゼノンとアルケの仲の良さを間近で見たことあるアロンは、まさか、と思い震え出した。
ゼノンは恋人の機体を破壊させられた恨みでユラに協力しているのか?
本当にそうならいくらこっちが違うと言っても同じ顔のゼノンが被害を訴えればエルドは廃棄処理になるかもしれない。
それに思い当たり、アロンは急に全ての逃げ道をふさがれた気がした。
ど、どうする!?
アロンはエルヴィスに視線を向けた。だがあちらはただ黙ってユラを見つめ、怒りも笑いもしない。
今度はエルドを見るとアロンは今さらのように気づいた。
仮面つけてない!これじゃあゼノンと同じ顔の事実がごまかせない!
「ゼノンさん、彼はあなたと同じ顔に見えますか?」
ゼノンは一瞬だけアロンと視線を合わせた。
「……ああ、同じだ」
「やはりあなた本人から見てもそうですね。法律上、人間と同じ顔を作るのは違法とされています。あなたが訴えればあそこにいるアンドロイドは廃棄可能です」
ゼノンはわずかに首を傾げてエルドと視線を合わせた。
「………彼の廃棄は結構だ」
「ええ、そうですよね……え?」
ユラが驚いたようにゼノンを振り向いた。
「あの、それはどういう……だってあなたの顔を盗んで作られたアンドロイドですよ?何をされているかもわからないし、勝手に伴侶型としてコピーされるのは気持ち悪くないんですか?」
ゼノンは口もとを隠し、ボソリと言った。
「……あの人の作ったものを、気持ち悪いと表現するな」
「あの、すみません。今なんと言いましたか?少し聞き取れなかったのですが……」
「いや、気にしないでくれ。彼についてのことは先ほども言ったように廃棄はしなくていい。彼の存在は知っている。市長が私の顔とそっくりだということを知って直々に尋ねてきた。問題はなかったので、そのまま同意書にサインをしている。これはその電子書類だ」
そう言って腕輪型端末を操作し、何かを空中に投げ出した。
「同意書……?そんなものがあるのなら、なぜ私の誘いに乗ったのですか!」
「きみが間違いを正したいと言ったではないのか?」
「そうですけれど、でもこんなの……しかし、アロンさんがエルヴィスさんの伴侶にふさわしくないという意見は変わりません。エルドさん以外にも伴侶型アンドロイドがいますよね?」
アロンはすぐに伴侶型の機体を使っているエルヴィスのことだと気づいた。
ユラが端末を操作し、投影された映像から一転、アロンのよく見慣れた場所が映し出された。それは自分の部屋の前である。
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