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裁判5
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映像のなか、廊下でアロンはちょうど伴侶型の機体を使っているエルヴィスを外に蹴り出していた。
「アロンさん、これはあなたのお友達から入手した映像です」
アロンは思わず「お友達?」と繰り返した。
真っ先に頭に浮かんできたのはクラックとイアンである。
「あなたはお友達のシラキという方をまるで犬のように扱っているらしいですね?ご本人からもう嫌気がさしたとお聞きしていますよ?」
「シラキのことか!いや、あれは……!」
「私が始めてシラキさんと会った時、彼は確か首輪をつけていました。今思うとファッションにしてはデザインがあまりにも本物の首輪と相違がありませんでした。あなたは人間を犬のように扱って恥ずかしくないのですか?」
アロンはどうやって弁明すればいいのかわからなかった。
エルドに狼が好きだと言ったら人間を送られてきたと言えばいいのか?もちろんそんなことバカ正直に言えない。
アロンが返答に困っているあいだ、ユラの言語攻撃は止まらなかった。
「アロンさん、あなたはエルヴィスさんにふさわしい人間になろうとしたことはありますか?」
今まで言われたことはせめて心の中で反論できていたが、その言葉には思わず反論する気持ちすら忘れてしまった。
アロンの記憶の中ではさまざまな出来事が過ぎていくが、エルヴィス達にふさわしい人間になろうとしたことはなかった気がする。
それに気づいた瞬間、今までユラの言ってきたことが別に間違いではないのかもしれないと考えた。
確かに自分ではエルヴィス達に釣り合わないのかもしれない。
アロンが一歩下がり、視線が不安げに揺れ始めたのを見てエルドがそっとその肩に触れた。
「アロン、大丈夫か」
「だ、大丈夫……」
壇上でユラはまだまだ続けた。
「何度でも言いますが、あなたはエルヴィスさんの伴侶にはふさわしくありません!貧困区出身であり、学も礼儀もなく、エルヴィスさんのために利益となれる財力も後ろ盾もない。あまつさえ動画の中ような暴力事件を起こし、伴侶型アンドロイドを側におくような不誠実な態度は目に余りますなのであなたがこの場で自分からエルヴィスさんのそばを離れるとおっしゃるのなら、わたしはこれ以上何も言いません。しかし、厚かましく留まるのでしたらわたしにもやり方はあります!今のわたしにはエルヴィスさんのためを思って行動を起こす資格があります。なんせ、今日からわたしはエルヴィスさんの妻なんですから」
ユラは胸に手を置き、自分の誠実な様子を演説のように見せつけた。
アロンの低い出身と今回の騒動をからめて言うことで人々にマイナスイメージを与え、アロンの価値を下げて特に職務型アンドロイドが重視する利益の差を挙げ、自分の今の身分と資格をこの場にいるすべての人に教えた。
そう、今日を経て終えばもう自分は市長の妻である。
だがその前にどうしても目障りなアロンを排除しなければいけない。
自分がエルヴィスの一番目の妻でないと意味がない。せめてアロンのような者のあとにいる立ち位置には不満がある。
自分よりもいい家柄があるならともかく、たかが貧困区出身のアロンが自分より関心を向けられるのは耐えられなかった。
さすがにこんな人々の前でここまで言われれば、エルヴィスも考え直すだろう。ユラはそう考えた。
だが、エルヴィスの反応を伺おうと振り返ると、なぜかモニターを見つめて不思議そうな顔をしていた。
やがてその口がゆっくりと動いた。
「私だ」
「え?」
エルヴィスは映し出される映像を指さしてどこか恥ずかしそうに笑って言った。
「あれは私ですよ。ユラさん」
映像のなかでエルヴィスはアロンに枕でボコボコに殴られていた。
「え?でも……エ、エルヴィスさん、アロンさんをかばいたいのはわかりますが、さすがにそんな嘘は……。だってどう見ても映っているのは伴侶型ではないですか」
「ちょうど使っている機体が故障をしてしまって、臨時に使わせてもらったのが伴侶型なんです。たまたますぐに使える余り機体が伴侶型しかなかったので」
もちろんアロンをよろこばせようとコネを使ったことは黙っている。
「で、ではこれは本当にエルヴィスさんなのですか……?」
「間違いありません。病院のほうで貸し出し証明書の写真もありますよ。アロンは私の今の姿に慣れて、伴侶型の機体には警戒心を抱いていました。なので映像のなかのような情景になっています。映像を提供したというシラキという方はアロンの友達であり、犬として扱った覚えはありません。私はアンドロイドなので嘘は言いませんよ」
エルヴィスの言う通り、シラキは犬としてではなく、狼としてアロンのもとに送られたのである。
「で、でもあなたが知らないところで酷い扱いをしているかもしれませんよ!」
「本当にそうなら私が本当に知らないと思いますか?」
「それは………でしたら!エルドさんのことはどう説明するんですか!?ゼノンさんの了承を得ていたとしても伴侶型アンドロイドですよね?」
「エルドは補助型ですよ、ユラさん」
「え?補助型!?」
「はい。エルドは確かに気遣い方面では優れており、アロンへの接し方も恋人のように親しいのですが、間違いなく補助型ですよ。エルドの製造機体資料があります」
エルヴィスは端末を取り出して操作をすると、映像が変わり、代わりにエルドの資料が投影された。
機種型の欄には確かに補助型と記されている。
ユラは信じられない顔で資料を見つめていた。
アロンは以前、始めてエルドと出会った頃の会話を思い出していた。確か本人が自分は伴侶型と補助型のかけ合わせで作られたと言っていたはずである。
エルドがずっと伴侶型と名乗っていたせいで、アロンはそのことを忘れかけていた。
「アロンさん、これはあなたのお友達から入手した映像です」
アロンは思わず「お友達?」と繰り返した。
真っ先に頭に浮かんできたのはクラックとイアンである。
「あなたはお友達のシラキという方をまるで犬のように扱っているらしいですね?ご本人からもう嫌気がさしたとお聞きしていますよ?」
「シラキのことか!いや、あれは……!」
「私が始めてシラキさんと会った時、彼は確か首輪をつけていました。今思うとファッションにしてはデザインがあまりにも本物の首輪と相違がありませんでした。あなたは人間を犬のように扱って恥ずかしくないのですか?」
アロンはどうやって弁明すればいいのかわからなかった。
エルドに狼が好きだと言ったら人間を送られてきたと言えばいいのか?もちろんそんなことバカ正直に言えない。
アロンが返答に困っているあいだ、ユラの言語攻撃は止まらなかった。
「アロンさん、あなたはエルヴィスさんにふさわしい人間になろうとしたことはありますか?」
今まで言われたことはせめて心の中で反論できていたが、その言葉には思わず反論する気持ちすら忘れてしまった。
アロンの記憶の中ではさまざまな出来事が過ぎていくが、エルヴィス達にふさわしい人間になろうとしたことはなかった気がする。
それに気づいた瞬間、今までユラの言ってきたことが別に間違いではないのかもしれないと考えた。
確かに自分ではエルヴィス達に釣り合わないのかもしれない。
アロンが一歩下がり、視線が不安げに揺れ始めたのを見てエルドがそっとその肩に触れた。
「アロン、大丈夫か」
「だ、大丈夫……」
壇上でユラはまだまだ続けた。
「何度でも言いますが、あなたはエルヴィスさんの伴侶にはふさわしくありません!貧困区出身であり、学も礼儀もなく、エルヴィスさんのために利益となれる財力も後ろ盾もない。あまつさえ動画の中ような暴力事件を起こし、伴侶型アンドロイドを側におくような不誠実な態度は目に余りますなのであなたがこの場で自分からエルヴィスさんのそばを離れるとおっしゃるのなら、わたしはこれ以上何も言いません。しかし、厚かましく留まるのでしたらわたしにもやり方はあります!今のわたしにはエルヴィスさんのためを思って行動を起こす資格があります。なんせ、今日からわたしはエルヴィスさんの妻なんですから」
ユラは胸に手を置き、自分の誠実な様子を演説のように見せつけた。
アロンの低い出身と今回の騒動をからめて言うことで人々にマイナスイメージを与え、アロンの価値を下げて特に職務型アンドロイドが重視する利益の差を挙げ、自分の今の身分と資格をこの場にいるすべての人に教えた。
そう、今日を経て終えばもう自分は市長の妻である。
だがその前にどうしても目障りなアロンを排除しなければいけない。
自分がエルヴィスの一番目の妻でないと意味がない。せめてアロンのような者のあとにいる立ち位置には不満がある。
自分よりもいい家柄があるならともかく、たかが貧困区出身のアロンが自分より関心を向けられるのは耐えられなかった。
さすがにこんな人々の前でここまで言われれば、エルヴィスも考え直すだろう。ユラはそう考えた。
だが、エルヴィスの反応を伺おうと振り返ると、なぜかモニターを見つめて不思議そうな顔をしていた。
やがてその口がゆっくりと動いた。
「私だ」
「え?」
エルヴィスは映し出される映像を指さしてどこか恥ずかしそうに笑って言った。
「あれは私ですよ。ユラさん」
映像のなかでエルヴィスはアロンに枕でボコボコに殴られていた。
「え?でも……エ、エルヴィスさん、アロンさんをかばいたいのはわかりますが、さすがにそんな嘘は……。だってどう見ても映っているのは伴侶型ではないですか」
「ちょうど使っている機体が故障をしてしまって、臨時に使わせてもらったのが伴侶型なんです。たまたますぐに使える余り機体が伴侶型しかなかったので」
もちろんアロンをよろこばせようとコネを使ったことは黙っている。
「で、ではこれは本当にエルヴィスさんなのですか……?」
「間違いありません。病院のほうで貸し出し証明書の写真もありますよ。アロンは私の今の姿に慣れて、伴侶型の機体には警戒心を抱いていました。なので映像のなかのような情景になっています。映像を提供したというシラキという方はアロンの友達であり、犬として扱った覚えはありません。私はアンドロイドなので嘘は言いませんよ」
エルヴィスの言う通り、シラキは犬としてではなく、狼としてアロンのもとに送られたのである。
「で、でもあなたが知らないところで酷い扱いをしているかもしれませんよ!」
「本当にそうなら私が本当に知らないと思いますか?」
「それは………でしたら!エルドさんのことはどう説明するんですか!?ゼノンさんの了承を得ていたとしても伴侶型アンドロイドですよね?」
「エルドは補助型ですよ、ユラさん」
「え?補助型!?」
「はい。エルドは確かに気遣い方面では優れており、アロンへの接し方も恋人のように親しいのですが、間違いなく補助型ですよ。エルドの製造機体資料があります」
エルヴィスは端末を取り出して操作をすると、映像が変わり、代わりにエルドの資料が投影された。
機種型の欄には確かに補助型と記されている。
ユラは信じられない顔で資料を見つめていた。
アロンは以前、始めてエルドと出会った頃の会話を思い出していた。確か本人が自分は伴侶型と補助型のかけ合わせで作られたと言っていたはずである。
エルドがずっと伴侶型と名乗っていたせいで、アロンはそのことを忘れかけていた。
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