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終わり1
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「だったらなんであなたあの時自分は伴侶型と認めたのですか!エルドさん!」
エルドは感情のない目でユラを見返し、そして冷たい声で言った。
「伴侶型と認めたことは一度もない」
「でもフェスティバルの日、わたしはあなたに聞いたはずです!」
「私の記憶にある限り、あなたと対面する際、伴侶型かどうかを聞かれたことは一度もない。フェスティバル期間中なら一度だけ違法アンドロイドなのかどうかを聞かれたことはあったが、それを指しているのか?」
「………っ!でもアロンさんは否定しませんでしたよね!」
「お、俺か?」
アロンは自分を指さしてどこか焦った声を出した。
「そうです!わたしはあなたに対してエルドさんのことを恋人と表現したことがあります。そして違法アンドロイドなのかどうかを聞いたこともあります。あなたはどちらも否定しませんでした」
アロンは、そうだったっけ!と本格的に焦った。せっかくいい方向に向かっているのに、自分でまたも悪いほうへ持っていかれそうな気がした。
無意識に一番近いエルドを見上げると、あちらは大丈夫だと言いたげにアロンの頭をなでた。
「アロンは私のことをずっと伴侶型だと思っている。否定をしないのはそのせいだ」
「そんな勘違いあるわけが!」
「あり得ないことではない。伴侶型と補助型と接したことのない者は両者の違いがわからないことは往々にある。アロンは貧困区暮らしが長く、周りには補助型が多い。私はそのなかで少しアロンに対して親しくしすぎた。伴侶型を知識でしか知らないため私の機種型を間違えたのだろう」
ユラはまだ何か言いたげにしていたが、突然ざわめきが広がった。
アロンも気づいて視線を向けると、全員の視線がなぜかモニターに向けられている。
モニターには現在、見慣れたがどこか違和感のある映像が流れていた。
アロンが子ども達を殴っている映像、かと思われたが、その直前のやり取りの映像である。
あれは……アングルが違う!
今まで見てきた編集映像では全部アロンを後ろから撮ったものである。しかし今映し出されているのはもっと高い場所から撮ったものだった。
映像ではユラが囲まれ、ナイフで脅されてカツアゲされるところにアロンが飛び出してきた。
会話まではっきりと聞こえる。相手側が先に手を出したことでアロンは反撃し、子ども達との殴り合いに発展している。
誰がどう見てもアロンがユラを助けるために手を出しているとわかる映像だった。
今までと違う映像にユラはもちろん、アロンも何がどうなっているのかわからなかった。
ユラがそもそもこんな自分に不利となる映像を出すはずがない。本人の反応から見ても違うとわかる。
じゃあこの映像はなんだ?
「おや、これは監視カメラの映像じゃないかな?」
集まった人々のなかで誰かがそう言った。
監視カメラと聞いてアロンはパッとエルドを振り返った。
「お、お前………」
エルドはアロンと視線を合わせ、やがてフッと笑った。
「私の得意分野だ」
「この映像って……」
「あなたにとって辛いことが流れるかもしれないが、見ておいたほうがいい」
「辛いことってなんだ?」
「大丈夫、あなたの後ろには私達がいる。家柄がなくとも、私達があなたの後ろ盾だ」
こんな場面だというのに、アロンはその言葉に心にジーンとしたものが染み込んでいくのを感じた。
「俺………」
「始まった」
「え?」
エルドの視線が向く先を見ると、映像にユラの姿が映し出されていた。また別アングルの監視カメラで撮られたものらしい。
ユラは端末のカメラでアロンが喧嘩する姿を撮影していた。
「あいつかよ……!」
確かによく考えれば編集された映像は距離が近かった。
いろんな解説動画でたまたま距離の近い監視カメラがあったとかなんとかと言っていたので、おのずとカメラの映像だと思っていた。
しかしそれすらもユラの思惑だったかもしれない。その後に出されたいろんな動画もつられたかのように監視カメラの映像とした前提で話を進めていた。
その映像に集まった人々がユラを見つめながらささやき合った。
「まさかあれは全部自作自演?」
「助けてもらったのに恩を仇で返すなど、なんて性悪な人なんだ」
「市長に見合わないのはお前の方だ!」
ユラの顔は引き攣り、階段の下にいるユラの父も顔を真っ青にしていた。
「違う!!」
ユラはそう叫んだ。
「これは合成画像よ!偽ものなの!」
「ははは!滑稽だな!アロンの編集された動画を本物と決めつけるくせに、いざ自分となったら偽ものと言い張るのか!お前は金魚のフン以下だな!」
「………っ!!」
階段から少し離れたところで、アロイスがテーブルに寄りかかりながら手にオレンジ色の飲料が入ったグラスを揺らしていた。
「違う!だってこんなの誰が撮ったって言うのよ!」
「それ監視カメラの映像だろ?というか、今お前の端末取り出してアロンの動画撮ったかどうか見れば一目瞭然じゃないか?」
「そ、それは……!」
ユラはまるで助けを求めるように視線をめぐらせた。そしてその視線は絢爛会のメンバーと一緒にいるネロシカで止まった。
ネロシカは終始華やかさを感じさせる笑みを崩さず、ユラの視線にはただ軽く笑いかけるだけで助け舟を出すつもりはないらしい。
エルドは感情のない目でユラを見返し、そして冷たい声で言った。
「伴侶型と認めたことは一度もない」
「でもフェスティバルの日、わたしはあなたに聞いたはずです!」
「私の記憶にある限り、あなたと対面する際、伴侶型かどうかを聞かれたことは一度もない。フェスティバル期間中なら一度だけ違法アンドロイドなのかどうかを聞かれたことはあったが、それを指しているのか?」
「………っ!でもアロンさんは否定しませんでしたよね!」
「お、俺か?」
アロンは自分を指さしてどこか焦った声を出した。
「そうです!わたしはあなたに対してエルドさんのことを恋人と表現したことがあります。そして違法アンドロイドなのかどうかを聞いたこともあります。あなたはどちらも否定しませんでした」
アロンは、そうだったっけ!と本格的に焦った。せっかくいい方向に向かっているのに、自分でまたも悪いほうへ持っていかれそうな気がした。
無意識に一番近いエルドを見上げると、あちらは大丈夫だと言いたげにアロンの頭をなでた。
「アロンは私のことをずっと伴侶型だと思っている。否定をしないのはそのせいだ」
「そんな勘違いあるわけが!」
「あり得ないことではない。伴侶型と補助型と接したことのない者は両者の違いがわからないことは往々にある。アロンは貧困区暮らしが長く、周りには補助型が多い。私はそのなかで少しアロンに対して親しくしすぎた。伴侶型を知識でしか知らないため私の機種型を間違えたのだろう」
ユラはまだ何か言いたげにしていたが、突然ざわめきが広がった。
アロンも気づいて視線を向けると、全員の視線がなぜかモニターに向けられている。
モニターには現在、見慣れたがどこか違和感のある映像が流れていた。
アロンが子ども達を殴っている映像、かと思われたが、その直前のやり取りの映像である。
あれは……アングルが違う!
今まで見てきた編集映像では全部アロンを後ろから撮ったものである。しかし今映し出されているのはもっと高い場所から撮ったものだった。
映像ではユラが囲まれ、ナイフで脅されてカツアゲされるところにアロンが飛び出してきた。
会話まではっきりと聞こえる。相手側が先に手を出したことでアロンは反撃し、子ども達との殴り合いに発展している。
誰がどう見てもアロンがユラを助けるために手を出しているとわかる映像だった。
今までと違う映像にユラはもちろん、アロンも何がどうなっているのかわからなかった。
ユラがそもそもこんな自分に不利となる映像を出すはずがない。本人の反応から見ても違うとわかる。
じゃあこの映像はなんだ?
「おや、これは監視カメラの映像じゃないかな?」
集まった人々のなかで誰かがそう言った。
監視カメラと聞いてアロンはパッとエルドを振り返った。
「お、お前………」
エルドはアロンと視線を合わせ、やがてフッと笑った。
「私の得意分野だ」
「この映像って……」
「あなたにとって辛いことが流れるかもしれないが、見ておいたほうがいい」
「辛いことってなんだ?」
「大丈夫、あなたの後ろには私達がいる。家柄がなくとも、私達があなたの後ろ盾だ」
こんな場面だというのに、アロンはその言葉に心にジーンとしたものが染み込んでいくのを感じた。
「俺………」
「始まった」
「え?」
エルドの視線が向く先を見ると、映像にユラの姿が映し出されていた。また別アングルの監視カメラで撮られたものらしい。
ユラは端末のカメラでアロンが喧嘩する姿を撮影していた。
「あいつかよ……!」
確かによく考えれば編集された映像は距離が近かった。
いろんな解説動画でたまたま距離の近い監視カメラがあったとかなんとかと言っていたので、おのずとカメラの映像だと思っていた。
しかしそれすらもユラの思惑だったかもしれない。その後に出されたいろんな動画もつられたかのように監視カメラの映像とした前提で話を進めていた。
その映像に集まった人々がユラを見つめながらささやき合った。
「まさかあれは全部自作自演?」
「助けてもらったのに恩を仇で返すなど、なんて性悪な人なんだ」
「市長に見合わないのはお前の方だ!」
ユラの顔は引き攣り、階段の下にいるユラの父も顔を真っ青にしていた。
「違う!!」
ユラはそう叫んだ。
「これは合成画像よ!偽ものなの!」
「ははは!滑稽だな!アロンの編集された動画を本物と決めつけるくせに、いざ自分となったら偽ものと言い張るのか!お前は金魚のフン以下だな!」
「………っ!!」
階段から少し離れたところで、アロイスがテーブルに寄りかかりながら手にオレンジ色の飲料が入ったグラスを揺らしていた。
「違う!だってこんなの誰が撮ったって言うのよ!」
「それ監視カメラの映像だろ?というか、今お前の端末取り出してアロンの動画撮ったかどうか見れば一目瞭然じゃないか?」
「そ、それは……!」
ユラはまるで助けを求めるように視線をめぐらせた。そしてその視線は絢爛会のメンバーと一緒にいるネロシカで止まった。
ネロシカは終始華やかさを感じさせる笑みを崩さず、ユラの視線にはただ軽く笑いかけるだけで助け舟を出すつもりはないらしい。
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