ゴミ拾いで3体の夫ができた人間

那原涼

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クラックの誘い

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その後、アロンは必死にクラックの誤解を解こうとしたが、何を言っても逆効果だった。

そしてクラックが気晴らしに、と言ったのはアロンを九式監獄に誘おうとしたことである。

ユラが現在そこに収監されており、アロンが望めば“何をしにいってもいい”らしい。

クラック曰く、「少佐と九式監獄の監獄長はご友人なので片目をつむってくれますよ!」らしい。

別にユラに何かしたいわけではないが、部屋から出られるという誘惑に負けて九式監獄行きが決まった。

ただアロンの身の安全を考えて、2名の護衛アンドロイドがつくことになった。

クラックが自分もアロンを守りたいと武器を持ったが、その武器であるナイフの先端になぜか人型のぬいぐるみが刺さっていた。

アロンは読めなかったが、ぬいぐるみのお腹には『ユラ』と書かれている。クラックが恥ずかしそうに「忘れちゃいました」と言ってぬいぐるみを外した。

なぜクラックのナイフにぬいぐるみが刺さっているのかわからない。ただ、ぬいぐるみに八つ当たりをしても刺すようなタイプには見えなかった。結局ぬいぐるみを刺す理由を聞いても目をそらされて、答えはもらえなかった。

アロンは車に乗り込む際、抱きついて離さないエルヴィスを無理やり蹴り落とし、嬉々と車に乗り込んだ。

護衛のアンドロイドふたりはそれぞれイクスとグレッドというらしいが、見た目が同じにしか見えないため、どちらがイクスで、どちらがグレッドなのかわからなかった。おまけにサングラスをかけているので余計にわからない。

車はひとまず軍部に向かうらしい。そこでライネスと合流してから九式監獄に向かう。

車の中でアロンは興味ありげに外を眺めていた。

やはり久しぶりに外出すると心が躍る。何よりライネスの仕事場には興味があった。クラックの話によると軍人や監獄の看守、そして護衛など戦闘型に属するアンドロイドは規律性と統一性を重視するために、あまり外見に差異が見受けられないという。

それぞれ姿は違うが、遠目に見れば見分けがつかないことが多いらしい。みんな一様に圧迫感のある図体に表情の乏しい顔作りをしている。

思い返せばライネスも黙っている時や表情を消している時はそこにいるだけで威圧感がとんでもなかった。

それがわんさかいるのが軍部らしい。

以前エルドが戦闘型アンドロイド向けに教師をしていた時に集まった戦闘型アンドロイド達も全員似たり寄ったりだった。

同じ顔のアンドロイド軍団を頭の中で想像してみると、想像以上に笑いたくなった。我慢できずに笑おうとしたその時である。

突然車体がぐらつき、アロンの体が揺れた瞬間、隣に座っていた護衛アンドロイドに体を抱き寄せられた。

「前方に敵を確認!グレッド、護衛対象を守れ!」

「了解した!」

助手席に座っていたクラックが突然「グレイシー!?」と声に出していた。

次の瞬間、クラックは携帯していたナイフを取り出して運転席の護衛アンドロイド、イクスを刺した。

「補助型!貴様何をしている!」

「………」

クラックは何も答えずにただナイフを抜くとなりふり構わずにイクスを攻撃し、そのせいで車体はかなり激しく揺れた。

アロンもこの異常事態に焦りを見せた。

「何が起きてんだ!おい、クラック!何やっているんだ!」

アロンがいくら呼びかけてもクラックからの返答はない。

やがて車体は大きくカーブするとその勢いのまま転倒した。

アロンはきつく抱きしめられて車体の外に連れ出されたが、グレッドは起きあがろうと顔を上げるとゴンッという大きな音が響いた。

何かに頭を打たれたグレッドは人工皮膚に覆われた顔から機械部品がのぞいた。

「なんだよ!力足りなかったか!」

「ダセェな!」

「うるせぇ!こいつは護衛アンドロイドだから体が丈夫なんだよ!あと何発か同じところを狙えばいい!」

グレッドとアロンの周りを数人の若者集団が囲い始めた。

なんだこいつら!

「おい、このアンドロイドの腕に縮こまっているのが今回の目標じゃないか?」

目標?俺のことか?

アロンが目を見張っているとグレッドが小さくささやいた。

「アロンさん……逃げてください。体が動きません。何者かにハッキングされました。早く逃げてください」

「お前に抱きしめられて逃げれねぇよ!というか、大丈夫なのか!」

「問題ありません。逃げてください」

「本当に動かないのか!」

「はい……」

アロンは横転している車の中にいるだろうクラックとイクスに視線を向けた。しかし、つぶれたドアと外れた座席シートのせいで中の様子が見えない。

「どうなっているんだよ……」

アロンとグレッドを囲んでいる若者のうちの1人がヒュウと口笛を吹いてアロンの顔をのぞき込んだ。

「お前のどこがボスにそこまで執着させる要素があるんだ?まあいいや。お前を連れて帰れば俺達はもっと近くであのお方に貢献できる。痛い目を見たくなければおとなしくしろ。いいな!」

「ふざけるな!お前達の顔を覚えたからなっ!」

「ははは!だからなんだ!おい、こいつを縛り上げるからさっさとこの引っ付いている護衛アンドロイドをバラすぞ!」

そう言って若者達は手に持った武器をグレッドに向かって振り上げた。




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