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恨み事を思い出した
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アロンの視線の変化に気づいたライネスが眉をひょいと上げた。
「どうした」
「恨み事を思い出した」
「あ?」
アロンはメニュー表を置いてテーブルの下にもぐった。
そして向かいに座っているライネスの脚のあいだから頭を出し、そのまま体によじ登っていく。
「お前、前に俺のこと窓から落とそうとしただろ!」
そう言ってライネスのイヤーセットを引っつかんで揺らした。
「おい!危ないからやめろ!」
アロンが落ちないように腕は回されるが、本人がかなり激しく揺れるので見ていて危なかしくはある。
力を入れるとどこを骨折するのかわからないのでライネスもあまり強く腰をつかめない。
「あの時のこと忘れねぇからな!許してほしいなら俺の言うこと全部聞け!」
「わかった、わかった!もう揺れるな!落ちるだろ!」
満足のいく返答を聞いてアロンはふたたび身を乗り出してメニューを引き寄せるとずいと指さした。
「とりあえずいちごミルクとミカンゼリー3つだ」
「飯も食え」
「あとでいい!」
「ダメだ」
「なんでも言うこと聞くんじゃないのかよ!」
「お前達は栄養が足りなくなるとすぐに病気になる。他にも何か食え。食欲がないならサラダはどうだ?」
「……それでもいい」
ライネスはメニューを受け取ってサラダの種類がたった一つしかないのを見てそのまま受け取り口に向かった。
残されたアロンは後ろからジーィとした視線を感じるもなるべく気にしないようにした。
だが、周りにひとり、ふたりとアンドロイドが集まり始め、さすがに無視できないところまでくると無理やり視線を向けた。
「なんだ、お前達……」
「甘いものはいるか?」
「は?」
一歩前にいたアンドロイドはそう言ってポケットから個包装のあめ玉を取り出した。それを差し出して言う。
「人気の種類だと聞いた」
「あ……ありがと」
アロンがあめ玉を受け取って困惑している間にそのアンドロイドは去っていき、代わりにまた目の前にあめ玉を差し出された。
顔を上げるとさっきとは違うアンドロイドがあめ玉を差し出している。
「この味はおいしいと聞いた」
「ありがと……」
あめ玉を渡してきた2体目のアンドロイドの後ろには気がつけば長蛇の列が作られていた。全員手に何かを持っている。
まさかあれ全部が………。
アロンの予想が的中した。
列を作っているのは全員アロンにあめやお菓子を渡すために並んでいる軍用アンドロイド達である。
なぜこうなったのかわからないアロンは知らずにライネスの姿を探した。
するとちょうどトレーを持って向かってくるところだった。
そばに近づいてくるなりアロンはその腕を引っ張ってこそっと耳打ちをする。
「おい、なんだよこれ!全員俺に何か渡そうとしているぞ!さっきもあめ玉ふたつもらった!」
「人間が珍しいからお前に対して興味があるんだろ。あとはダロスみたいにお前を観察したいやつとかな」
「観察することなんかあるかよ……」
あまりにも見られるのでアロンは持ってこられた食べ物を早々にかき込むと部屋に戻った。もちろんポケットに大量のあめ玉とお菓子を入れながらである。
廊下でスカートの両ポケットがパンパンにふくらんでいるのを満足げに見てアロンはどのお菓子を先に食べようかを悩んだ。
だがその前に解決しなければいけない問題もある。
「あのさ、俺が着れる服はあるか?これクロードのやつに着せられた女の子の服なんだけど、スカートで慣れないんだよ」
「趣味の悪い服だと思った」
「だろ?俺のこと母さんに近づけたいみたいで、たまにアレアと呼ぶんだよ」
「………」
「母さんの名前、アイラじゃなくてアレアなんだな」
「………」
「初めて知った。今まで母さんの本名すら知らなかったのかと思うと、なんだか……」
「お前のせいじゃない。母親のことそろそろきっちりと話さないとな」
「……本当に話してくれるんだよな?」
「約束した通り、嘘もごまかしもしない」
アロンは部屋に戻るとベッドに座り、ライネスは向かいに椅子を持ってきて座った。
「まず俺とアレアは確かに伴侶だった。結婚している。もっと正確に言えばいまだに伴侶のままだ」
「いまだに!?」
「結婚の解除はしていなかった」
アロンはしばらく固まったように口を開いたが、額を押さえて急速に頭を回転させた。
「ちょ、ちょっと待て。お前がまだ母さんと伴侶…結婚関係が続けているなら、お前は俺の……」
「名義上の父親だ」
「じゃあ俺は父親と……」
「結婚している」
「……ど、どうなっているんだ……?」
「安心しろアンドロイドと人間のあいだに血縁関係は成り立たない。それに正直言ってお前と結婚した時はまだアレアの子どもだと知らなかった。知っていたら、確かにお前との結婚はしていなかった」
「……俺……」
「アレアとの結婚状態は解除するつもりだ」
それに戸惑いを見せたのはアロンである。
今まで母さんとの結婚を解除しなかったのはやはり好きだからなのではないか?それを自分のせいでやめさせるのはなんだか胸がつっかえる。
「いや、別に……」
「支配階級のアンドロイドは融通が効くからといってさすがに息子と結婚するわけにはいかない」
「それも…そうだよな。お前はいいのか?」
「ああ、息子と結婚したと知ればアレアが夢に出てきそうだ。そんでもって足けりにされるだろうな」
そう言ってライネスはどこか自嘲気味に笑った。
「母さんとの結婚を解除しなければ母さんが夢に出てくると思っていたのか?」
ライネスがどこか驚いた顔でアロンを見た。そして肩を震わせて笑いを我慢し、笑っている口もとを覆いながら言った。
「そうかもな。アンドロイドは眠らないし、夢も見ないけどな」
「………」
ライネスは笑っているが、アロンはなんとも言えない気持ちになった。
ライネスはほとんど母さんの記憶を抜き出したというが、本当に気持ちや想いまで消えているのだろうか。
アンドロイドのことはよくわからない。だが今のライネスを見てとてもそうだとは思えなかった。
「どうした」
「恨み事を思い出した」
「あ?」
アロンはメニュー表を置いてテーブルの下にもぐった。
そして向かいに座っているライネスの脚のあいだから頭を出し、そのまま体によじ登っていく。
「お前、前に俺のこと窓から落とそうとしただろ!」
そう言ってライネスのイヤーセットを引っつかんで揺らした。
「おい!危ないからやめろ!」
アロンが落ちないように腕は回されるが、本人がかなり激しく揺れるので見ていて危なかしくはある。
力を入れるとどこを骨折するのかわからないのでライネスもあまり強く腰をつかめない。
「あの時のこと忘れねぇからな!許してほしいなら俺の言うこと全部聞け!」
「わかった、わかった!もう揺れるな!落ちるだろ!」
満足のいく返答を聞いてアロンはふたたび身を乗り出してメニューを引き寄せるとずいと指さした。
「とりあえずいちごミルクとミカンゼリー3つだ」
「飯も食え」
「あとでいい!」
「ダメだ」
「なんでも言うこと聞くんじゃないのかよ!」
「お前達は栄養が足りなくなるとすぐに病気になる。他にも何か食え。食欲がないならサラダはどうだ?」
「……それでもいい」
ライネスはメニューを受け取ってサラダの種類がたった一つしかないのを見てそのまま受け取り口に向かった。
残されたアロンは後ろからジーィとした視線を感じるもなるべく気にしないようにした。
だが、周りにひとり、ふたりとアンドロイドが集まり始め、さすがに無視できないところまでくると無理やり視線を向けた。
「なんだ、お前達……」
「甘いものはいるか?」
「は?」
一歩前にいたアンドロイドはそう言ってポケットから個包装のあめ玉を取り出した。それを差し出して言う。
「人気の種類だと聞いた」
「あ……ありがと」
アロンがあめ玉を受け取って困惑している間にそのアンドロイドは去っていき、代わりにまた目の前にあめ玉を差し出された。
顔を上げるとさっきとは違うアンドロイドがあめ玉を差し出している。
「この味はおいしいと聞いた」
「ありがと……」
あめ玉を渡してきた2体目のアンドロイドの後ろには気がつけば長蛇の列が作られていた。全員手に何かを持っている。
まさかあれ全部が………。
アロンの予想が的中した。
列を作っているのは全員アロンにあめやお菓子を渡すために並んでいる軍用アンドロイド達である。
なぜこうなったのかわからないアロンは知らずにライネスの姿を探した。
するとちょうどトレーを持って向かってくるところだった。
そばに近づいてくるなりアロンはその腕を引っ張ってこそっと耳打ちをする。
「おい、なんだよこれ!全員俺に何か渡そうとしているぞ!さっきもあめ玉ふたつもらった!」
「人間が珍しいからお前に対して興味があるんだろ。あとはダロスみたいにお前を観察したいやつとかな」
「観察することなんかあるかよ……」
あまりにも見られるのでアロンは持ってこられた食べ物を早々にかき込むと部屋に戻った。もちろんポケットに大量のあめ玉とお菓子を入れながらである。
廊下でスカートの両ポケットがパンパンにふくらんでいるのを満足げに見てアロンはどのお菓子を先に食べようかを悩んだ。
だがその前に解決しなければいけない問題もある。
「あのさ、俺が着れる服はあるか?これクロードのやつに着せられた女の子の服なんだけど、スカートで慣れないんだよ」
「趣味の悪い服だと思った」
「だろ?俺のこと母さんに近づけたいみたいで、たまにアレアと呼ぶんだよ」
「………」
「母さんの名前、アイラじゃなくてアレアなんだな」
「………」
「初めて知った。今まで母さんの本名すら知らなかったのかと思うと、なんだか……」
「お前のせいじゃない。母親のことそろそろきっちりと話さないとな」
「……本当に話してくれるんだよな?」
「約束した通り、嘘もごまかしもしない」
アロンは部屋に戻るとベッドに座り、ライネスは向かいに椅子を持ってきて座った。
「まず俺とアレアは確かに伴侶だった。結婚している。もっと正確に言えばいまだに伴侶のままだ」
「いまだに!?」
「結婚の解除はしていなかった」
アロンはしばらく固まったように口を開いたが、額を押さえて急速に頭を回転させた。
「ちょ、ちょっと待て。お前がまだ母さんと伴侶…結婚関係が続けているなら、お前は俺の……」
「名義上の父親だ」
「じゃあ俺は父親と……」
「結婚している」
「……ど、どうなっているんだ……?」
「安心しろアンドロイドと人間のあいだに血縁関係は成り立たない。それに正直言ってお前と結婚した時はまだアレアの子どもだと知らなかった。知っていたら、確かにお前との結婚はしていなかった」
「……俺……」
「アレアとの結婚状態は解除するつもりだ」
それに戸惑いを見せたのはアロンである。
今まで母さんとの結婚を解除しなかったのはやはり好きだからなのではないか?それを自分のせいでやめさせるのはなんだか胸がつっかえる。
「いや、別に……」
「支配階級のアンドロイドは融通が効くからといってさすがに息子と結婚するわけにはいかない」
「それも…そうだよな。お前はいいのか?」
「ああ、息子と結婚したと知ればアレアが夢に出てきそうだ。そんでもって足けりにされるだろうな」
そう言ってライネスはどこか自嘲気味に笑った。
「母さんとの結婚を解除しなければ母さんが夢に出てくると思っていたのか?」
ライネスがどこか驚いた顔でアロンを見た。そして肩を震わせて笑いを我慢し、笑っている口もとを覆いながら言った。
「そうかもな。アンドロイドは眠らないし、夢も見ないけどな」
「………」
ライネスは笑っているが、アロンはなんとも言えない気持ちになった。
ライネスはほとんど母さんの記憶を抜き出したというが、本当に気持ちや想いまで消えているのだろうか。
アンドロイドのことはよくわからない。だが今のライネスを見てとてもそうだとは思えなかった。
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