ゴミ拾いで3体の夫ができた人間

那原涼

文字の大きさ
171 / 208

ライネスの上司

しおりを挟む
攻防戦をしていたふたりだが、先にあきらめたのは相手のほうである。

「少しもダメか?上官命令を使ってもダメか?」

「職権濫用で訴えます」

「お前は変わったが、頑固なのは変わらないな」

「お互い様です。まさかここに来たのは俺の伴侶を見るだけじゃありませんよね?」

「違う。私達はアンドロイドだが、福利厚生はあってもバチは当たらない」

「福利厚生ですか」

ライネスはあまり興味がなさそうな声で返している。

アロンは少し前のめりになってライネスに敬語を使わせている相手の顔を見ようとした。

いかんせんライネスは身長がありすぎるせいで見えない。

相手もライネスとそう変わらない身長に見えるが、いる位置のせいでほとんど隠れ見えしている頭だけ視界に入る。

「なあ、誰が来てるんだ?」

アロンがそう聞くと、ライネスは振り向かずに答えた。

「気にするな」

「今私が呼ばれたか?」

「違います」

「だが聞かれたからにはあいさつをしなければいけない」

「チッ……そんなに律儀に考えなくとも問題ありません」

「ライネス、今舌打ちしたか?」

「していませんが」

「何もしない。一目見るだけだ」

「お相方と何かありましたか?」

「ああ、伴侶に雰囲気もクソもないと言われた。望む通り一緒にレストランで晩飯をし、その後行為に誘われてシたが、傷をつけないように途中でやめたら怒られた」

「それで怒られたのですか?」

「ああ。理由はわからない。性行為は生き物にとって伴侶同士のもっとも親しい行為だから、断らずに受け入れたが、その後なぜあそこまで言われるのかわからなかった」

ベッドのうえでアロンはいったい何を聞かされているんだと顔を引きつらせた。

「それって相手がやめてほしいと言ってやめたわけじゃないよな?」

思わず口出しをするとライネスの上官と名乗る男はじゃましてくる赤い頭をぐいっと横にどけて顔を出した。

火傷のような、顔の半分の皮膚が引きつった痕のある男がそこに立っていた。

「少年、きみがライネスの伴侶なのか?今年でいくつだ」

「俺はとっくに成人している!」

「18なのか……驚いたな。ずいぶんと小さい」

「誰が小さいんだ!」

「失敬。先ほどの話だが、私の伴侶がやめてほしいと言ってやめたわけではない。私の自己判断だ」

「相手が傷つくのが怖いから?」

「そうだ。私達の力はあまりにも強い。少しの不注意で相手を傷つけてしまう。だからやめた。ただ、伴侶の顔があまりにも苦しそうだったから、私との性行為そのものに満足いっていない可能性がある」

アロンはなぜかその言い方にものすごく覚えがあった。

ちらりと頭を押さえつけられているライネスを見るとあちらも覚えがあるのか、微妙な目で自分の上官を見つめている。

「ちなみに、その苦しそうというのはお前が判断したものなのか?」

「ああ、その通りだ。あの顔は苦しい以外のなにものでもない。何より目に涙が浮かんでいた」

「あのさ、言ってもいいか?」

瞬時に上官の目が鋭くなり、部屋の中に入ってくると片ひざをついてアロンを見つめた。

「アドバイスがあるなら聞かせてほしい」

部屋に入ってくるだけだというのに、その目と顔に気迫がありすぎて一瞬ビクついてしまったが、相手が高い視線を合わしてきたことでなんとか敵意はないと判断できた。

何よりライネスが素早くアロンのそばに来ている。

「中佐……」

ライネスはどこか苦い声で上官に向かって言葉を発した。

「あまりアロンを驚かせないでください」

「申し訳ない。アロンと言ったな。私には結婚して1年目の伴侶がいる。私自身はなんとか最善を尽くしたつもりだったが、ことごとく失敗に終わってしまう。きみとライネスの仲の良さはすでに噂で聞いた。きみから見たアドバイスがほしい」

「いや……俺にもこういったことは詳しくないけど……その、相手が苦しい顔していたとか、涙が出ていたとか、実は気持ちよく感じているんじゃないか?その、あんたとのアレが」

上官の目がわずかに見開かれた。

「…なぜ?」

「なぜ!?」

「なぜそう思う。私が知っている限り人間の喜怒哀楽の表情はあんなものではなかった。矛盾している」

「そんなこと言われても……」

「それに気持ちよく感じているなら私の手を押さえないはずだ。人間は欲に弱い。本当に感じているなら、拒否するような行動はしない」

まるで詰問されているような迫り方にアロンが助けを求めるようにライネスを見上げた。

「中佐、言い方が厳しいので、少々態度を改めていただけませんか」

低い声に上官はハッとして少し身を離した。

「すまない。怖がらせるつもりはなかった。ただ、きみのような人間の意見は珍しいため、どうしても意味を知りたかった」

「そのままの意味なんだけど……とりあえずさ、力が強いのは仕方ないとして、一度ああいった行為を最後までやってみたらどうだ?」

「性行為のことか?」

「まあ、そうだ……」

「最後までとは、相手が射精するまでをいうのか?」

「相手が男なら、そうだと思う……?もしくはその……」

言いにくそうにアロンは口もとに拳を当てた。

「しゃ、射精……しないほうのも、いいんじゃないか?」

「それはなんだ?」

「へ?」

「射精以外に致すことがあるなら教えてほしい。最後がどの段階を指すのか具体的に理解したい」

アロンはどうやって説明をすればいいのかわからなかった。

「もしくは、きみの体験を教えてくれないか?」

「俺の体験!?」

「ああ。性行為において、きみが気持ちいいと感じるものはなんだ?それを参考にしたい」

「い、言うわけがないだろ!!」

アロンは「こいつをなんとかしろよ!」という目線をライネスに投げかけたが、なぜかものすごく興味ありげな目で見つめ返された。

お前も聞きたいのかよ……!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由

スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの少年二人は、15歳になり神の祝福でスキルを得た事で道をたがえる。彼らはやがて青年となり、片方は魔王討伐に旅立つ勇者として華々しい活躍をし、もう片方はただ彼の帰還を待つ相変わらずスラム暮らしの存在となる。 これは何も持たない青年がただ勇者の帰りを待つ日常を描いた作品です。 無自覚両片想いの勇者×親友。 読了後、もう一度だけ読み直して頂けると何か見える世界が変わるかもしれません。

嘘コクのゆくえ

キムラましゅろう
恋愛
アニーは奨学金とバイトで稼いだお金で魔法学校に通う苦学生。 生活は困窮、他の学生みたいに愛だの恋だのに現を抜かしている暇などない生活を送っていた。 そんな中、とある教授の研究室で何らかの罰としてアニー=メイスンに告白して来いと教授が学生に命じているのを偶然耳にしてしまう。 アニーとは自分のこと、そして告白するように言われていた学生は密かに思いを寄せる同級生のロンド=ハミルトンで…… 次の日、さっそくその命令に従ってアニーに嘘の告白、嘘コクをしてきたロンドにアニーは…… 完全ご都合主義、ノーリアリティノークオリティのお話です。 誤字脱字が罠のように点在するお話です。菩薩の如き広いお心でお読みいただけますと幸いです。 作者は元サヤハピエン主義を掲げております。 アンチ元サヤの方は回れ右をお勧めいたします。 小説家になろうさんにも時差投稿します。

まおうさまは勇者が怖くて仕方がない

黒弧 追兎
BL
百年前に現れた魔王によって侵攻が行われたアルキドセ王国。 国土の半分を魔物の支配下とされてしまったアルキドセ王国の国王はやむなく、国土を分断した。 ------------- 百年後、魔王の座は孫へと譲られていた。 「あー、だる……座り心地悪すぎだろ、」 しかし、譲られた孫であるセーレに魔王の素質はなく、百年間城にも攻めに来ない勇者に驕りきっていた。 ------------- その日、魔王城に戦慄が走った。 勇者が魔王城まで攻め入ったのだ。 「ひ、ひっ……!、よ、よくきたなぁ、っゆうしゃ!」 血の滴る剣を持ち、近づく勇者に恐怖で震えるセーレに与えられたのは痛みではなく、獣の皮の温かな感触だった。 「っかわいい……俺のものにする、っ」 「ぁ、ぇひ!やだやだやだっ、ひ、ぃい……」 理解できない勇者の言葉は死に怯えるセーレを混乱させ、失神させた。 ___________________ 魔王に一目惚れで掻っ攫う溺愛勇者       × 言動が理解できない勇者が怖い卑屈な名ばかり魔王 愛をまっすぐ伝える勇者に怯える魔王のすれ違い、らぶらぶストーリー。

薄紅の檻、月下の契り

雪兎
BL
あらすじ 大正十年、華やかな文明開化の影で、いまだ旧き因習が色濃く残る帝都。 没落しかけた名家に生まれた“Ω(オメガ)”の青年・白鷺伊織は、家を救うため政略的な「番(つがい)」として差し出される運命にあった。 しかし縁談の相手は、冷酷無慈悲と噂される若き実業家であり“α(アルファ)”の当主・九条鷹司。 鉄道・銀行事業で財を成した九条家は、華族でもありながら成り上がりと蔑まれる存在。 一方の伊織は、旧華族の矜持を胸に秘めながらも、Ωであるがゆえに家族から疎まれてきた。 冷ややかな契約婚として始まった同居生活。 だが、伊織は次第に知ることになる。 鷹司がΩを所有物としてではなく、一人の人間として尊重しようとしていることを。 発情期を巡る制度、番契約を強制する家制度、そして帝都に広がる新思想。 伝統と自由のはざまで揺れながら、二人は「選ばされた番」から「自ら選ぶ伴侶」へと変わっていく——。 月明かりの下、交わされるのは支配ではなく、誓い。 大正浪漫薫る帝都で紡がれる、運命を超える愛の物語。

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

父と息子、婿と花嫁

ななな
BL
 花嫁になって欲しい、父親になって欲しい 。すれ違う二人の思い ーー ヤンデレおじさん × 大学生    大学生の俺は、両親が残した借金苦から風俗店で働いていた。そんな俺に熱を上げる、一人の中年男。  どう足掻いてもおじさんに囚われちゃう、可愛い男の子の話。

記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】

かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。 名前も年齢も住んでた町も覚えてません。 ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。 プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。 小説家になろう様にも公開してます。

うちの魔王様が過保護すぎる

秋山龍央
BL
主人公・折本修司(オリモトシュウジ)は転生恩恵女神様ガチャにはずれて異世界に転生して早々、つんでいた。 「異世界で言葉が分かるようにしてくれ」と頼んだところ、相手の言葉は分かるが自分は異世界の言葉は喋れない状態となり、 「平和な国に転生したい」と頼んだところ、平和で治安のいい国に転生をすることはできたものの、そこは人間のいない魔族だけの国だったのである。 困っていた主人公の元に、異世界の"魔王"である紅の髪と角を持つ男があらわれて―― 「まさか――そっくりだとは思ってたけれど、お前、本当にシュウなのか?」 異世界転生魔王様×異世界転生主人公 幼馴染年下攻めだけど年上攻めです

処理中です...