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恥ずかしさと本音
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アロンは言ってからだいぶ偉そうなことを口にしていると気づいて、どんどん恥ずかしさが湧き上がってきた。
何言ってんだ俺は!なんだよ、あんたはアンドロイドだから、人間の考えや行動はわからないところがあると思うって!
アロンだってアンドロイドのことはほとんど知らない。
さらに、母さんのことを本気で大事にしていることは、見ていないけどわかる、という部分も思い出すと顔に火が噴きそうだった。
今のは忘れてほしいと言おうとしたが、ライネスはその前にアロンの腰へ腕を回し、ぐっと抱き寄せた。
「お前は本当に可愛いな」
「はあ!?」
突然の可愛いにアロンが驚いて顔を離した。が、ライネスの頭を抱き寄せる際、顔を半分埋めていたせいか鼻水がついてしまった。
サッと青ざめたアロンは慌ててまた顔をくっつけた。
どうする!鼻水ふけるものないか!?
「ティ、ティッシュはあるか……?」
「使わないから用意してないな。必要なのか?」
「そ、その……お前の頭をふきたい」
「どういう意味だ?」
「鼻水……」
「……?」
「くっつけてしまった」
「………」
次第にライネスの肩が震え始めた。怒っていると思ったアロンが慌てて弁解した。
「そ、そもそもお前がこんな話をするからだ!」
「そうだよな……ふっ」
「おい待て、笑っているのか?」
「お前がもう少し怒るのかと思っていた」
「何が?」
「母親のことだ。俺があんな選択をしなければお前はもしかしたら貧困区で暮らさなくともよかったのかもしれない。もう少しいい生活ができたかもしれない。母親が……アレアがもっと元気に暮らせていたかもしれない」
それは確かに考えなかったわけではない。だがアロンはクロードのあの狂気じみた目を思い出した。自分をアレアと呼ぶときに見せるあの熱狂的な目が…いずれは母に手を伸ばすと思った。
例えライネスのしたことがなくとも何かのタイミングで理に反することをしでかしそうに思えた。
ライネスに情が移っているから知らずに考えが偏ってしまっているだけかもしれないが、クロードは確かライネスに酷いことをされてもそのそばに戻ろうとしたと口にしていた気がする。
その酷いことが今打ち明けられたことだと考えると、母はライネスのことをまだ愛していると思われる。
確かに一緒に暮らしていた頃はアンドロイドを信じてはダメだと言われたが、エルヴィス達の言う愛が少し歪なものだと思い出すとなんだかその言葉を理解できる気がした。
アレアは自分が息子を長く守ってあげられないことを察して、自分の経験からアロンに注意を出していたのではないか?アンドロイドは人間が好むように作られている。人間と同じ外見だから同じような感情を持っていると誤解しやすい。だからアンドロイドについて何も知らないアロンに、これから先アンドロイドを愛するようなことがないように、気をつけてほしかったのではないか?
そんな憶測も答え合わせができる人はもう冷たい土の中にいる。
だけど、アロンには一つだけ確信できることがある。
自分は周りに愛されている。自分が思うよりたくさんの愛をもらっている。
エルヴィス達は確かに“愛すること”が苦手かもしれない。しかしそれはアロンも同じである。
愛を手探りに探すしかない。
エルヴィス達と本気で家族になりたい。まだライネスやエルドにははっきりと言葉にしていないが、これはアロンの本音である。
「そうかもしれないけど、でも俺はお前達が好きだ。母さんのことは正直俺もどう受け取ればいいのかわからない。でも、きっとあんたがメモリーカードを選ぶとわかっていたのかもしれない。それが的中して受け入れられなかった。だから怒りをぶつけた。でも本当はあんたのそばに戻りたかったのだと思う」
「……お前がそう言うなら、そうかもな。お前とアレアはあまりにも似ている。危ないと知りながら自分から誘拐されにいくからな」
確かにそんなことがあった。しかもその後アロンは貴重は監獄生活を送っている。
「そ、そんなこと……まだ覚えていたのかよ」
「アンドロイドがそう簡単に物事を忘れるか」
アロンの腰に回された手がポン、ポンとゆっくりとしたリズムで軽くたたいた。まるで子どもをあやすような優しい手つきである。
しかし、アロンには少々荷が重かった。
八度目のポンで「ゴフッ」と声が出た。
「アロン?」
「ダ、ダイジョウブ……ゲホッ!」
やはりライネスの力は強い。
「悪い……少し休め。何かお前が着れそうな服を探してくる」
そう言ってライネスは立ち上がった。そしてアロンは鼻水の糸を引いてベッドに降ろされ、ライネスはその頭をよしよしとなでる。
「ティッシュも持ってくる」
「これお前の頭にもついてるの忘れるなよ!」
ライネスはニヤニヤとした笑みで「わかってる」と言うと部屋のドアを開けた。そして笑みを消した。
「……なぜいるのですか」
敬語!?とアロンがギョッとした目を向けた。
発声源はあきらかにライネスである。常に人を小馬鹿にしたような目かニヤついた目かのどちらかが多い(最近は真剣な目が多い)ひとで、他人を尊重するなどと程遠く、敬語を使うところなど聞いたこともない。
ライネスの向こうにはもう一つ誰かの頭が隠れ見えしていた。
誰だあれ?
「伴侶が来たらしいな」
そう言ってそのひとはひょいと頭を傾けて部屋のなかをのぞこうとした。しかしライネスが合わせて同じ角度に頭を傾けて阻止した。
相手はまだあきらめずに「少し見るだけだ」と言ってくっと身を下にずらすとライネスも同じ高さに身をずらした。
その後も何度か同じことを繰り返し、見ていたアロンがジト目になる。
何やってんだ、あのふたり。
何言ってんだ俺は!なんだよ、あんたはアンドロイドだから、人間の考えや行動はわからないところがあると思うって!
アロンだってアンドロイドのことはほとんど知らない。
さらに、母さんのことを本気で大事にしていることは、見ていないけどわかる、という部分も思い出すと顔に火が噴きそうだった。
今のは忘れてほしいと言おうとしたが、ライネスはその前にアロンの腰へ腕を回し、ぐっと抱き寄せた。
「お前は本当に可愛いな」
「はあ!?」
突然の可愛いにアロンが驚いて顔を離した。が、ライネスの頭を抱き寄せる際、顔を半分埋めていたせいか鼻水がついてしまった。
サッと青ざめたアロンは慌ててまた顔をくっつけた。
どうする!鼻水ふけるものないか!?
「ティ、ティッシュはあるか……?」
「使わないから用意してないな。必要なのか?」
「そ、その……お前の頭をふきたい」
「どういう意味だ?」
「鼻水……」
「……?」
「くっつけてしまった」
「………」
次第にライネスの肩が震え始めた。怒っていると思ったアロンが慌てて弁解した。
「そ、そもそもお前がこんな話をするからだ!」
「そうだよな……ふっ」
「おい待て、笑っているのか?」
「お前がもう少し怒るのかと思っていた」
「何が?」
「母親のことだ。俺があんな選択をしなければお前はもしかしたら貧困区で暮らさなくともよかったのかもしれない。もう少しいい生活ができたかもしれない。母親が……アレアがもっと元気に暮らせていたかもしれない」
それは確かに考えなかったわけではない。だがアロンはクロードのあの狂気じみた目を思い出した。自分をアレアと呼ぶときに見せるあの熱狂的な目が…いずれは母に手を伸ばすと思った。
例えライネスのしたことがなくとも何かのタイミングで理に反することをしでかしそうに思えた。
ライネスに情が移っているから知らずに考えが偏ってしまっているだけかもしれないが、クロードは確かライネスに酷いことをされてもそのそばに戻ろうとしたと口にしていた気がする。
その酷いことが今打ち明けられたことだと考えると、母はライネスのことをまだ愛していると思われる。
確かに一緒に暮らしていた頃はアンドロイドを信じてはダメだと言われたが、エルヴィス達の言う愛が少し歪なものだと思い出すとなんだかその言葉を理解できる気がした。
アレアは自分が息子を長く守ってあげられないことを察して、自分の経験からアロンに注意を出していたのではないか?アンドロイドは人間が好むように作られている。人間と同じ外見だから同じような感情を持っていると誤解しやすい。だからアンドロイドについて何も知らないアロンに、これから先アンドロイドを愛するようなことがないように、気をつけてほしかったのではないか?
そんな憶測も答え合わせができる人はもう冷たい土の中にいる。
だけど、アロンには一つだけ確信できることがある。
自分は周りに愛されている。自分が思うよりたくさんの愛をもらっている。
エルヴィス達は確かに“愛すること”が苦手かもしれない。しかしそれはアロンも同じである。
愛を手探りに探すしかない。
エルヴィス達と本気で家族になりたい。まだライネスやエルドにははっきりと言葉にしていないが、これはアロンの本音である。
「そうかもしれないけど、でも俺はお前達が好きだ。母さんのことは正直俺もどう受け取ればいいのかわからない。でも、きっとあんたがメモリーカードを選ぶとわかっていたのかもしれない。それが的中して受け入れられなかった。だから怒りをぶつけた。でも本当はあんたのそばに戻りたかったのだと思う」
「……お前がそう言うなら、そうかもな。お前とアレアはあまりにも似ている。危ないと知りながら自分から誘拐されにいくからな」
確かにそんなことがあった。しかもその後アロンは貴重は監獄生活を送っている。
「そ、そんなこと……まだ覚えていたのかよ」
「アンドロイドがそう簡単に物事を忘れるか」
アロンの腰に回された手がポン、ポンとゆっくりとしたリズムで軽くたたいた。まるで子どもをあやすような優しい手つきである。
しかし、アロンには少々荷が重かった。
八度目のポンで「ゴフッ」と声が出た。
「アロン?」
「ダ、ダイジョウブ……ゲホッ!」
やはりライネスの力は強い。
「悪い……少し休め。何かお前が着れそうな服を探してくる」
そう言ってライネスは立ち上がった。そしてアロンは鼻水の糸を引いてベッドに降ろされ、ライネスはその頭をよしよしとなでる。
「ティッシュも持ってくる」
「これお前の頭にもついてるの忘れるなよ!」
ライネスはニヤニヤとした笑みで「わかってる」と言うと部屋のドアを開けた。そして笑みを消した。
「……なぜいるのですか」
敬語!?とアロンがギョッとした目を向けた。
発声源はあきらかにライネスである。常に人を小馬鹿にしたような目かニヤついた目かのどちらかが多い(最近は真剣な目が多い)ひとで、他人を尊重するなどと程遠く、敬語を使うところなど聞いたこともない。
ライネスの向こうにはもう一つ誰かの頭が隠れ見えしていた。
誰だあれ?
「伴侶が来たらしいな」
そう言ってそのひとはひょいと頭を傾けて部屋のなかをのぞこうとした。しかしライネスが合わせて同じ角度に頭を傾けて阻止した。
相手はまだあきらめずに「少し見るだけだ」と言ってくっと身を下にずらすとライネスも同じ高さに身をずらした。
その後も何度か同じことを繰り返し、見ていたアロンがジト目になる。
何やってんだ、あのふたり。
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