ゴミ拾いで3体の夫ができた人間

那原涼

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何かの異変4

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アロンは部屋のなかで落ち着かずに歩き回っていた。

「大丈夫だよな?あいつ強いし、握力もエルヴィス達より強いし、戦闘型だし……」

なんとか自分を落ち着かせようとするが、グレイシーの言葉が気になるのと、ダロスからタイミングよくライネスに何かありそうな物言いに不安が消えるわけではなかった。

やがて不安が焦燥に変わり、部屋のなかを歩き回りながらぶつぶつとつぶやき始めた。

「大丈夫だよな…大丈夫だよな……。まさか本当に何かあったわけではないよな?あいつに限ってそんなことないよな?だって片手でアンドロイドの首をへし折れるやつだぞ?大丈夫だ大丈夫……」

部屋のなかをぐるぐる回っていたその時である。

もしライネスが来たなら第一に確認しようと開け放たれたドアに誰かが来た。

「ここだ。お前の伴侶の部屋だが、何も覚えてないんだな?」

「……ない」

アロンがピンと耳を立てた。

「ライネスか……?」

だが顔を出したのはダロスである。その隣で壁にさえぎられている誰かの肩が見える。

「私だ。ライネスは隣にいる」

アロンは移動してライネスの姿を確認しようとした。

しかしダロスが一歩前に出て視線をさえぎってくる。

「ライネス、結構壊れているのか?その、見た目の話」

「ああ。帰って来た頃は損傷が激しかったが、修復と部品替えでだいぶよくなっている」

「もう大丈夫ってことか?」

「一応、そうと言える。ただ問題がある」

「なんだ?」

アロンのなかで不安が大きくなっていく。

「ライネスのメモリーカードが本人によって破壊され、現在大半の記憶がない状態だ」

「……記憶が、ない……状態?」

「ああ」

「な、直るんだよな?」

「新しい機体を用意しなければいけない」

「お前確か軍用アンドロイドの記憶はデータとしてどこかに保存されているみたいなこと言わなかったか?それはできるのか?」

「できる。そのためにも新しい機体を待たなければいけない。ライネスのメモリーカードとその挿入箇所が本人によってごっそりと破壊されているため、移入した新しいメモリーカードを入れられない」

「じゃあ、直るってことだよな!」

「問題ない」

やっと少し安心したアロンは思わずベッドにへなっと座った。

よかった……エルドみたいになかなか直らないならどうしようかと思った。

「ライネスは今どこまで覚えているんだ?」

「テストしてみたところ、あなたや前の伴侶と結婚したことは忘れている。それ以外は詳しく言えない」

「わかった……それを知ったならいい」

せめて誰だと聞かれた時に受ける衝撃を少なくできる。

ダロスは壁の向こうにいるライネスを見つめているだろうアロンを見て位置を移動した。

「ライネス、顔を出してみろ」

「………」

その言葉にアロンが思わず背筋を伸ばして緊張した。

壁から出て来た人物は静かに室内に視線を滑らせ、そしてアロンの前で止まった。

損傷が激しいなどと言うから、アロンはライネスのどこかが欠けたり、怪我したままで修復できていない場所もあるんじゃないかと思った。だが思いの外問題ないようである。

ただ、一つ目を引いたところがあるとすればその目である。いつもと違い異様に冷たい。

「ライネス……?」

アロンが慎重に声をかけるとライネスの視線がアロンの足もとから顔へと移った。

なんの感情の起伏もない平淡とした目である。

どこかダロスや他の軍用アンドロイドとよく似ている。

「ライネス、だよな?」

「………」

ライネスは答えずにどこか審査するような目でアロンを見つめた。

「お前が俺の伴侶か?」

冷たい声と見知らぬ他人に話しかけているような口調にアロンが完全に声を失った。

「…………答えろ」

口を開けたまま呆けたアロンにライネスは眉をしかめた。

「もう一度聞く。お前が俺の伴侶なのか?」

「あ、ああ………」

「ならば、誤解ないように言う必要がある。今の俺はお前など知らない」

アロンが思わずぴくりと肩を震わせた。

「以前どのように接して来たかわからないが、今の俺には期待しないでくれ。それと俺は仕事で忙しい。用がなければ呼ぶな。ここにも来ない。エルヴィス達のことも知っていると聞いた。迎えにくるまでおとなしく……ーーっ!?」

途中まで言ってライネスは目を見開いた。原因は他でもない。

アロンがまばたきもせず、開いた目からポロポロと涙をこぼしていた。

まさか泣かれるとは思わず、ライネスは予想外のことに顔が引きつりそうになった。

「な、なぜ泣いた……?」

「うっ……うぅ……っ」

「おい、泣くな」

「うっ、えぐ」

「泣くなと言っただろ!」

「うああああっ!!」

泣くなと言えば言うほどアロンは泣いた。あのライネスが自分に対してこれほど厳しい口調を使うことにショックだった。

何よりここ数日の不安からの睡眠不足や、やっと会えたと安心しかけた矢先に忘れられ、さらにはまるで他人のような言葉遣いに、心にどっ疲れが押し寄せたアロンは我慢できずに泣いてしまった。

思えばこんなふうに声を上げて泣いたことは母を亡くして以来である。










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