ゴミ拾いで3体の夫ができた人間

那原涼

文字の大きさ
203 / 208

データ保存

しおりを挟む







データ保存がされると告げられてから迎えた翌日、エルヴィスが部屋に現れた。

データ保存の件が気になり過ぎて眠れなかったアロンは重いクマをつけながらその来訪を迎えた。

「アロン!どうしたのその目!?」

エルヴィスが慌てて駆けつけてアロンの顔に触れた。

「眠れなかった?でもそれもそうだよね。あんなに怖い思いをして。ごめんね、何も気づかなくて」

「……聞いた」

「うん?」

「お前達がデータ保存されるという話」

「そっか、聞いたのか。まあ、そうじゃなくても今日教えるつもりだったんだ」

「もうそれ以外方法はないのか?」

「そうだね。でも、アロンの周りには安心できる人を置くから大丈夫だよ。この建物に住み続けて大丈夫だから。全てのセキュリティシステムを最大に引き上げてアロンの安全を守るよ!」

「……いつデータ保存されるんだ?」

「私はもう少し市長として色々やらなければいけないんだ。今どこもめちゃくちゃだから。だからもうしばらくは一緒にいられる!エルドも街の監視システムとして早々データ保存はされないし、軍事関係アンドロイドはおそらく一番最後にデータ保存されるから、ライネスとも会えるし、大丈夫!」

それでもアロンの顔色は晴れなかった。

「どれくらいでまた目を覚ましてくれるんだ?」

「どうだろうね。ウイルスが全て除去されると清掃システムがそのまま完了の合図として呼び覚ましてくれることになっているけど、それがいつになるのかはわからない。今の予測では長くても3ヶ月かな」

1年や2年みたいに年単位じゃないことに少しばかりホッとする。

アロンは気を取り直してエルヴィスの手を握った。

「それじゃあ、データ保存される前に一緒に過ごせる時間はあるか?」

「もちろんあるよ!!」

「お前達さえ時間があればいいんだ。一度4人で何も考えずに、一日中ゆっくりしたい」

「もちろん大丈夫だよ。アロンが望むならなんだっていい」

「本当に時間があればいいんだ。無理にしなくていい!」

「無理なものか!アロンと静かに過ごしたいのは私達も同じなんだから」

「結婚式も、お前達が目覚めてからにしていいか?」

「もちろん!アロンが望むようにすればいい!」

「うん……ありがとう」

「お礼なんていらないよ。きみの望むことは私達も望んでいる。あ、時間だからそろそろ戻らないと。エルドとライネスにさっきの話をしておくから、何も心配しないで」

「うん」

「それじゃあゆっくり休んで!」

エルヴィスがささっと部屋を出ていった。

てっきり一緒に過ごせる日はもう少し先になると思っていたが、まさかの翌日にその日がきた。













思い返せば自分の希望はいつもすぐにスケジュールを合わせてくるんだよな。

アロンは忙しいだろうエルドを見つめて、

「仕事はいいのか?」

「問題ない」

「そうか」

アロンの目がエルヴィスに向けられた。

「やることが多いんじゃないのか?」

「少しくらい大丈夫!」

「本当に無理しなくていいぞ」

「無理なんかしてない!私がこうしたいんだ!」

アロンは最後にライネスを見た。

「その、俺のこと、覚えてるか?」

「当たり前だろ」

半笑いで返され、その態度に確かにライネスの記憶が戻っていると気づいた。

「お前までよく集まれたな」

「これでもグレイシーをとっ捕まえたんだ。ちょっとしたわがままくらい許される」

「ああ、なるほ………なんだって!?グレイシーを捕まえた!?」

「ああ。あいつは今データを永久保存されている」

「データ保存と何か違うのか?」

「字面通り永久だ。何もない場所でただ永遠に存在し続けるだけだ。何年も何百年もな。あいつにはもう実体がないからこれが最適な刑罰だ」

「そうなのか……」

アロンにはあまり想像のできない刑罰だが、何もない場所で永遠に生き続けなければいけないのはアロンに耐えられる気がしなかった。

「もう出てこないならいいんだ……」

「怖がるな。もう大丈夫だ」

アロンが小さくうなずいた。

その後4人で今まであったことを振り返ったり、結婚式の式場の話が出てきたり、トランプゲームをしたり、夜は映画を観ながらアロンが寝るまでエルヴィス達はそのそばにいた。

翌日の朝にアロンが目を覚まし、3人はそれぞれ別れを告げると仕事に戻った。

それからの日々は本当に忙しいのか、1週間、2週間、1ヶ月と過ぎてもエルヴィス達はほとんどアロンのところへ顔を出せなかった。











「無理して時間作らせていたのかな、あれ」

「何がですか?」

一緒にドラマを観ていたクラックが不思議そうにアロンを見つめて首を傾げた。

「いや、なんでもない。独り言」

「そうですか……。このドラマおもしろいですよね!」

「うん」

くま型投影機を抱きかかえながらアロンはどこか元気なく答えた。

エルヴィス達がデータ保存される日がどんどん近づいてきている。

当初は問題ないと思っていたが、長くて3ヶ月も待たなければいけないのは今になって耐えられる気がしなくなってきた。

あいつら、そもそもデータ保存される期間、体はどうするつもりなんだ?






しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由

スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの少年二人は、15歳になり神の祝福でスキルを得た事で道をたがえる。彼らはやがて青年となり、片方は魔王討伐に旅立つ勇者として華々しい活躍をし、もう片方はただ彼の帰還を待つ相変わらずスラム暮らしの存在となる。 これは何も持たない青年がただ勇者の帰りを待つ日常を描いた作品です。 無自覚両片想いの勇者×親友。 読了後、もう一度だけ読み直して頂けると何か見える世界が変わるかもしれません。

まおうさまは勇者が怖くて仕方がない

黒弧 追兎
BL
百年前に現れた魔王によって侵攻が行われたアルキドセ王国。 国土の半分を魔物の支配下とされてしまったアルキドセ王国の国王はやむなく、国土を分断した。 ------------- 百年後、魔王の座は孫へと譲られていた。 「あー、だる……座り心地悪すぎだろ、」 しかし、譲られた孫であるセーレに魔王の素質はなく、百年間城にも攻めに来ない勇者に驕りきっていた。 ------------- その日、魔王城に戦慄が走った。 勇者が魔王城まで攻め入ったのだ。 「ひ、ひっ……!、よ、よくきたなぁ、っゆうしゃ!」 血の滴る剣を持ち、近づく勇者に恐怖で震えるセーレに与えられたのは痛みではなく、獣の皮の温かな感触だった。 「っかわいい……俺のものにする、っ」 「ぁ、ぇひ!やだやだやだっ、ひ、ぃい……」 理解できない勇者の言葉は死に怯えるセーレを混乱させ、失神させた。 ___________________ 魔王に一目惚れで掻っ攫う溺愛勇者       × 言動が理解できない勇者が怖い卑屈な名ばかり魔王 愛をまっすぐ伝える勇者に怯える魔王のすれ違い、らぶらぶストーリー。

僕に双子の義兄が出来まして

サク
BL
この度、この僕に双子の義兄が出来ました。もう、嬉し過ぎて自慢しちゃうよ。でも、自慢しちゃうと、僕の日常が壊れてしまう気がするほど、その二人は人気者なんだよ。だから黙って置くのが、吉と見た。 そんなある日、僕は二人の秘密を知ってしまった。ん?知っているのを知られてしまった?が正しいかも。 ごめんよ。あの時、僕は焦っていたんだ。でもね。僕の秘密もね、共有して、だんだん仲良くなったんだよ。 …仲良くなったと、そう信じている。それから、僕の日常は楽しく、幸せな日々へと変わったんだ。そんな僕の話だよ。 え?内容紹介が内容紹介になってないって?気にしない、気にしない。

嘘コクのゆくえ

キムラましゅろう
恋愛
アニーは奨学金とバイトで稼いだお金で魔法学校に通う苦学生。 生活は困窮、他の学生みたいに愛だの恋だのに現を抜かしている暇などない生活を送っていた。 そんな中、とある教授の研究室で何らかの罰としてアニー=メイスンに告白して来いと教授が学生に命じているのを偶然耳にしてしまう。 アニーとは自分のこと、そして告白するように言われていた学生は密かに思いを寄せる同級生のロンド=ハミルトンで…… 次の日、さっそくその命令に従ってアニーに嘘の告白、嘘コクをしてきたロンドにアニーは…… 完全ご都合主義、ノーリアリティノークオリティのお話です。 誤字脱字が罠のように点在するお話です。菩薩の如き広いお心でお読みいただけますと幸いです。 作者は元サヤハピエン主義を掲げております。 アンチ元サヤの方は回れ右をお勧めいたします。 小説家になろうさんにも時差投稿します。

父と息子、婿と花嫁

ななな
BL
 花嫁になって欲しい、父親になって欲しい 。すれ違う二人の思い ーー ヤンデレおじさん × 大学生    大学生の俺は、両親が残した借金苦から風俗店で働いていた。そんな俺に熱を上げる、一人の中年男。  どう足掻いてもおじさんに囚われちゃう、可愛い男の子の話。

【完結】俺が一目惚れをした人は、血の繋がった父親でした。

モカ
BL
俺の倍はある背丈。 陽に照らされて艶めく漆黒の髪。 そして、漆黒の奥で煌めく黄金の瞳。 一目惚れだった。 初めて感じる恋の胸の高鳴りに浮ついた気持ちになったのは一瞬。 「初めまして、テオン。私は、テオドール・インフェアディア。君の父親だ」 その人が告げた事実に、母親が死んだと聞いた時よりも衝撃を受けて、絶望した。

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

処理中です...