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データ保存
しおりを挟むデータ保存がされると告げられてから迎えた翌日、エルヴィスが部屋に現れた。
データ保存の件が気になり過ぎて眠れなかったアロンは重いクマをつけながらその来訪を迎えた。
「アロン!どうしたのその目!?」
エルヴィスが慌てて駆けつけてアロンの顔に触れた。
「眠れなかった?でもそれもそうだよね。あんなに怖い思いをして。ごめんね、何も気づかなくて」
「……聞いた」
「うん?」
「お前達がデータ保存されるという話」
「そっか、聞いたのか。まあ、そうじゃなくても今日教えるつもりだったんだ」
「もうそれ以外方法はないのか?」
「そうだね。でも、アロンの周りには安心できる人を置くから大丈夫だよ。この建物に住み続けて大丈夫だから。全てのセキュリティシステムを最大に引き上げてアロンの安全を守るよ!」
「……いつデータ保存されるんだ?」
「私はもう少し市長として色々やらなければいけないんだ。今どこもめちゃくちゃだから。だからもうしばらくは一緒にいられる!エルドも街の監視システムとして早々データ保存はされないし、軍事関係アンドロイドはおそらく一番最後にデータ保存されるから、ライネスとも会えるし、大丈夫!」
それでもアロンの顔色は晴れなかった。
「どれくらいでまた目を覚ましてくれるんだ?」
「どうだろうね。ウイルスが全て除去されると清掃システムがそのまま完了の合図として呼び覚ましてくれることになっているけど、それがいつになるのかはわからない。今の予測では長くても3ヶ月かな」
1年や2年みたいに年単位じゃないことに少しばかりホッとする。
アロンは気を取り直してエルヴィスの手を握った。
「それじゃあ、データ保存される前に一緒に過ごせる時間はあるか?」
「もちろんあるよ!!」
「お前達さえ時間があればいいんだ。一度4人で何も考えずに、一日中ゆっくりしたい」
「もちろん大丈夫だよ。アロンが望むならなんだっていい」
「本当に時間があればいいんだ。無理にしなくていい!」
「無理なものか!アロンと静かに過ごしたいのは私達も同じなんだから」
「結婚式も、お前達が目覚めてからにしていいか?」
「もちろん!アロンが望むようにすればいい!」
「うん……ありがとう」
「お礼なんていらないよ。きみの望むことは私達も望んでいる。あ、時間だからそろそろ戻らないと。エルドとライネスにさっきの話をしておくから、何も心配しないで」
「うん」
「それじゃあゆっくり休んで!」
エルヴィスがささっと部屋を出ていった。
てっきり一緒に過ごせる日はもう少し先になると思っていたが、まさかの翌日にその日がきた。
思い返せば自分の希望はいつもすぐにスケジュールを合わせてくるんだよな。
アロンは忙しいだろうエルドを見つめて、
「仕事はいいのか?」
「問題ない」
「そうか」
アロンの目がエルヴィスに向けられた。
「やることが多いんじゃないのか?」
「少しくらい大丈夫!」
「本当に無理しなくていいぞ」
「無理なんかしてない!私がこうしたいんだ!」
アロンは最後にライネスを見た。
「その、俺のこと、覚えてるか?」
「当たり前だろ」
半笑いで返され、その態度に確かにライネスの記憶が戻っていると気づいた。
「お前までよく集まれたな」
「これでもグレイシーをとっ捕まえたんだ。ちょっとしたわがままくらい許される」
「ああ、なるほ………なんだって!?グレイシーを捕まえた!?」
「ああ。あいつは今データを永久保存されている」
「データ保存と何か違うのか?」
「字面通り永久だ。何もない場所でただ永遠に存在し続けるだけだ。何年も何百年もな。あいつにはもう実体がないからこれが最適な刑罰だ」
「そうなのか……」
アロンにはあまり想像のできない刑罰だが、何もない場所で永遠に生き続けなければいけないのはアロンに耐えられる気がしなかった。
「もう出てこないならいいんだ……」
「怖がるな。もう大丈夫だ」
アロンが小さくうなずいた。
その後4人で今まであったことを振り返ったり、結婚式の式場の話が出てきたり、トランプゲームをしたり、夜は映画を観ながらアロンが寝るまでエルヴィス達はそのそばにいた。
翌日の朝にアロンが目を覚まし、3人はそれぞれ別れを告げると仕事に戻った。
それからの日々は本当に忙しいのか、1週間、2週間、1ヶ月と過ぎてもエルヴィス達はほとんどアロンのところへ顔を出せなかった。
「無理して時間作らせていたのかな、あれ」
「何がですか?」
一緒にドラマを観ていたクラックが不思議そうにアロンを見つめて首を傾げた。
「いや、なんでもない。独り言」
「そうですか……。このドラマおもしろいですよね!」
「うん」
くま型投影機を抱きかかえながらアロンはどこか元気なく答えた。
エルヴィス達がデータ保存される日がどんどん近づいてきている。
当初は問題ないと思っていたが、長くて3ヶ月も待たなければいけないのは今になって耐えられる気がしなくなってきた。
あいつら、そもそもデータ保存される期間、体はどうするつもりなんだ?
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