転生と未来の悪役

那原涼

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第ニ章

飲み物2

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昨晩少々間違えて書き途中なのにほんの少しこの話を公開してしまいました。申し訳ありません。

◇—————————————————————



アレストとフェンデルの会話は基本たわいもないようなものであった。そう聞こえるのは割と穏やかに話しており、そしてカナトが基本興味ない内容だからである。

だいたいはどこどこの貴族の子息が来るとか、あそこは代替わりしたから何なにの話題は禁止だとか、アレストたちが気をつけなければいけないことばかりだった。

カナトはただ運ばれてきたタルト類をパクパク食べながら久しぶりの甘味に舌鼓したつづみを打っていた。

そこへデオンもやって来た。部屋に入るなり大きな声を上げる。

「お?カナトもいるのか!」

カナトも振り返った。

「俺はただのおまけだから気にするな。それよりお前、兄貴はいいのか?広場にいた日かなり暴れていただろ」

「なんだ、あれ見ていたのか。手のかかる兄を躾けてやっただけだ」

そう言いながら椅子を引いてどかっと座った。

「本当なら今日はもっと早く来る予定なんだがな。兄貴のせいで遅れた。最悪だ」

「兄弟なのに仲悪いのか?」

デオンはニヤッと笑った。

「貴族ってのは、長男にしか爵位は譲られない。もし下の兄弟に譲るようなことがあれば、基本爵位を受ける予定の息子が無能か不能だ。だから兄弟仲の良さはまあ、その家によるな。みんな権力と地位は欲しいからさ」

「つまりお前は兄のこと嫌っているのか?」

そう聞かれてデオンが目をぱちくりとさせた。すぐに笑って口を覆った。

「アレスト、お前の使用人って率直なやつだな」

「それがカナトのいいところだ」

「お前みたいな稀有な例もあるから包み隠さずに言ってくれるカナトは大事ってことか?」

「あまり僕を煽るな」

デオンは笑ってごまかした。

「さて、デオンもそろったことですし、本題に入りましょう」

フェンデルの言葉にカナトが不思議そうな顔をした。

じゃあ今まで話していたのはなんなんだ?

「カナトさん、こちら異国から取り寄せた珍しい茶葉の紅茶です。よければ飲んでみてください」

その目がアレストを見た。

「飲ませていいですよね?」

アレストは腕を組みながらトントンと指先で腕をたたいた。

「いや、飲むの俺だろ?なんでアレストに訊くんだよ」

「カナトさんはアレストの使用人ですからね。許可を得ないと」

そんなものなのか?そんなルール、カナトはあまりわからなかった。

やがてアレストはカナトを振り向いて手を伸ばした。カナトの頭をなでながら言う。

「大丈夫だ」

「何が?結局この紅茶って飲んでいいのか?」

アレストは何も言わなかった。カナトは差し出される紅茶を見て受け取った。アレストから特にこれといった反応はない。

飲んでみると甘酸っぱい味がした。

おっ!まるでジュースみたいな味だな!

今まで飲んできたのは砂糖を入れないと甘くない紅茶ばかりだったため、最初から味がついている紅茶は珍しさがあった。そのため思わず一気飲みした。

「これなんて紅茶なんだ?うまいな!」

「そうでしょう?子ども向けの甘いものになります」

「………子ども向け?」

「というより最近はご令嬢のあいだで人気なんです。果物の果汁を入れたフルーティな紅茶が花形なんですよ」

「なるほどな……」

ユシルの紅茶店も本来ならこの花形と言われる紅茶を出したことで有名になるが、どうやら他の所に先越されたみたいである。

なんだかムカムカするな。ユシルが先に出したはずなのに…………あれ?

カナトは不思議なほど眠気を感じ始めた。

まぶたが重くなり目の前がかすみ始める。

なんだ、急に……。

アレストは倒れようとするカナトの体を抱き寄せて、ひざ下に手を入れると自分のひざに乗せるようにした。

「カナト、眠いのか?」

「んあ?あ……いや、なんか急に……」

「眠いなら肩を貸すよ」

「そうか?悪いな……」

うとうとしたカナトは眠気に勝てず、こてんと頭をアレストの肩に垂れさせた。

「寝たようですね」

フェンデルはカナトの寝顔をのぞこうとしたが、アレストににらまれた。

「早く本題に入ってくれ」

「カナトさんなら大丈夫ですよ。そんなに効果持続しないので、2、3時間もあれば目を覚まします」

「だからこそ早く本題に入れと言っている」

「まあまあ、少し私の意見聞いてみてください。カナトさんはまだ計画のこと知りませんよね。でも、知らずとも計画に参加できます」

そばで聞いていたデオンがひょいと片眉を上げた。

「……何が言いたい」

アレストのにらみに対してフェンデルは飄々としてカーテンの前に移動した。

「今のあなたにとってカナトさんは唯一の存在。彼をなくして世界は成り立たない、なんて思ってませんか?でもカナトさんにとってはどうなんでしょう?あなたがいなくても世界は成り立つし、あなたを離れても元気に生きていける。ああ、きっとすぐにあなたの存在を忘れてあのユシルという血の繋がらない弟さんに走るだろう」

「要点を話せ」

「怖い顔ですね。だからこそですよ。カナトさんがあなたから離れられない環境を作ればいいんです。世界で味方はあなただけ。そんなふうに思わせるんですよ。よく考えたらカナトさんの立ち位置は非常に有利です!これは計画に利用するしかないと思いませんか?」

アレストは暗い顔でフェンデルをにらんだ。だが、すぐに笑った。

「フェンデル、ひとつだけお前に教えてやる。カナトはもともと僕のものだ。川から拾い上げた時から今まで、そしてこれからもずっと僕のものでしかない。離れられない環境?」

アレストは熟睡するカナトの体をきつく抱きしめてその首に手をかけた。

「僕のものにならないなら壊すだけだ。カナトもそう言ってくれた。殺していいと」

明るく人懐きやすい顔立ちなのに、今のアレストは顔に粘着質で病的な笑みを浮かばせていた。

それに対して他の2人は押し黙った。どちらもアレストがカナトに何か重い感情を抱いていると知っていたが、それを目の当たりにするとなかなか視覚的に衝撃だった。

例えるならさっきまで期待の眼差しで見てくる飼い犬が次の瞬間には牙を剥いて噛みつこうとしてくるのを目撃した場面に似ている。

「フェンデル、お前は確かに人を誘惑することに関しては上手だ。誰を誘惑しようと関係ない。だが、僕を、カナトを誘惑しようなんて考えるな。次似た行動があれば容赦はしない。貴族でもないお前を潰すのは簡単だ」

「………」

「計画に参加したければ勝手な判断をしないことだ。お前も、デオンも、欲しいものがあるからこそ協力してくれるのだろう?だったら最後まで良き友として協力し合おう」

聞いていたデオンは思わずあごを引いて顔をしかめた。

胡散クセェ良き友だなぁ。











話し合いが終わり、アレストが去った後、カーテンの前でフェンデルは考え込むように黙っていた。

「お前は人を誘惑するのは上手だが、あいつは無理だったな」

フェンデルは面白そうに笑っているデオンを見返してため息を吐き出した。

「そうですねぇ。カナトさん関連なら心の隙を作れると思っていたのですが、結果は残念です。考えていたよりも狂った人でした」

「人のこと言えるか?」

デオンは椅子から立ち上がって近くのキャンパス前に来た。かけられた紺色の布を取りはらって描かれたものをさらけ出す。

勢いよく引っ張られた布は床に落ち、現れた黒々しい絵画には拷問死体が描かれていた。

ほとんどすべてのキャンパスに似た黒々しい絵が描かれている。

「こんな趣味のあるお前もだいぶ狂っているぞ」

「実の兄に興奮するあなたと違って個人趣味の範囲です」

「よく言うぜ!未来永劫個人趣味の範囲に止めろよ?」

「そうですねぇ。がんばります」



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