🗡️🐺Roda『The One Who Opens the Door to the World』(ローダ・世界の扉を拓く者)

🗡🐺狼駄(ろうだ)

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第2部『Candidate selection(候補者の選択)』

第10話『Black of Intruder(漆黒の侵入者)』 B Part

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 足場も視界も最悪なアマン山中の森を駆ける速度で突き進むガロウ・チュウマ、ルシア・ロットレン。最後尾にローダ・ファルムーン。

 エドナ村から約5km程南下すれば、生い茂るおいしげる樹木が深くなり、やがて緩やかな登坂が始まる。ガロウの言葉通り、道らしい道は姿を消した。

 なだらかなアマン山は南と西へ長く伸びた広い山岳。エドナ村とフォルデノ王国を分断する自然の障壁しょうへき。エドナの民、この山に敢えて人手を入れず障壁能力を最大限活用していた。

 それに何よりこの山から続く深緑の森には、森の女神ファウナが住まう伝承が存在した。

『魔女の森に立ち入る事なかれ』

 恐怖と敬愛けいあい、入り乱れる真逆の感情を秘めた人間達。これ程強固な護りまもりなどそう在りはしない。ローダ達は女神の聖地掠めるかすめる場所をけわしい表情で前進していた。


 ──此奴、おいん俺の着いて来るっとか来れるのか

 ガロウがローダの健脚けんきゃくぶりに幾許いくばくの驚き抱く。足腰もそうだが、山慣れしてると直ぐに把握した。

 一方、同じ道を往くルシア、特段思う処はない。
 4日前、赤い狂戦士バーサーカーと化した候補者ローダの筋力はと語って過言でない程増強したのを認知している。

 赤い力を見せずとも普遍的ふへんてきな部分だけで充分やれると判断した。
 されど故にこの先々を不安視していた。

 ──ムッ!

「二人共歩みを止めて。風の精霊が嫌な匂いにおいを見つけたよ」

 ガロウとローダを制する緊張帯びたルシアの小声。『嫌な匂い』と語る彼女自身の顔が歪むゆがむ
 自分達より先んじて偵察ていさつに出してた風の精霊。
 それらがこの精霊使いに取りいた感じなルシアの反応。

犬共コボルトか」

 顰め面しかめつら、嫌悪感を剥きむき出しにしたガロウ。
 ルシア、ガロウ──ローダ目線で強者判定の二人。ただのコボルト相手に見せる戦慄せんりつ
 コボルトとはさほど脅威きょういではない魔物だと彼は認識している。寄って二人の驚く意味が解せない。

「こ、此処アドノスのコボルトはそんなに強いのか?」

 独り置いてきぼり感なローダが見せる戸惑いとまどいの色。
 それを聞き及んだルシアとガロウが静かな溜息を吐く。

「……ローダ。君を含めあの村エドナ村から黒騎士マーダを追い払った私達を放っておく訳がないのよ」

 まるで血の繋がった実弟に諭すさとす姉の様にルシアが危険を伝える。

おいあんわろやったらあの野郎だったら歯軋りしちょっどしてるぞやっでだから犬は犬でんでも奴ばらん奴等のが来るに決まっちゅう決まってる

 相変わらず発言の過半が判らぬガロウの言い草。
 言語が理解出来ずじまいでも彼の様子から粗方あらかた窺いうかがい知れたローダ。この先、げに悍ましきおぞましきが待ち構えているのだと知る。

 ズキューンッ!

「──えッ!?」
「な、ないだあ?」
「──ッ!」

 ルシアがつかんでいた枝を焼く赤の熱線。樹木のげた匂いが周囲に立ち込める。
 敵の本命が既に自分達を狙いませられるのは最早明白。三者三様驚き慄くおののく

「精霊術士……然も女の匂いだなあぁぁ……。香水みたいな良い香りだなぁ」

 何とやった相手の声すら届いた。嗄れたしゃがれた醜き声と感じる。未だ姿は見えぬが熱線を撃たれた斜線軸しゃせんじくからどの辺りに潜んでいるかを割り出す三人。

「一方的に狙われたんじゃ面白くないわ! 潜むのはもうお終い! 後はばらけて行動するよッ!」

 ルシアが早速樹木を蹴って己の発言を体現たいげんする。正直ローダを独りにするのは気が引けるがやられては意義を失う。

 ──敵は私に匹敵ひってきする精霊使いに違いない。然も森にけた存在。

 ルシアが枝から枝へ飛び交いながら声の主を探索たんさくするも、踏み台にする枝を幾度いくども熱線で撃ち抜かれる。
 敵も中々狡猾こうかつらしい。
 赤い光線の発射先が移り変わるのに気が付く。向こうも機動性にんだなのだ。

おぅッ!」
「了解した」

 呼応したガロウが即座に抜刀ばっとう、やはり刀身が赤に染まっていた。
 ローダはコボルトの匂いをぎ付けたとルシアから言われた向きへもりを握りひた走る。湿り気帯びた地面をものともしない走り。

 何しろ2年もの間、犯罪者とおぼしき者を捜索そうさくする旅路を経験しているのだ。恐らく道とは世辞せじにも言い難き苦難くなんを歩んできたに違いない。

 然し少々先行し過ぎである。
 万が一、コボルト以外の敵方と鉢合せはちあわせでもしようものなら破綻はたんし兼ねない。

「ズァァッ!!」

 奇声を上げ、ガロウが赤一色の刃で樹々をしながら真っ直ぐ進む。彼は本来自然を愛する男。寄って実に不本意なやり口。

 それでも彼は敵の攻勢を自分へ引き寄せるのを改める気が全くない。あの青年ローダには悪いが頭数に入れるのは余りに楽観的過ぎるのだ。

 ルシアとて等しき覚悟で派手な動きへ転じた。
 兎に角とにかく敵の強者つわものを此方へ引き込む。コボルトと嗄れしゃがれ声の男以外にも、嫌な気配を白い肌が感じていた。

 ブンッ!

 ──な、何ぃ!? 

 風切る拳の音が先生シスター姿のルシアのほおかすめた。樹木の上を飛び移る自分より高い位置から届いた危険な拳。

「へぇ、今の躱すかわすとはちょっと驚いたぜ。女ぁ、ただの術士じゃねぇな」
「──ッ!」

 盛り上がった筋肉を敢えてさらした女戦士とルシアの視線が絡み合う。
 同業者格闘家──互いに一見でそれを見抜いた。

 ──殺気ッ!?

 一方、ガロウさえ自身と等しきを感じた。
 背負ったさやの内側から蒼い何かオーラが立ち昇る小柄こがらな剣士。敵も自分と同様に自ら相手を呼び込んでいた。
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