🗡️🐺Roda『The One Who Opens the Door to the World』(ローダ・世界の扉を拓く者)

🗡🐺狼駄(ろうだ)

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第4部『Spinning world(回る世界)』

第30話『Devoted lover(一途な恋)』 B Part

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 往き過ぎた生体検査スキャンの為、全身麻酔を受けたローダ・ファルムーンの意識戻る。
 待ち受けていたのは最愛なるルシアの抱擁ほうよう。共に自然でありたいと願う気持ち溢れあふれ御互い涙と成した。

 ──コンコンッ。

「「──ッ!?」」

 病室のドア叩かれノックされ驚いた顔見合わせた二人。
 個室とはいえ此処病院は公共施設、愛し合う両者が想いをカラダで具現化するのは禁断なる場所ルール違反

 されど雰囲気最高潮クライマックス欲する気概きがい溢れた若者達の欲求。空気読めない邪魔ノックさえ無ければ危うく突き進む寸前、御預けおあずけ喰らった恋人未満。

 急ぎ慌てふためき互いを突っねる様に離れ別れ身支度心構えを整えた……つもりであった。

「ど、どうぞ。鍵なら掛けてませんからぁ」

 動揺どうよう酷過ぎた代わりにルシアが緊張感と後ろめたさ混じり合う声、背を向けたまま応じた。

 病室の引戸を開け放ち現れたのは金色金髪のルシア凌ぐしのぐ美麗びれいさ誇るハイエルフのベランドナ。

「す、すいません。ひょっとしてでしたか?」

 さっして余りある男女の不純異性営み交友、人種超越した存在がぶち壊した雰囲気感ずるものの、最早もはや止めるすべなき現実に狼狽うろたえみせた。

「──ッ!?」
「じゃ、邪魔ぁっ!? ……あ、い、いえ。何でもない…ですよ?」

 顔引き攣りつり合う入口の独りと病床ベッド不謹慎ふきんしんな愛語り始めたばかりだった二人。

 絶句禁じ得ないローダ青年。
 余分な声張り上げ、中途でやらかした失敗に自ら気付いて声量しぼるだけの抵抗みせたルシアである。
 なれど憐れあわれかな……白Yシャツ胸元付近のボタン乱れ 、隠し立て出来ぬ現実下着曝けさらけ出す。

 ──何故人間とは態々わざわざバレる嘘を付くのか?

 推定すいてい年齢300歳越え、ハイエルフの女性としては未だと言って差し支えない悠久ゆうきゅうを往くベランドナ。
 心中だけ頭かしげた。恋愛に対し人間より遥かに悠長ゆうちょうでいられる彼女、少女が如き疑問符芽生めばえる。

「……で、ベランドナさん。御用件は?」

 此処でルシア、胸元がやけに気分に気付き、全身の体温上がる思いでYシャツのボタンを締め直した。

「あ、嗚呼……申し訳ございません。本日19時、1階大広間に集合して頂けますでしょうか。当主人ドゥーウェンから至急御伝えしたい緊急を要する件がございます」

 冷静真顔に返りて用件を速やかに伝えるベランドナ。秀逸しゅういつ過ぎるメイドの様相ようそうへ返り咲く。

 ──至急緊急!?

 恋愛感情の気分吹き飛び、しかめた顔見合わすローダとルシア。余程の事案が無ければ笑顔余裕絶やさぬドゥーウェンの語る至急緊急案件とは?

「わ、判りました。必ず19時に伺いうかがいます」
「俺も問題ない」

 使いのベランドナへ普段面した返答にて応じた両者。これで用件は一先ずひとまず終わりだと思い込む。

「まだ続きがございます。御二人だけ出来れば今直ぐにでも、私に着いて来て頂きたいのです」

 ──え?
 ──な、何だ?

 ベランドナの告げた『御二人だけ』がやたら脳裏に響いた両者。
 全く以って何を差しているやら理解苦しみ首捻るひねる。若過ぎる英雄ヒーロー女傑ヒロインかかわる追加要件だろうか?

 兎も角ともかく断る理由見つからず、捜すさがす気さえ起きずベランドナの指示に従い、二人は病室を後にした。よもや二人の背中恋愛を後押しする出来事が訪れるとは露知つゆしらず。

 ◇◇

 フォルテザ市、時計の針は18時51分──。
 間もなくベランドナから告げられた19時を迎える。

 マーダ占領下以来、ドゥーウェンとベランドナが仕切るこの建物。
 1階の大広間、詰めれば数百もの人々を収容出来そうな立派な会議室。有事の際、住民達の避難箇所を兼ねた場所なのだ。
 地下にはさらに広大な避難所が存在し、300年前の争いでは街こそ喪失そうしつしたが住民達は殆どほとんど無傷で生還せいかん成し得た逸話いつわがある。

 アドノス島各所に大小の差こそあれど、こうした避難所が多数存在するのだ。然もこの建設を最も指示したのは誰でもないマーダという驚き。
 森の女神ファウナ神と彼女すら指揮した圧倒的指導者、レヴァーラ・ガン・イルッゾなる人物が元来外敵から民衆を守るべく進めた事業をマーダも引き継いだ結実なのだ。

 暗黒神マーダ──。
 アドノス島の民草を昔から軽んじてた訳では決してない事がうかがえる歴史。

 さて──話が脇道わきみちに逸れた、既に招集しょうしょう言い渡された連中が続々と集結していた。
 元々フォルテザ市を民衆軍Resistanceとして守っていた兵士達と、ドゥーウェンが呼び込んだマーダ軍が顔つき合わす。睨みにらみ合い、沈黙こそ破らぬものの、いがみ合う緊迫きんぱく漂うただよう必然。

「──ルシア御姉様達は?」
「はて? 確かに見当たらんな。第一呼んだ学者ドゥーウェンの姿すら見えんぞ」

 大広間へローダ達より先んじて入室したアルベェラータ親娘。ローダとルシアを探すが何処いずこにも見当たらぬ不可思議に首を捻った。

 ボーンッ……19時を告げる時報鳴り響く。
 同時に敵味方関係ないどよめきが周囲を包んだ。

 大広間から二階へ伸びる大階段、中途に存在する踊り場。
 広間から見上げる分には壇上だんじょうの舞台さながら成る絵面えづら

 其処そこへ4人の男女が静寂せいじゃく引き連れ皆の元へ馳せはせさんじた。

 先ずフォルテザ市を取り仕切る金縁きんぶち眼鏡、黒スーツの学者ドゥーウェン。手を引かれてるのは彼の付き人ボディーガード、ベランドナ。

 兵士達を騒然そうぜんへ転じたのはこの二名ではない。
 続いて現れた民衆軍Resistance期待の双子星二大新星──。

 白いタキシード姿の若き英雄ヒーロー、これ迄誰もが成し得なかった暗黒神マーダ付けた青年。エドナに流れ着いた箒星ほうきぼし、ローダ・ファルムーン。

 静々と英雄ローダの手を取り、慣れぬ足取りで大階段の踊り場まで降り立つ女傑じょけつ

 奥ゆかしくも凄艶せいえん極まる花田色はなだいろ※1、大胆だいたんにも胸元迄白い肌晒すさらすショルダーカットドレス。
 金髪のハイエルフにおとらぬ美しさ金色こんじきの髪際立つきわだつ女性。泣きぼくろの上、瞳が本物の宝石エメラルドグリーン彷彿ほうふつさせる。

 人らしからぬ神々こうごうしさが見る者達へ安らぎと、戦乙女Walküreが如き高揚感こうようかん届ける輝き散らすルシア・ロットレン。

 この4人──。
 何れも揃いそろいの蒼き薔薇ばらを衣装に差し、おもむきを添えていた。
 ローダはタキシードの胸ポケット。
 ルシアの編まれた髪にもForcinaかんざし※2を成した薔薇が着飾きかざられていた。
 ※1花色の別称。露草つゆくさの蒼い花の色を指す。
 ※2イタリア語でかんざし、ヘアピン。

『この集まりは軍事目的ではなかったのか?』

 4人へ視線を集める誰しもが感ずる違和感。
 舞踏会ぶとうかいでも始まりそうな雰囲気、趣向しゅこうらす目的やも知れぬが過度はなはだしき当主の演出に、皆が言葉を喪失そうしつせざるを得なかった。
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