🗡️🐺Roda『The One Who Opens the Door to the World』(ローダ・世界の扉を拓く者)

🗡🐺狼駄(ろうだ)

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第5部『Resonant Fate(響命)』

第61話『No Rain No Rainbow(雨翔ける㐂色)』 A Part

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 賢士けんしスオーラ・カルタネラの拘束之鎖リミッカテナ魂之束縛アニマカテナ

 そう……スオーラは、命こそ張ったが決して自決するつもりはなかった。
 全力以ってフィスチノを倒しフィエロとの自由つむぎたい、若さあふれる想いが往き過ぎただけなのだ。

 扉の候補者、ローダ・ファルムーン──。
 先ずフィエロに第一のチャクラルートチャクラを以ってスオーラの心を照らす指示を与えた。

 さらにスオーラの心の在り処ありかを探るべくヒビキが彼女の思念に侵入、見事捜し当てると己の居場所をフィエロに伝える為、第七のチャクラクラウンチャクラ紫色意識の炎を燃やし狼煙のろしと成した。

 フィエロもヒビキのを辿り、命の温かみルートチャクラを注いだ。だが、これだけでは延命処置に過ぎないと伝えたローダの見解。

 一度拘束之鎖リミッカテナを用い、心の枷を解き放ったスオーラは、生き抜く為に必要な心の一部が欠けていたのだ。

 此処からが真の正念場、初恋の愛を信じ待ちがれるスオーラの魂を現世に繋ぎ留める

 フィエロしかいない絶対──。
 だからローダは『漢を見せろ、彼女を心底愛する己を存分さらけ出せ』と若い青年へえた。

 比較的ひかえめなローダが先輩風吹かせてフィエロの頭をつかんだ。
 そして新たな創造力の器を開花させた。

 最高位──赤紫のチャクラソウルスターチャクラを流すと共に、ルシア・ロットレンとの恋愛模様。羞恥しゅうちなんて形容詞じゃ足らぬ一部始終を敢えてさらけ伝えた。

『お前も彼女と何物にも代えがたい幸せが欲しいだろ?』

 気恥ずかしさ満載まんさいなる恋愛の先輩から届いた気持ちが、フィエロの背中を力一杯後押ししたのだ。

 そしてフィエロも恥じらいを投げ打った精一杯の告白を辺り一面に散らした。

 あてられた彼も新たなを引き出したのだ。緑色のチャクラハートチャクラ──愛を受け取りさずけるチャクラを、スオーラの欠けた心を補完するのにあてがった。

 ひとつまどろっこしく思えた事柄。
 最上段のチャクラをれるのなら、仲介役などせずにローダが自ら緑色をスオーラの心根に吸わせれば早かったのでは?

 ローダは、朴念仁ぼくねんじんのくせに時は男。
 彼は既に金髪ボブカット、2歳年上で緑色の瞳エメラルドグリーン輝かせる彼女ルシアを余すところなく注ぎ尽くしたのだ。

 そして何よりスオーラ・カルタネラを恋する男が為すべき責務せきむだと決めて掛かった。
 一刻を争うと告げた割、何ともおかたい男であろうか。

 ぎゅっ……。

「ハッ!」

 ずっとずっと握っていたスオーラのたおやかなる右手。
 かすかだが春の訪れ思わすつぼみふくらみ──返してくれた命の脈動みゃくどう、着実に感じ取れたフィエロ。

「うっ! うぅ……うわぁ!」

 フィエロ、最早周りの目を気にせず肩揺らし歓喜に咽びむせび泣いた。
 18の青年──年を置き去りにした感情を爆発させた。彼女の顔に降り注ぎ生命のかて与える温情豊かな涙雨。

 同い年の女性、争いに明け暮れ血と泥によごれた顔を清め始めた。
 二人の若者に幸せの灯りを与えたローダとヒビキは、暖かな春風南風の様にその場を後にした。

 風の精霊達も若い男女の気分を読んだ。
 スオーラのベッド代わりだった役目を静かに解いて、ヒトの胸元へ彼女をたくした。

「ん……?」

 自分の顔だけ降り注いだ
 スオーラが、ゆるりと紫色の瞳を開く。目の前で火傷のあとが目立つ素朴そぼくを描いた男性が嗚咽おえつを漏らし見つめているのに気づいた。

 緩やかに視線だけ送り往くスオーラ。
 涙止まらず揺さぶり続ける男をじっくりながめる。

 修道騎士総長の娘……スオーラ。そんな余分な物差しで自分をはからず自然に接してくれた。
 そうだ、綺麗な寝床など要らない。君のそばに居られるだけで私は心豊かでいられる。

 ガバッ!

「フィエロッ! 良かったッ! 戻って来たぁッ!」

 互いに争いの最中で、薄汚れた姿。かえりみずスオーラは自分を支えた彼氏を抱き締め、此方も嬉しさに涙あふれる。フィエロの匂い感じて増々涙こぼれた。

 フィスチノに心奪われた彼氏フィエロ
 決死の覚悟で取り戻したのは頭の片隅かたすみで自ずと知れた。

 けれどもこうしてフィエロを肌で知り、匂いをぎ、声を届け合う。当たり前過ぎる愛の形が漸くようやく彼女に帰って来たのだ。

「す、スオーラ…

 下手な敬称を付けようと頑張るフィエロの荒れたくちびるを人差し指でふさいだ悪戯いたずら
 等身大な10代男女、なごやかないとなみを見せ合う。

「もぅ…今さらさまも敬語も要らない。──う、嬉しかったよ、さ…さっきの言葉告白
「──ッ!?」

 真面目な賢士けんしスオーラ・カルタネラがみせる意外なあざとさ。

 意識を喪失そうしつしていた筈の彼女、必死の思いで伝え繋げた

 頬赤らめ自然なチークで唇にあてがわれた指先を胸元迄後、『覚えてる』とささや上目遣いトドメ。魂の震度しんど高まりられたフィエロ。

 普段凛々りりしい彼女がやたらここぞと可愛い。哀しきかな──いや、素晴らしきかな。こんな女性に男は殊更ことさら弱きもの。だからこそ人は愛を失わずに済むのだ。

 然し此処は戦場──。
 余計な喧騒けんそうが愛のかなで逢いを邪魔し続ける。

 スオーラを愛情豊かに地面へ下ろしたフィエロ、後ろ髪かれる思いを胸に背中を向けた。

「行くの?」

「嗚呼……今度こそ彼奴フィスチノを倒す。ローダさん達ばかりに甘えてられん」

 きたえ抜かれたたくましい背中に寂しさつのった声を掛けずにいられぬスオーラの切なさ。

 重々じゅうじゅう承知していた。
 フィエロが目前に広がる戦場忘れ、恋愛の宴にきょうじる訳ないのだ。

「か、必ず戻って私の元に来て」

「勿論だ、君にもう嘘はつかない」

 実は泣き虫な自身スオーラでさえ、フィエロを護り抜くと誓いを立て命をした。

 それでも漸くようやくつかみ取れた幸せ、女の我儘わがままを伝えなければ収まりつかない。
 眼差しこそ手向たむけないが、己だけが信じる女神スオーラに宛てた言伝ことづて滲むにじむ頼もしさ──されど同時に揺らぐ危うきフィエロの人影。

 スオーラから見るフィエロと云う漢は、危なかっしいのだ。それこそ彼の人間性をきわ立たせるのだが賭ける物が命となれば別の話だ。

「じゃ、じゃあ…何か約束しよ?」

「約…束?」

 笑顔はじかせ軽くパチンッと両手を叩き合わせたスオーラの提案。
 フィスチノとの争いへ赴くおもむく。決意固めたフィエロの心が思わず揺れる。振り返りたき気分をグッとこらえた。

「そう……だって張り合いが出来るでしょう」

 スオーラ、自分がこれ程愛に身勝手だとは思いも寄らなんだ。

 戦之女神エディウス神の僧兵が仕える神と聖地を護る為、戦地仕事に繰り出す。たたえて見送るのが自分連れの役目だ。

「──き……キス」

 声震わせ、男の本音を口から漏らしたフィエロ。心臓が張り裂けんばかりの鼓動こどうを叩く。今さら戻せぬ恥ずべき願い。

「え?」

「お前の接吻キスが欲しい、今一番欲しいもんだ」

 接吻キス──それなら既に終えたばかりだ。
 私の初心うぶ王子様フィエロを目覚めさせる為の接吻キス

 だけどあの時は、兎に角とにかく必死だった。血と泥の味が残る接吻キス。あれではカウント出来ないのか、或いあるいはそのを欲しがる布石駆引きかも知れない。

 改めて『接吻キスが一番欲しい』と少年の様に強請ねだられたスオーラ。散々泣きらしたのち、七色のが見えた想いに独り駆られる。白黒苦労すえ流麗りゅうれいいろあでやかに色づき咲いた。

「い、いいよ。判った、約束する」

 恥ずかしい──だけど嬉しさ打ち勝つスオーラの返事。
 彼女の心を取り戻すべく、物質宇宙赤紫神聖……そして共感。あらゆる生命力チャクラが為す奇跡の色華。

 けれども七色人生には届かなかった。良いのだ、これから必ず訪れるのだから。
 新月の夜空だからこそ今宵こよいの星々はきらめきを思う存分散らす。

 きっと明日は雲ひとつ無き快晴の青ハレルヤに違いない。雨はいつの日か必ず上がり、恵み転機をもたらすのだ。
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