🗡️🐺Roda『The One Who Opens the Door to the World』(ローダ・世界の扉を拓く者)

🗡🐺狼駄(ろうだ)

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第5部『Resonant Fate(響命)』

第61話『No Rain No Rainbow(雨翔ける㐂色)』 B Part

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 僧兵フィエロ・ガエリオが争いに出向く背中を見送るスオーラ・カルタネラ。彼女の心はものさびしさと、他人じゃない人を送れる幸福が交差していた。

 正直不安こさぬぐえないが、彼は約束をたがえぬ安堵あんどにじませていた。

 フィエロよりひと足先、戦地へ歩むローダ・ファルムーンと娘ヒビキの幻影映像

 ──なるほど、成程。人を立てるのがパパのやり方か。

 フィエロから緑色の力ハートチャクラを引き出した父ローダの創造性に、独り納得する映像のヒビキ。父の隣をゆるりと歩みながら手を口にあて「ニシシッ」と笑う。

「……?」
「パッパが扉の候補者…納得だね」

 何やら自己完結してる娘に怪訝けげんな顔色を浮かべた父。
 父の疑問を置き去りにして母譲りルシア譲りな金髪をヒビキは腕組みしながら縦に振るのだ。

 創造を力に還元かんげん可能な候補者の能力。
 もし身勝手なやからが好きに振るえばこの世が終末を迎えかねない。

『……鍵は拓いた、そしてもう閉じる気ないの』

 パパが死のふち彷徨さまよったおりママが言った台詞を思い出したヒビキなのだ。

「ヒビキ……その笑い方、少し気持ち悪いな」
「はぁんッ!?」

 無遠慮な父の引き具合、ヒビキが詰め寄りキレた。命賭けた戦いにおもむく緊張感が欠けた父娘のやり取りであった。

 一方、鍵のであるのを堂々さらしたルシア・ロットレンが珍しく攻めあぐねていた。
 スフィンクス化したフィスチノは、ルシアが思い描いてたより強大だった?

 多少な認識の誤差ズレはあったらしい。強固な4本の脚で既に割られた地面をさらに叩き潰し、局地的な揺れを生じた。

 口から吐く炎もすさまじく、以前スオーラから聞いた人を一撃でほふる位は余裕に思えた。
 それ故ルシアは、風の精霊術に依る護りが解けた連中に、再び風を付与ふよする作業に追われた。

 魔神ラウムの力を借りた石の傀儡ストーンゴーレム造りも無尽蔵むじんぞう。続々と量産されるが故、戦之女神エディウス神の兵達はおのずと石くれゴーレム達に付き合わされる。

 獅子座の元になったヘラクレスに負けたスフィンクスへ手が届きそうな味方は、ルシアか修道騎士副長ルッソ・グエディエルに限定された。間もなく合流するが。

 ──何なの此奴コイツ……。スフィンクスって確かAbadiaアバディアの墓守じゃ? 確か『朝は4本』とか問う化物。

 Abadiaアバディアとは旧エジプト領、不滅の聖域クフ王の伝説しるした国名である。
 ルシアは、スフィンクス化したフィスチノの攻撃を飛び跳ねかわしながら、こんな余裕思考巡らす余分を秘めていた。

 何しろ彼女はハイエルフを依り代ベースに成した扉の候補者達を試す存在。

 獅子に翼が生えた物の怪モンスター、例え魔神ラウムに依る底上げがあろうとも負ける気など実の処しないのだ。味方の命を護るが故、一見手をこまねいていた。

 彼女が本気を出せば竜──ドラゴンと名が付く蜥蜴トカゲの様な化け物とて独りで殺れる自信があるのだ。

 フィスチノが一体どんな目的でAbadia旧エジプト領から態々わざわざ地中海の島国アドノスへ出向いたのか? そんな事柄を思い浮かべつつ、敵のスキうかがっていた。

 ズガッ!

「──あの男の匂いッ!」

「ローダぁッ!」

 黒いムチの様な物が武器から燃え盛り、フィスチノの背中を狙うがかわされた。鎖鎌くさりがまの如く、持ち主ローダの手元に戻る炭化タングステンの刃。

 フィスチノとルシア──互いに欲しかった者が歩み寄るのを感じ、そちらを振り向く。
 たてがみが顔を悪目立ちさせる巨躯な化物スフィンクスが、喰らうべき相手を視線で
 世界で唯一心拓いた男へ愛想笑顔を振りくルシア。全く反応異なる二人の様子。

「ふぅ……羽根の生えた獅子ライオンが炎を吐くか、これではまるで合成獣キマイラだな。──魔神ラウムの次は。今夜は何とも不思議な争いをいる」

 白地に黒を基調としたハイデルベルク旧ドイツ領の騎士見習いの軍服。
 白いマントをなびかせ漸くようやく参戦果たした黒髪の男が思わず溜息ついた。

「ウガァッ!」

 ローダを見つけた途端とたんよだれを撒き散らして襲い掛かるフィスチノスフィンクス。後方へ跳び下がりこれを避けた。

 その時、胸奥にしまい込んだ魔神ラウムの魂と云うべき金塊がローダの心に訴えかける。

 ──英雄ルシア女傑を喰らいたい、此奴が?

 魔神ラウムからの言い伝えを受け留めたローダ、生真面目な彼らしくない嘲笑ちょうしょう
 地面で転げ暴れる化け物フィスチノ本質サガを見抜いた。

「ヒビキ、俺の気分を彼奴フィスチノにぶつけてやれ」

 今度はルシアのくれた木の葉を押さえ、中に潜む娘の意識をさそう。ローダが映写していたヒビキはうなずき返し、意識飛ばすべく渦巻いて木の葉風の便りに帰った。

 ▷▷──フフッ、あわれなものだ。如何どうにか女性の姿二本足に進化して、次は三位一体三本足──神の覇権はけんを狙ったのにな。に殺られ四本に堕ちた。

 若くて可愛い男だったローダのあざけり。ヒビキの能力に依る境目さかいめ皆無で『朝は四本足最も底辺』フィスチノの弱味がじかに付け入る。

 魔物を活性化させる新月と魔神の力を借り受け、賢士けんしスオーラの魂之束縛アニマカテナでバラバラに砕け散ったフィスチノ。現在の姿は退が正しい。

 散々人を喰らい『朝は四本足スフィンクス』から『昼は二本足フィスチノ』へ進化を遂げた獅子座をした物の怪モンスター

 次は神出流かみいずる島──アドノスに自ら出向き、暗黒神マーダを喰らい神一体から為る神の器でも狙ったか。
 然し恐らく暗黒神マーダの返り討ちにあい、『扉の候補者を喰らえ』とでも言いくるめられたに違いないのだ。

 ▷▷魔神ラウムと云い、貴様も所詮しょせん神話の中が似合いだな。

 話術の矛先でフィスチノスフィンクスの心を刺しつらぬいたローダからのトドメ駄目押し。地上でのたうつあわれな化け物の末路。

 ルシアから貰った言の葉風の便りとヒビキの合わせ技。
 ただの化け物に堕ちた敵の弱点を心底揺さ振る突貫とっかん成し得た。

「皆も聴いてくれッ! 今そこでえらぶる化け物なんて流ッ! 奴が首元から下げてる金属片、あれを破壊するんだ。それさえ出来ればさっき迄のフィスチノより余程弱いッ!」

 戦之女神エディウス側の連中にさえ肉声でさらしたスフィンクスの正体。そしてローダは己の剣をした。
 揺れに揺らいだスフィンクス、最早自身ローダの刃を届ける迄もない。スフィンクスを未だ強固にしている魔神ラウムの媒介触媒、これさえ壊せば誰でも殺れると決め打ちしたのだ。

 ──もっとも……こんな神話をの方が余程脅威きょういだ。

 ローダの興味は既に其方そちら側へかたむいていた。
 自ら神を名乗る暗黒神マーダが現世に態々わざわざ神話を召喚するものか?

 ローダ的判断──答えはNo。
 別の夢見の能力者が、抱いた野望を容易よういに連想させた。

 ダンッ! ズガッ! ズガガガッ!

「ハァァッ!」
「ぐぼぁッ!」

 風の精霊術で為した真なる翼を広げたルシアが、アディスティラの夜空を文字通り駆けた。

 蒼白い光に染まる両手両拳を繰り出し、スフィンクスの横っ面をサンドバッグと成す。天女が如きルシアが宙舞う面目躍如めんもくやくじょ
 ローダからの『三流』宣言──『後は好きにやれ』と認識した。

手前テメェだけは絶対ぜってぇ赦さねぇッ!」

 黄色い輝きを帯びた三節混さんせつこん、左顔をルシアの好きに殴られ、走る痛みに抵抗するだけで反撃に転じられぬスフィンクスの首元を真上から叩き潰す。

 赤、橙色を越えた責任感──黄金色ソーラープクレクサスチャクラを、己の武器に流し込んだ僧兵フィエロからの反抗の狼煙のろしであった。
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