🗡️🐺Roda『The One Who Opens the Door to the World』(ローダ・世界の扉を拓く者)

🗡🐺狼駄(ろうだ)

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第6部『Reunion & Admonition(再会と”最戒”)』

第69話『"Sylph", Burning for Hibiki("かぜ"、こがれた"ひびき")』 B Part

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 扉の力を秘めたローダと彼の扉を心ゆくまで拓いたルシアが為した生命の営みであるヒビキ。
 未だ着床ちゃくしょうしたての命を世に産み出す禁断の儀式を創造したローダ・ロットレン。

 自分の名前ファルムーンすら差し出す急転直下な結婚式をぶち上げ、ルシアの親と云うべきサイガンを半ば無理矢理引き出したのは、これを成す為のが真なる目的。

 人の意識を電子の波に乗せデータ化する義理の父サイガン。
 死して尚、炎に飛び込み復帰を果たす不死鳥フェニックスをカスード家からいだばかりのリイナ・アルベェラータ。

 そしてロッギオネ奪還戦だっかんせんに於いてルシアのに居るヒビキと意志に依る結託けったくをする事で創造を具現化出来る可能性を見出みいだしたばかりのローダ。

 奇跡の流れが繋いだ運命の糸をい合せる生命の共同戦線。
 果たして結実成るか?

「ローダさんっ! ヒビキちゃんのイメージをっ!」

「──!」

 不死鳥を召喚し終えたリイナだが対セイン戦の時の様に、からだへ何故か取り込む動作に及ばず、ローダに向けて白い手を目一杯伸ばす。

 ローダ、無言でうなずき返し少女の手を無遠慮に鷲掴わしづかむ。恐らく握った跡が残る程。

「こ、これは!? ──嗚呼……何てけがれのない魂の。これが生命の成り立ち」

 ローダと握った手の内からこぼれるヒビキの意識がリイナの心へ打ち寄せる波と化した。

 リイナ思わず涙──。
 戦之女神エディウス神の司祭として生命のいとなみを勉学として修めた少女が小さな肩と銀髪を揺らす。決して知識で測れぬ命の重みを知るのだ。

 ──す、すごい! ヒビキちゃんのイメージが手に取れる! これなら!

 リイナはヒビキの完全な姿を初めて知る。
 以前、命燃やし尽くし倒れたローダの手前。
 ルシアがリイナの手を取り命の器にあてがい伝えたものの、ヒビキの姿形までは知るよしがこれまでなかったのだ。

 然しこの先リイナに訪れる最大の試練。何しろ不死鳥を極めた12歳の天才児、ジオーネ・エドル・カスードさえ知らぬ力を現界げんかいさせるのだ。

「マラビータ・アニーマ! 現世げんせに眠り往くうつろな魂よ。真理の扉を開けぇッ!!」
 ──御願い! 生きているなら私に力を貸してぇッ!

 この術式本来の在り様──それは失われた魂を黄泉よみから一時的に召喚し、不死鳥フェニックスの炎を以て形造るものだ。

 されどヒビキは産まれ落ちてこそいないが。云わば術式のことわりに反する新術を成功させねばならない。

 リイナ・アルベェラータ──。
 神はおろか天さえ無視。Fortezaフォルテザの地下で凍結の眠りコールドスリープに落ちてるジオーネを呼び捨てで祈りを届けた。

 ヒビキを創造する者──。
 本来ならば扉を拓いた父ローダの役目ではないかと思える。

 だが彼は逆にヒビキの存在を半ば現実に居るかの如く知り過ぎていた。
 16歳女子高生の姿と本来抱き上げるべき赤ん坊のヒビキの狭間はざまで創造が揺らぐ危険を想定したのだ。

 だからヒビキの器と云うべきからだの準備をリイナにたくし、意識の情報抽出はサイガンに任せ、己は全てを統括とうかつする立場を取ると決めた。

 もっと扉の持つ創造性を引き出せる処まで、彼が成長すれば成し得たかも知れない。だが失敗は決して赦されないのだ。

 リイナが魂込めて不死鳥の炎、渦巻くものを形にすべく全力を尽くす。

 炎が徐々に女子の形を成そうとする──するのだが未だ揺らいでいる気がしたリイナ。何をやらせてもそつなくこなす少女の心に絶望の黒が混じるかに思えた。

 ガシッ!

「ろ、ローダさん?」
「ジオォッ! 頼むッ! 起きろッ! 目を開けてくれぇッ!!」

 リイナの魂がほころぶのに気づいたローダがリイナの肩を握り『目を開けろ!』と祈りを絶叫に乗せた。
 一刻も早くヒビキの器を作らねば、義父サイガンが情報抽出サルベージしたヒビキの魂が行き処を見失う。

潮精霊マリナッ! 音精霊エコリスッ! ジオーネ・エドル・カスードの細胞に行き渡り皆の叫び意識を届けよッ!」

 もう黙ってみておれなかった精霊術士ベランドナ──。
 普段美麗びれいな声を喉潰のどつぶにごらせえる。彼女の涙そのものが潮精霊マリナに映るのは幻か、現実なのか。

 本来届く筈なき声──ッ ローダの扉が……遂に拓いた!

 これまで炎を固定し切れなかったリイナの呼んだ不死鳥が、描く人の形の中。
 刹那せつなの少年ジオーネが浮かび笑い掛ける。ローダ、リイナだけでなく背後のベランドナにさえ着実に映えた。

 不死鳥の炎がやがて足元から次々と少女のからだを成して往く。
 
 然もあくまで──ローダとリイナがイメージしたヒビキ。
 いつもの女子高生姿で病室の床に自らの脚で立った。

義父さんとうさんッ!」
「判っておるッ! 万事ばんじ任せろッ!」

 これまで心が──意識が──身体を追い越し続けたヒビキに相応ふさわしい器を用意したい。

 ヒビキによく似たアンドロイドに魂を定着させるだけで良ければ、この鬼才サイガン・ロットレンに取ってそれはただのだ。

 なれどそれでは誰も満足出来やしないのだ。
 あくまでヒビキ・ロットレンとしてこの世に生を受ける至上命題を達成すべく、この場に居合わす皆が一丸と為って動いた。

 母ルシアの器を状態表示したモニターから『Hibiki』の文字が消え、瞬間きもつぶす想いのサイガン。

 何しろルシアの様に目に見える線を繋いだ訳ではない。
 文字通りのOffLine──女性がお腹を痛め産み落とす時。
 繋がれた最後の欠片かけら──臍の緒へそのおは、この出産シーンに存在しないのだ。

 後は天運に任せヒビキが目覚めるのを待つより他ないと、肩の力が抜け落ちそうになるサイガン、リイナ、ベランドナ。

 ──だが天啓てんけいを受けた父親ローダが最後の仕上げに動く──

「ヒビキぃッ! パッパだ! 娘の身体を抱き締める恥ずべき親だ! お前の身体は此処に在るッ! だから安心定着しろ!」

 16歳の姿で産まれ落ちたが、未だ目を開かぬ娘ヒビキの躰を無遠慮に抱き締め叫ぶ父ローダの本領ほんりょう

 ──そしてのだ。
 ならばローダの創造力が活かし切れる。
 
 呼び出す・呼び込む・読み込む力──『Loaderローダー
 偶然が生んだ宿命の名が、愛がれた娘へ届けと不器用な力を送り注ぐのだ。自身の体力を文字通りし尽くす程。

「……ぱ、パッパ。い、痛いよ離してぇッ!!」

 ローダが男の腕力と胸板で無理矢理抱いた娘ヒビキ──文句の
 陽の光届く筈のない病室に居る皆の顔へ、希望の陽射しが舞い降りる。

「ひ、ヒビキぃぃぃ……」

 50代後半初老サイガン・ロットレンが元々しわだらけの顔をよりしわくちゃにして泣きくずれる。

「ひ、ヒビキちゃん! よ、良かった……ほ、本当に……」

「──っ!」

 リイナとベランドナもちゃんと目を覚ましたヒビキに歓喜の後、安堵あんどで腰が砕けた。

「あ、あのさぁ……確かに産んで欲しいって言ったけど……」

 やはり空気を読む気がない父ローダを如何どうにか引きがしたヒビキ。モジモジからだをくねらせ何か言いたげ。

「まさかこの姿16歳で生まれるだなんて思ってもみなかったよぉぉっ!」

 それは必然にも程ある主張。
 生まれて早々16歳──数値的には母ルシアより年上であり、母の妹分リイナより2つも上だ。

「──んっ……何かやけに騒がし……いぃっ!?」

 大層異端いたんなる喧騒けんそうの最中、母ルシア目覚める。緑の瞳エメラルドへ飛び込んだ少女ヒビキに魂がぜる想い。

 ガッバッ!

「ヒビキッ! 私のヒビキィィィ! よ、良かった……ほ、本当ホントにぃっ!」

 白い手術着が危うくほころび母のこぼれ落とすも、生まれたヒビキを抱き締め歓喜の号泣。唖然あぜんとする皆を他所に幸せの風を運ぶママの強さ。

「んっ?」
「あ、あれ?」

 母ルシアに抱かれた驚きで響き言葉を失った娘ヒビキ。
 歓喜を越えた狂喜きょうきに転じた皆が、自分達の目に映る世界を疑い瞳をこすり始めた。

「ろ、ローダ? お前まさか?」

 サイガンも濡れた目をこすり、娘と孫娘が抱き合う姿を指差す。
 義理の息子ローダ、照れ隠しで微笑びしょうを浮かべつつ黒い頭をいた。

「いや……狙った訳じゃないんだ。ついしたらした」

 ローダは自分のと妻娘の抱擁ほうようについ見惚みほれた。

 妻ルシア──なんと披露宴の白いウェディングドレス姿に変身をげていたのだ。

 白い手術着とベッドのシーツから錬成れんせいしたかのような夫ローダ。
 まるで披露宴の最終演出フィナーレ、仕込みでない演出を披露。はにかんだ笑顔で皆に感謝を送った。
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