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第7部『Back-to-Back Battlefield(背中合わせの戦場)』
第71話『The Ever-Changing Universe(移ろいゆく万有)』 B Part
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ローダ・ロットレン家族──。
産みの歓喜こそ得られはしたが、家族を生みさらに育む発進に立ち往生、苦しんでいた。
一方、Fortezaの市長を嘯くドゥーウェンも再構築の気難しさに金髪へ染めた頭を抱え込んでいた。
拾った壮大な玩具──。
22世紀に連合国軍が量産化に成功した特殊空挺部隊用の人型兵器。形も駆動も戻せた。だが思った様に動いてくれない。
形式:EL97_LST。
通称──EL・Galesta。
連合国軍が総力を結集し描いた9700枚もの設計図の数を形式に刻んだ後に退けない正式採用機。
全高11.97mmだが、乾燥重量5480kgしかない。特装車並に軽量。然も頭部を胸部へ収納させ、脚部も子供の体育座りの様に折り畳める。輸送機に依る空挺運用を可能とした。
連合国軍の鬼才『ガディン・ストーナー』が、これを空から降らせ、全世界を粛清の嵐に包んだ『Purge of Stardust』
同じ人類が人を裁いた禁忌の火種──ドゥーウェンが再び釜に火を入れた。
彼が拾ったこの機体色は黒。
これは正確な話じゃない。炭化色の黒、早い話が未塗装。
さらに頭部や脚部へ繋がる動力パイプが剥き出しなのだ。それがかえって動脈や気道──有機物を彷彿させた。
迫り出した肩にはバッテリーを内包している。頭部メインカメラだけ赤に輝くV字の単眼。武器は所持していなかった。
カタッ……。
気難しさなら人一倍負けない老人、格納庫へ好きに入った足音鳴らす。
「何をそんなに悩んでおる? しっかり動いているではないか?」
馴染みの嗄れた声でおよそ12m先から下まで眺め倒すサイガン・ロットレン。
昔馴染みの亮一君へ掛ける和らいだ発言。
「先生? 今日はスーツじゃないんですか?」
着ている物は見慣れなかった。黒いスーツではなく、セパレートの作業着。格納庫で汗水垂らす整備士達と同列のやる気を匂わすサイガン先生。
「亮一? 何事とて形から入るべきだ。お前から指図を受けてるあの連中、さぞや面白くない気分であろうな」
本気でやるからには降りて来い。白髪の先生、普段はシステムエンジニアとしての姿を矜恃に示す。
今日は機械屋のおやっさんの形を皆に晒す。共に労働の汗を流せるほど体力の自信はない。それでも肩を並べるべきだと雄弁にも態度が物語る。
「ふふっ、亮一。その顔、この機体に抱いた期待にそぐわぬ結果。さぞや不満げといった処であるな」
工場長のおやっさんが、若き日の吉野亮一を茶化す風情。ニンマリ緩んだ目尻の皺。
「そりゃあそうですよ! しっかり動いてる!? アレじゃ21世紀頃の歩くだけで騒がれたガラクタ同然ですよ」
この白髪の先生と共に300年──。
目覚ましが碌に仕事するか怪しい冷凍睡眠でやり過ごしたドゥーウェン。今さら10代に出逢った頃の亮一呼ばわりは腹立たしい。
老人が煽る通りEL・Galestaは、着実に稼働している。
二足歩行ロボットの泣き処。オートバランスとて盛大に機能し尽くしていた。
「聞く処によるとあの機体、22世紀に世界をどん底に突き落とすほど席巻したらしいな。──だがそれは操縦者の技量。ただのAIでこれだけ動けば大したものだ」
顎髭を撫でながら状況のモニタリングと機体の動きを同時に見やるサイガン。『ただのAI』と皮肉る。
「亮一、お前AIでは精々一般兵の操縦しか再現出来んぞ。よもや昔視聴したリアルロボット──操縦者の技量が機械を追い越す姿を妄想したのではあるまいな?」
キッ!
痛い脇腹を突かれたドゥーウェン、安い挑発に乗せられサイガンを鋭く睨む。
「亮一って連呼するのいい加減止めて貰えませんか! それにバルタバザルから襲って来た黒猫もただのAIでした!」
完全に子供扱いされたドゥーウェンが吐いた怒気混じりの主張。
彼の語る通りバルタバザルからローダを襲い現れた黒い試作機『RaviNero』も意志を持たないAIであった。
途中からルヴァエルの操縦に切り替わったものの、ローダとルシア。さらにマーダが送った助っ人ヴァロウズの次点レイを相手に良い勝負を演じた。
「はぁ……それなら私もモニター越しに観戦していた。確かに見事な出来栄えであったよ。──だが判らんかドゥーウェン。あれぞAIだからこそ成せた」
昔世話してやり、己も力を借りた亮一の勘の鈍さに呆れ溜息を吐き首振るサイガン。
次はわざとマーダ配下の名前で呼び付けEL・Galestaを眺める弟子の視覚へ割って入った。
「貴様、AIの本質を忘れておるな。目的が明確ならば人より完璧な結果を出すのがAI。然も人が傲慢成したリミッターを外せばあれ位必然であろう?」
老人の細い目に覗かれ鳥肌立ったドゥーウェンの慄然。師サイガンの教えは当然過ぎたと思い知る。
RaviNeroは扉の候補者を執拗に狙う様、プログラミングされたAI。バルタバザルに於けるルヴァエル一派の演説時にはただの飾りに過ぎなかった。
「お前さん、あの人形へ何を命令した? これからどんな仕事をさせるつもりだ? それが明確でない以上、EL・Galestaがどれだけ高性能とて満足出来る道理がないわ」
ドゥーウェン──自らの愚かさを恥じて頭を抱えた。21世紀頃、人類へ馴染み始めたAIが既にそうした存在だったと今さらながらに思い知る。
「で、では先生。AYAME──じゃない。IRISなら最高の操縦士の代わりに成れると?」
ギロリッ。
サイガンと吉野亮一が共に成し得た人工知性『IRIS』なら、どんな事態にも対処可能な人間の代替品に成れると云う愚門を睨みひとつでサイガンは返した。
「それこそ愚の骨頂。IRISには選択の意志がある。あの人形へ載せてみろ。味方になるとは限らぬぞ」
師に言葉で心抉られ項垂れるより他ないドゥーウェンの憂鬱。
どれだけ高性能な機械を手に入れようが操縦者不在では話にならない。
自動操縦で道なりに走れば事足りる訳がないのだ。
此処で言いたい事が尽きたのか、サイガン・ロットレンの顔つきが不意に穏やかへ転じた。
「伝承に依ればEL・Galestaが活躍出来た裏側には操縦者達の異能が底上げがあったと聞いた。一応独りアテがあるのだ」
聞き始め、師サイガンの口走りが掴めなかったドゥーウェン。徐々に驚愕の顔つきへ転化した。
「え……ええぇッ!? だ、誰なんですかそれはァッ!」
ドゥーウェン──老人へ喰って掛かる勢いみせる。
実に嫌気の差した面構えのサイガン「È sempre stato così vicino a me... che persona deludente.」母国語でボソッと呟く。『一番身近に居るのに……呆れた奴だ』
「大方黒猫の量産機に対する備えであろう? それは決して悪くない心掛けだ。操縦者はAIも含めてこの私が何とかする。お前は2・3機ほど此奴を量産しろ」
詰め寄る弟子を嫌そうな顔色で押し退けサイガン・ロットレンが怪し気な台詞で〆た。「長生きするものだな、まさかこんな好機に出くわすとは」
産みの歓喜こそ得られはしたが、家族を生みさらに育む発進に立ち往生、苦しんでいた。
一方、Fortezaの市長を嘯くドゥーウェンも再構築の気難しさに金髪へ染めた頭を抱え込んでいた。
拾った壮大な玩具──。
22世紀に連合国軍が量産化に成功した特殊空挺部隊用の人型兵器。形も駆動も戻せた。だが思った様に動いてくれない。
形式:EL97_LST。
通称──EL・Galesta。
連合国軍が総力を結集し描いた9700枚もの設計図の数を形式に刻んだ後に退けない正式採用機。
全高11.97mmだが、乾燥重量5480kgしかない。特装車並に軽量。然も頭部を胸部へ収納させ、脚部も子供の体育座りの様に折り畳める。輸送機に依る空挺運用を可能とした。
連合国軍の鬼才『ガディン・ストーナー』が、これを空から降らせ、全世界を粛清の嵐に包んだ『Purge of Stardust』
同じ人類が人を裁いた禁忌の火種──ドゥーウェンが再び釜に火を入れた。
彼が拾ったこの機体色は黒。
これは正確な話じゃない。炭化色の黒、早い話が未塗装。
さらに頭部や脚部へ繋がる動力パイプが剥き出しなのだ。それがかえって動脈や気道──有機物を彷彿させた。
迫り出した肩にはバッテリーを内包している。頭部メインカメラだけ赤に輝くV字の単眼。武器は所持していなかった。
カタッ……。
気難しさなら人一倍負けない老人、格納庫へ好きに入った足音鳴らす。
「何をそんなに悩んでおる? しっかり動いているではないか?」
馴染みの嗄れた声でおよそ12m先から下まで眺め倒すサイガン・ロットレン。
昔馴染みの亮一君へ掛ける和らいだ発言。
「先生? 今日はスーツじゃないんですか?」
着ている物は見慣れなかった。黒いスーツではなく、セパレートの作業着。格納庫で汗水垂らす整備士達と同列のやる気を匂わすサイガン先生。
「亮一? 何事とて形から入るべきだ。お前から指図を受けてるあの連中、さぞや面白くない気分であろうな」
本気でやるからには降りて来い。白髪の先生、普段はシステムエンジニアとしての姿を矜恃に示す。
今日は機械屋のおやっさんの形を皆に晒す。共に労働の汗を流せるほど体力の自信はない。それでも肩を並べるべきだと雄弁にも態度が物語る。
「ふふっ、亮一。その顔、この機体に抱いた期待にそぐわぬ結果。さぞや不満げといった処であるな」
工場長のおやっさんが、若き日の吉野亮一を茶化す風情。ニンマリ緩んだ目尻の皺。
「そりゃあそうですよ! しっかり動いてる!? アレじゃ21世紀頃の歩くだけで騒がれたガラクタ同然ですよ」
この白髪の先生と共に300年──。
目覚ましが碌に仕事するか怪しい冷凍睡眠でやり過ごしたドゥーウェン。今さら10代に出逢った頃の亮一呼ばわりは腹立たしい。
老人が煽る通りEL・Galestaは、着実に稼働している。
二足歩行ロボットの泣き処。オートバランスとて盛大に機能し尽くしていた。
「聞く処によるとあの機体、22世紀に世界をどん底に突き落とすほど席巻したらしいな。──だがそれは操縦者の技量。ただのAIでこれだけ動けば大したものだ」
顎髭を撫でながら状況のモニタリングと機体の動きを同時に見やるサイガン。『ただのAI』と皮肉る。
「亮一、お前AIでは精々一般兵の操縦しか再現出来んぞ。よもや昔視聴したリアルロボット──操縦者の技量が機械を追い越す姿を妄想したのではあるまいな?」
キッ!
痛い脇腹を突かれたドゥーウェン、安い挑発に乗せられサイガンを鋭く睨む。
「亮一って連呼するのいい加減止めて貰えませんか! それにバルタバザルから襲って来た黒猫もただのAIでした!」
完全に子供扱いされたドゥーウェンが吐いた怒気混じりの主張。
彼の語る通りバルタバザルからローダを襲い現れた黒い試作機『RaviNero』も意志を持たないAIであった。
途中からルヴァエルの操縦に切り替わったものの、ローダとルシア。さらにマーダが送った助っ人ヴァロウズの次点レイを相手に良い勝負を演じた。
「はぁ……それなら私もモニター越しに観戦していた。確かに見事な出来栄えであったよ。──だが判らんかドゥーウェン。あれぞAIだからこそ成せた」
昔世話してやり、己も力を借りた亮一の勘の鈍さに呆れ溜息を吐き首振るサイガン。
次はわざとマーダ配下の名前で呼び付けEL・Galestaを眺める弟子の視覚へ割って入った。
「貴様、AIの本質を忘れておるな。目的が明確ならば人より完璧な結果を出すのがAI。然も人が傲慢成したリミッターを外せばあれ位必然であろう?」
老人の細い目に覗かれ鳥肌立ったドゥーウェンの慄然。師サイガンの教えは当然過ぎたと思い知る。
RaviNeroは扉の候補者を執拗に狙う様、プログラミングされたAI。バルタバザルに於けるルヴァエル一派の演説時にはただの飾りに過ぎなかった。
「お前さん、あの人形へ何を命令した? これからどんな仕事をさせるつもりだ? それが明確でない以上、EL・Galestaがどれだけ高性能とて満足出来る道理がないわ」
ドゥーウェン──自らの愚かさを恥じて頭を抱えた。21世紀頃、人類へ馴染み始めたAIが既にそうした存在だったと今さらながらに思い知る。
「で、では先生。AYAME──じゃない。IRISなら最高の操縦士の代わりに成れると?」
ギロリッ。
サイガンと吉野亮一が共に成し得た人工知性『IRIS』なら、どんな事態にも対処可能な人間の代替品に成れると云う愚門を睨みひとつでサイガンは返した。
「それこそ愚の骨頂。IRISには選択の意志がある。あの人形へ載せてみろ。味方になるとは限らぬぞ」
師に言葉で心抉られ項垂れるより他ないドゥーウェンの憂鬱。
どれだけ高性能な機械を手に入れようが操縦者不在では話にならない。
自動操縦で道なりに走れば事足りる訳がないのだ。
此処で言いたい事が尽きたのか、サイガン・ロットレンの顔つきが不意に穏やかへ転じた。
「伝承に依ればEL・Galestaが活躍出来た裏側には操縦者達の異能が底上げがあったと聞いた。一応独りアテがあるのだ」
聞き始め、師サイガンの口走りが掴めなかったドゥーウェン。徐々に驚愕の顔つきへ転化した。
「え……ええぇッ!? だ、誰なんですかそれはァッ!」
ドゥーウェン──老人へ喰って掛かる勢いみせる。
実に嫌気の差した面構えのサイガン「È sempre stato così vicino a me... che persona deludente.」母国語でボソッと呟く。『一番身近に居るのに……呆れた奴だ』
「大方黒猫の量産機に対する備えであろう? それは決して悪くない心掛けだ。操縦者はAIも含めてこの私が何とかする。お前は2・3機ほど此奴を量産しろ」
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