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第1部 風の担い手
第5話 "侯爵"の娘が、男連れで帰って来た
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大きな川を渡り切るとすぐ右側に、とても懐かしい目的地の看板が見えてくる。
───良かったぁ……久しぶりだったけど無事に辿り着いたよぉ………。
ウインカーを右に入れて一時停止。徐行で大きな駐車場を進むと『BIKE Only』の書き文字が見えた。
そこへ、そろりそろりとDU◇Eを駐輪させる………んっ? まだお腹辺りの締め付けが………。
「…………あっ、ご、ゴメンッ!」
慌てて風祭君が両腕を引っ込める。緊張して離すのを忘れただけだろう。私は気にしてないけど彼の方は、とてもバツが悪そうな顔で頭を下げる。
「わ、私こそごめんねぇ。初めてのバイク2人乗りなのに40分も休みなしで走っちゃて。あ、遠慮しないで言ったの私だから本当に気にしないでね」
それにしても此処は何にも変わってないなあ……良かった、嬉しいなあ……。
「こ、此処は?」
「私が行きつけにしてるライダーズカフェ。別に車で来ても良いお店だけど、バイク乗りがお茶しに来る処だよ」
説明しながら建物の脇に在る外階段へと案内する。1階は道の駅、私達が行こうしてるお店は2階に在る。
「ライダーズカフェ………。えっ? 今、確かに行きつけって言った?」
「流石、鋭いね。そ、私確かに転入生だけど、訳ありで実は出戻りなの」
「あっ、成程……」
ポンッと手を叩いて納得してくれた。出戻りの訳は………今、話してもしようがないかな。
可愛い木造の階段を2人で昇ろうとしたその時………私は思わず後ろに振り返り、傾き加減で駐車しているDU◇Eの方を返り見た。
───楽しかった、本当に楽しかった。初めての二人乗り、正確には私が後ろだったことはあるけど全然違ったっ!
「………ど、どうかした?」
「あ、ううんっ。ゴメンッ、行こっ、何でもないの」
4年前と何も変わっていない階段を軽やかな気分で上がる。そぅ………何にも変わっていないのに、この高ぶりは一体何?
「おおっ………」
「うわぁ、良い眺めぇ………」
階段を昇り切ると20人位は座れそうなテラス席が出迎えてくれる。それを勿論私は、知っていた。
だけどそのテラスの下、金色の稲穂達が私達の下でユラユラと揺れている。地平線の彼方まで広がっていた。
「………その者蒼き衣を纏いて金色の野に降り立つべし………」
「………?? ポエマーかな?」
突然、風祭君が老婆のような声で訳の判らないことを言うので、私はすっかり驚いてしまった。
「な、な、な、な、何でもないっ! き、気にしないで………」
目一杯拡げた両手を慌てて振って返された。うーん……どっかで聞いたことがあるような気も、しないような気も………。
それはそれとして、何度も訪れていた筈なのに、この風景は私ですら知らなかった。
「………もう週末には稲刈りが始まるんですよ、ってアレレ? えっ、ひょっとして君は……」
その謎解きは食器を片付ける店のマスターが、アッサリと応えてくれた。稲刈りは秋だと思い込んだら見れない景色ってことみたい。
「お久しぶりですマスターっ! 爵藍颯希っ、ただいま戻って参りましたぁ!」
「お、おぃっ、やっぱり侯爵んとこのっ!? 大きくなったなあ……。彼氏のバイクで来たのかい?」
「うんもぅっ! 一体何処見て大きくなったって言ってるのっ! それに私のバイクで来たんだからっ!」
マスターが私のことを上から下まで見ながら意味深な笑いで言うから勢い込めて突っ込みを入れた。
───か、彼氏って………。や、やっぱり、そんな風に見えるのかしら?
「ま、待って……待って下さい。色々と突っ込み処、何なら数え役満位あるんですが……」
置いてきぼりな感じの風祭君が片手をゆっくり持ち上げ主張してきた。
───う、うんっ………そ、そうだよねえ。言いたいことてんこ盛りだろうなあ、アハハ………。
「判るっ! 判るけど取り合えず注文が先っ! マスター、彼にインドネシアマンデリン。私はいつものカフェオレねっ」
「ま、待って………。僕ブラック飲めないんだけど……」
風祭君が申し訳なさそうにブラックが飲めないことを言ってきた。そんな貴方にこそ敢えて私は勧めてみたいっ!
「まあ騙されたと思って飲んでみなさい、だって私の驕りだよっ! あ、それから『昭和風濃厚プリン』2つ。宜しくお願いしまーすっ」
「マンデリン、カフェオレ………でプリン2つね。少し風が出てきたから今日はテラスじゃなくて店ん中の方が良いかもよ」
私達は金色の野に後ろ髪を引かれながらも、言う通りに入店した。
「うわぁ……バイクの写真や本で一杯だな」
初めて来た喫茶店、増してや多分ライダーズカフェなんて人生初だろうからキョロキョロ見たい気持ちも十二分に判るけど………。
───可愛いなぁ、思わずこっちまで何だかホッコリしちゃう。朝初めて見たときの眠そうな彼が別人みたい。
珈琲を挽く音、この香り………。いきなりちょっと遠出過ぎるかなあって思ってたけどやっぱり来て良かった。
「と、処で爵藍さん………侯爵の娘って一体何?」
店内探索を終えた風祭君が私の隣のカウンター席へ、少し遠慮がちに座る。もうとっくにあれだけ密着したのに何だか今さらって感じで笑いそうになる。
そして訊ねたいことが山程あるんだろけど、先ずはそこかあ………ってなった。
───良かったぁ……久しぶりだったけど無事に辿り着いたよぉ………。
ウインカーを右に入れて一時停止。徐行で大きな駐車場を進むと『BIKE Only』の書き文字が見えた。
そこへ、そろりそろりとDU◇Eを駐輪させる………んっ? まだお腹辺りの締め付けが………。
「…………あっ、ご、ゴメンッ!」
慌てて風祭君が両腕を引っ込める。緊張して離すのを忘れただけだろう。私は気にしてないけど彼の方は、とてもバツが悪そうな顔で頭を下げる。
「わ、私こそごめんねぇ。初めてのバイク2人乗りなのに40分も休みなしで走っちゃて。あ、遠慮しないで言ったの私だから本当に気にしないでね」
それにしても此処は何にも変わってないなあ……良かった、嬉しいなあ……。
「こ、此処は?」
「私が行きつけにしてるライダーズカフェ。別に車で来ても良いお店だけど、バイク乗りがお茶しに来る処だよ」
説明しながら建物の脇に在る外階段へと案内する。1階は道の駅、私達が行こうしてるお店は2階に在る。
「ライダーズカフェ………。えっ? 今、確かに行きつけって言った?」
「流石、鋭いね。そ、私確かに転入生だけど、訳ありで実は出戻りなの」
「あっ、成程……」
ポンッと手を叩いて納得してくれた。出戻りの訳は………今、話してもしようがないかな。
可愛い木造の階段を2人で昇ろうとしたその時………私は思わず後ろに振り返り、傾き加減で駐車しているDU◇Eの方を返り見た。
───楽しかった、本当に楽しかった。初めての二人乗り、正確には私が後ろだったことはあるけど全然違ったっ!
「………ど、どうかした?」
「あ、ううんっ。ゴメンッ、行こっ、何でもないの」
4年前と何も変わっていない階段を軽やかな気分で上がる。そぅ………何にも変わっていないのに、この高ぶりは一体何?
「おおっ………」
「うわぁ、良い眺めぇ………」
階段を昇り切ると20人位は座れそうなテラス席が出迎えてくれる。それを勿論私は、知っていた。
だけどそのテラスの下、金色の稲穂達が私達の下でユラユラと揺れている。地平線の彼方まで広がっていた。
「………その者蒼き衣を纏いて金色の野に降り立つべし………」
「………?? ポエマーかな?」
突然、風祭君が老婆のような声で訳の判らないことを言うので、私はすっかり驚いてしまった。
「な、な、な、な、何でもないっ! き、気にしないで………」
目一杯拡げた両手を慌てて振って返された。うーん……どっかで聞いたことがあるような気も、しないような気も………。
それはそれとして、何度も訪れていた筈なのに、この風景は私ですら知らなかった。
「………もう週末には稲刈りが始まるんですよ、ってアレレ? えっ、ひょっとして君は……」
その謎解きは食器を片付ける店のマスターが、アッサリと応えてくれた。稲刈りは秋だと思い込んだら見れない景色ってことみたい。
「お久しぶりですマスターっ! 爵藍颯希っ、ただいま戻って参りましたぁ!」
「お、おぃっ、やっぱり侯爵んとこのっ!? 大きくなったなあ……。彼氏のバイクで来たのかい?」
「うんもぅっ! 一体何処見て大きくなったって言ってるのっ! それに私のバイクで来たんだからっ!」
マスターが私のことを上から下まで見ながら意味深な笑いで言うから勢い込めて突っ込みを入れた。
───か、彼氏って………。や、やっぱり、そんな風に見えるのかしら?
「ま、待って……待って下さい。色々と突っ込み処、何なら数え役満位あるんですが……」
置いてきぼりな感じの風祭君が片手をゆっくり持ち上げ主張してきた。
───う、うんっ………そ、そうだよねえ。言いたいことてんこ盛りだろうなあ、アハハ………。
「判るっ! 判るけど取り合えず注文が先っ! マスター、彼にインドネシアマンデリン。私はいつものカフェオレねっ」
「ま、待って………。僕ブラック飲めないんだけど……」
風祭君が申し訳なさそうにブラックが飲めないことを言ってきた。そんな貴方にこそ敢えて私は勧めてみたいっ!
「まあ騙されたと思って飲んでみなさい、だって私の驕りだよっ! あ、それから『昭和風濃厚プリン』2つ。宜しくお願いしまーすっ」
「マンデリン、カフェオレ………でプリン2つね。少し風が出てきたから今日はテラスじゃなくて店ん中の方が良いかもよ」
私達は金色の野に後ろ髪を引かれながらも、言う通りに入店した。
「うわぁ……バイクの写真や本で一杯だな」
初めて来た喫茶店、増してや多分ライダーズカフェなんて人生初だろうからキョロキョロ見たい気持ちも十二分に判るけど………。
───可愛いなぁ、思わずこっちまで何だかホッコリしちゃう。朝初めて見たときの眠そうな彼が別人みたい。
珈琲を挽く音、この香り………。いきなりちょっと遠出過ぎるかなあって思ってたけどやっぱり来て良かった。
「と、処で爵藍さん………侯爵の娘って一体何?」
店内探索を終えた風祭君が私の隣のカウンター席へ、少し遠慮がちに座る。もうとっくにあれだけ密着したのに何だか今さらって感じで笑いそうになる。
そして訊ねたいことが山程あるんだろけど、先ずはそこかあ………ってなった。
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