【完結】🧚‍♀️カクヨムコン10中間選考突破作品・マーダ『森の護り人・ファウナ』-ローダ第零章-

🗡🐺狼駄(ろうだ)

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第9部 エルドラ包囲網

第92話 攻め落とすならどちらだ?

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 此処は地球の衛星軌道上。22世紀と言えどこの様な僻地を人の住めない場所を人生の拠点とする者はごく少数派である。

 やはり人は自然の地面重力恵みを欲するのを未だ辞められずにいるのだ。

「──レヴァーラの次は連合国軍。あんな何も持たない異能なんて持たない烏合うごうしゅうが、こともあろうにこの僕とパルメラだけにゆるされた星の屑を使うだなんで…」

 No1、エルドラ・フィス・スケイルは、ファウナ・デル・フォレスタの思い描いたままの様子で激怒していた拳を握り震えていた。まるでエルドラの居所でさえも見透か監視しているかの様に。

 この男、相も変わらずな姿全裸。しかも宇宙の闇を投影したかの様な部屋で、またもやベッドに座り親指をかじり続けている。これが彼の日常予定調和であるらしい。

 ファウナが笑い飛ばしながら言った『子供みたいな判りやすい可愛げ』すら、的を射抜いているのである。

 チリンッ。

 白猫ジオがそんな準飼い主自分より下の周囲を彷徨うろつあおりをかける。そして本来の飼い主パルメラの元へしっぽを小刻み歓喜をに震わせ表現しながら向かう。

「そんなイライラしてもええ良いことないでぇ。第一此処宇宙に居れば向こうは下界地球や。どうせ手も足すらも出せへんて」

 白い陶器カップカモミール心が安らぐの香り漂う効果の在るハーブティーを注いだ物を差し入れるパルメラの気遣きづかい。

「パルメラ……いつも済まない」

 余り良い眠りを得られてないのか? 少々焦燥しょうそう気味な翠眼すいがんと感謝を混ぜ込んだ顔でそれを受け取り香りを楽しむ。

「確かに軍の犬共はあの屑の力天斬の力をにばかりご執心手に入れた喜びだけで此方まで頭を回せやしないだろうね。だけど流石にあのレヴァーラ達は力の真実に気付いた筈さ」

 エルドラはただの鬱憤うっぷん晴らしで満足などしてやいない。何しろヴァロウズNo1の実力者、己の欠点とて知り抜いている。

「悔しいけど向こうレヴァーラは吸血鬼でいう処の真祖しんそなんだよ。黙って指くわえている訳がないじゃないか」

 ──。それを子供の様に繰り返してるのはむしろ自分の方だと言える。

「せやけど焦りは禁物や。──そないな些細ささい、ウチの愛する男は、まとめて吹き飛ばすやろ? それに此方かて心通じ合える星が二つもあるんや」

「──せや

 エルドラの隣に座り、そのたくしい胸に自分の身体を預けたパルメラ。左胸心臓の辺りになまめかしく褐色かっしょくの指をわせる。

 パルメラの膝枕定位置に座った白猫ジオが人語で茶目っ気を見せた。

 滅多に顔を緩ませないエルドラが「フフッ……やはり君にはかなわないな」と僅かばかりの笑顔を返した。

 ◇◇

 一方此方はフォルテザに居を構えるレヴァーラ達のアジト。夕飯時位、皆が肩寄せ食事と語らいに時間を費やすのが日課に成りつつある。

 その仲良き間柄あいだがらにあって一際ひときわ目立つは、近過ぎる距離でレヴァーラの隣に座るファウナ。そしてこの間の壮絶そうぜつなる挙式以来、デラロサ夫妻も負けじと愛を見せつけている。

「デラロサの様。もう部屋は同じ1つなんでしょ? 食事位お部屋まで配給ルームサービスさせましょうか?」

 近隣きんりんに座ったリディーナが『もう御二人だけで夕食を楽しんではいかが?』と提案している。少しだけ皮肉も込めてる。確かにまあ初々ういういしい夫婦ぶりを見せ付けられては言いたくもなろう。

 グイッ。

「何を言うんだリディーナ殿。命を張る仲間達と少しでも交流をはかるのは軍人の務め領分。しかも俺達二人は後釜合流組だからな」

 大ジョッキに注いだビールを一気で飲み干した後、赤ら顔のアルが真面目くさった顔で返した。酔った勢いで言われてしまうと説得力に欠けるというもの。

 アル・ガ・デラロサ32歳。酒は好んで滅法めっぽう強いが、顔の色だけは全く隠せない。隣で少しだけ同じモノビールご相伴にあずかるグラス一杯だけ頂くマリアンダ夫人は白い顔だ。

 冷ややかな視線で見つめる周囲の者共の理由なき女の直感共感

 ──恐らくデラロサ夫の方が近い内、しりに敷かれるでしょうねだろうなぁ

 アルは非常に出来る男だが豪胆良い加減が過ぎるきらいがある。真面目を絵に描いた様なマリアンダが操り人形と化すのが具合が良いと決めつけていた。

「──で? 取り合えず攻め落とすならどちらだと思っている?」

 少し主語の足りないオルティスタが様子見な文句のを刺す。この状況で『どちらだ?』と問われたらエルドラ組か連合国軍かの二択であること位、想像に容易たやすい。

 腕を失ったNo2ディスラドは一旦蚊帳かやの外。アレも充分脅威きょういなのには違いないが、世界をすべからずすべす勢いな連中の方が先手を打つべきだと皆が思っていた。

「エルドラ……であろうな」

 短くレヴァーラがポツリとつぶやく。

「それは何故ですか?」

 此方も言葉少なめなマリアンダの追及。マリアンダやアルの立場的には、元鞘の怪しい動きも気になる処だ。

「居場所は知れずとも実は勘づきつつある。私の発言の意図する処、貴様にすら判る筈だ」

 同じ元軍属のレグラズ・アルブレンによる冷たい横槍。しかしこれはレヴァーラが口で説明するより寧ろ伝達しやすいというもの。

 レグラズの切り込んだ台詞にハッと息飲むマリアンダ──。

 やはり何のことだか直ぐに察したのである。人工知性体の塊で成る偽物の天斬共による襲来。これを真っ先に感知したのがこの覚醒したレグラズであるという事実だ。

 閃光エンツォこの元軍人レグラズですら気付いたのだ。

 もっと大量の同じ物を操れる持っているリディーナやレヴァーラ。何ならNo1エルドラより格下のヴァロウズナンバーズでさえ同じ高見に登れてもおかしくない。

 特に現時点で最も閃光エンツォ機敏きびんに扱えるレヴァーラか、あるいは戦闘服バトルスーツを設計製造したNo0リディーナ解析力かいせきりょく。これらをたくみに稼働出来ればエルドラ包囲も夢ではなくなる筈だ。

「──成程、流石現人神レヴァーラと言わせて頂こう。それなら星の屑を解析してる軍の御偉おえらがたも同じく探せるって訳だな」

「アル──!?」

 既に3杯目を一気飲みしていたアル旦那。もはやしたたかに酔いどれと化し、真面目な話に付いて来れない。そんなタカをくくっていたマリー

 キッチリ話を聞いてた上で、綺麗なまとめ話までされては驚かずにはいられなかった。そして追加の4杯目をまたもグィッと飲み干し、ダンッとテーブルを景気良く叩きつけた。
 さらにクイッとマリーの腕を取り「良い話を聞かせて貰った! これにて失礼する!」と勢いを残して、後はサッサと自分部屋生活圏へ、夜のお楽しみ宜しく退散していった。
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