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第9部 エルドラ包囲網
第98話 武士に二言なしッ!
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対エルドラ・フィス・スケイル決戦兵器『Meteonella』の初戦から一夜が明けた。
戦いが終わっても昂ぶる気持ちで、とてもはしゃいだファウナ・デル・フォレスタで在ったが明け方近く、ようやく疲労が躰に危険を出した様だ。
今はレヴァーラの寝所にて安らかな寝息を立てている。共に隣で眠っているレヴァーラも緩んだ顔だ。元鞘にどうにか戻れて落着きを取り戻した。
未だ完徹してるのはNo0のリディーナだ。顔を洗う余裕もなく、避難警戒解除の通達にMeteonellaのチェック。仕事する度業務が積み重なる。出来過ぎる者の宿命と言わざるを得ない。
衛星カメラの中継を遮断した故、昨夜の情報が外に漏れた可能性は限りなくゼロに近しい。けれどもこの慌ただしい動きに何かが起きた事を察知されたに決まっている。軍は元よりNo1にも。
中間職の悩みの種が尽きるのは未だ訪れそうにない。しかしイレギュラーなディスラドの介入により、自分達に取って頼みの綱というべきMeteonellaの貴重なデータが取れたのは不幸中の幸いである。
「──処で此奴が如何に凄いかは理解した。だがどうしてこれが対エルドラ決戦兵器なのかまるで判らん」
オルティスタとラディアンヌ──。結局寝つけず完徹している。長女が汗だけ流した余りに無造作さな姿で第2格納庫へ戻りながら言う。水も滴る適当な女。
「ン~っ、確かにそうなんですよね。触れる処か居所すら判らない相手をこの黒猫がどうやって引っ搔くのやら……」
そんな女を捨ててる痛々しい姉を何とも思わないラディアンヌ。もう日常過ぎる光景なのだ。
「──な、何だァ此奴はっ!?」
騒がしい奴が来た。そう思うだけでまるで動揺しない半裸同然のオルティスタ。『男は随分御無沙汰』と戯けるのなら嘘でもそれらしき反応をすべきだ。
デラロサの驚きは二重で在る。そもそもこの格納庫の存在を知らなかった。そしてあからさまに人智を超えた存在を見せ付けられたという2点。
前者はリディーナが自分の趣味を誰にも見せたくなかっただけだ。作りかけの上、完成するか危ういスクラッチモデル。そんな中途を覗かれるのは、或る意味裸を見られるよりも羞恥だ。
「此奴が例の肝煎りらしいぞデラロサ」
本当に物怖じ一つしないオルティスタである。自ら呼んだデラロサの視線を釘付けにする。
「そうか──此奴は実にエロいな。何ともけしからん」
「──っ」
デラロサも良い加減少しは新婚たる礼儀を示すべき。揺れ動く大層大きなものから全く目を離さずシレッとしている。
この目に余る両者のやり取り──。
ラディアンヌが片手で両目を押さえ頭を垂れつつ首を振った。もう互いに此処まで堂々過ぎると、デラロサの『エロい』は黒光りする黒猫ちゃんを指す冗談にすら思いたくなる。
「──で、此奴一体誰が乗るんだ」
これはさも当然なるデラロサの質問なのだ。それなのにラディアンヌが頭の悪い解釈を続けてしまう自分に勝手な恥じらいを感じ赤くなった。
「レヴァーラ様とファウナの愛の巣だ。2人だけが繋がれる。お前には恐らく動かす処か、あやす事すら適わんだろうな」
オルティスタがレヴァーラ様と戯けて見せる。次いでにデラロサを軽く煽った。
「だろうなぁ……。此奴にはそんな匂いが在る」
腕を組みつつ本当に匂いを嗅ぐ仕草を見せるデラロサである。
──もぅ止めなさい自分。これが全部隠語に聴こえるとか良い加減、貴女もどうかしてるわ。
完徹だから夜の気分を未だ引き摺っている。そう身勝手に思い込もうと決めたラディアンヌである。
「──何馬鹿言ってんのよアンタ達」
Meteonellaの簡単なチェックを終えたリディーナが余計な割り込みで茶々を入れる。
「え……」
「あ、当たり前の会話をしているつもりだが……」
「……」
意味の判らぬ拾い方をされ戸惑うオルティスタとデラロサ。ラディアンヌがいよいよ顔を両手で隠した。
「ハァ……こんな物を持ち出されたら、いよいよ俺達の出番無くなるかもな」
オルティスタが本音と共に溜息を吐く。
「俺達とは何だぁ! 生身で戦うお前と一括りにすんじゃねぇ! 俺とマリーには人型兵器が在る!」
この発言に盾突くデラロサ。半裸のオルティスタへ拳を突き出し突っかかって往く。その気がないにせよこれは余りに近過ぎる距離。
「悪いがあの玩具とは次元が違う動きをしていた。このラディも言ってたぞ。──ってお前等、二人してあの騒動で良く寝られたものだ」
──お、お願いだから話に巻き込まないでくださいよぉぉ。大体『二人して寝られた』とかそんな煽り止めて下さいぃ。
「オルティスタさん、それは気が早過ぎてよ。貴女達が居なくちゃ一体誰が裸の王様を守るって言うのよ。ねぇ……将棋好きなデラロサ様」
2人まとめて窘めるリディーナなのだが、もう何聴いても隠語として直訳される女武術家にまで気が回らない。
「そいつは結構な話だ。しかしだなリディーナ博士。良い加減、俺とマリーをただの歩じゃなく飛車角に成る機会を与えて欲しいもんだぜ」
親指を立て自分を指しつつ踏ん反り返るアル・ガ・デラロサ。彼は『俺とマリー』と確かに言った。
空挺部隊上がりの凡人共が中核に成る為には当然、第1格納庫で寝ている2機をどうにかしろと訴えている。しかもこの場に居ない嫁を勝手に巻き込んでいる。
いつもの茶目っ気な顔で真っ直ぐリディーナ博士の目を刺す。この男、冗談も本気も大抵こんな体だから、ただのCrazyなのか実は正気なInsaneなのか判別しづらい時が在る。
「アル・ガ・デラロサ? それ意味承知の上で、この私を煽ってると理解して良いのかしら?」
うって変わってギロリッと銀色の短髪を睨むリディーナ博士。早い話が『俺達の軍試作機と正式採用機にもあの愛らしい黒猫と近しい改造をしろ』彼はそう要求している。
「本当に良いの? 貴方達の玩具がまともにいう事効かなくなっても私責任取れなくてよ?」
「武士に二言なしッ!」
無駄だと知りつつ最終確認を投げ込むリディーナ。彼女に取っても興味深い提案には違いないのだ。武士処か日本人ですらないデラロサが気合いだけの日本語で間髪入れず応答した。
戦いが終わっても昂ぶる気持ちで、とてもはしゃいだファウナ・デル・フォレスタで在ったが明け方近く、ようやく疲労が躰に危険を出した様だ。
今はレヴァーラの寝所にて安らかな寝息を立てている。共に隣で眠っているレヴァーラも緩んだ顔だ。元鞘にどうにか戻れて落着きを取り戻した。
未だ完徹してるのはNo0のリディーナだ。顔を洗う余裕もなく、避難警戒解除の通達にMeteonellaのチェック。仕事する度業務が積み重なる。出来過ぎる者の宿命と言わざるを得ない。
衛星カメラの中継を遮断した故、昨夜の情報が外に漏れた可能性は限りなくゼロに近しい。けれどもこの慌ただしい動きに何かが起きた事を察知されたに決まっている。軍は元よりNo1にも。
中間職の悩みの種が尽きるのは未だ訪れそうにない。しかしイレギュラーなディスラドの介入により、自分達に取って頼みの綱というべきMeteonellaの貴重なデータが取れたのは不幸中の幸いである。
「──処で此奴が如何に凄いかは理解した。だがどうしてこれが対エルドラ決戦兵器なのかまるで判らん」
オルティスタとラディアンヌ──。結局寝つけず完徹している。長女が汗だけ流した余りに無造作さな姿で第2格納庫へ戻りながら言う。水も滴る適当な女。
「ン~っ、確かにそうなんですよね。触れる処か居所すら判らない相手をこの黒猫がどうやって引っ搔くのやら……」
そんな女を捨ててる痛々しい姉を何とも思わないラディアンヌ。もう日常過ぎる光景なのだ。
「──な、何だァ此奴はっ!?」
騒がしい奴が来た。そう思うだけでまるで動揺しない半裸同然のオルティスタ。『男は随分御無沙汰』と戯けるのなら嘘でもそれらしき反応をすべきだ。
デラロサの驚きは二重で在る。そもそもこの格納庫の存在を知らなかった。そしてあからさまに人智を超えた存在を見せ付けられたという2点。
前者はリディーナが自分の趣味を誰にも見せたくなかっただけだ。作りかけの上、完成するか危ういスクラッチモデル。そんな中途を覗かれるのは、或る意味裸を見られるよりも羞恥だ。
「此奴が例の肝煎りらしいぞデラロサ」
本当に物怖じ一つしないオルティスタである。自ら呼んだデラロサの視線を釘付けにする。
「そうか──此奴は実にエロいな。何ともけしからん」
「──っ」
デラロサも良い加減少しは新婚たる礼儀を示すべき。揺れ動く大層大きなものから全く目を離さずシレッとしている。
この目に余る両者のやり取り──。
ラディアンヌが片手で両目を押さえ頭を垂れつつ首を振った。もう互いに此処まで堂々過ぎると、デラロサの『エロい』は黒光りする黒猫ちゃんを指す冗談にすら思いたくなる。
「──で、此奴一体誰が乗るんだ」
これはさも当然なるデラロサの質問なのだ。それなのにラディアンヌが頭の悪い解釈を続けてしまう自分に勝手な恥じらいを感じ赤くなった。
「レヴァーラ様とファウナの愛の巣だ。2人だけが繋がれる。お前には恐らく動かす処か、あやす事すら適わんだろうな」
オルティスタがレヴァーラ様と戯けて見せる。次いでにデラロサを軽く煽った。
「だろうなぁ……。此奴にはそんな匂いが在る」
腕を組みつつ本当に匂いを嗅ぐ仕草を見せるデラロサである。
──もぅ止めなさい自分。これが全部隠語に聴こえるとか良い加減、貴女もどうかしてるわ。
完徹だから夜の気分を未だ引き摺っている。そう身勝手に思い込もうと決めたラディアンヌである。
「──何馬鹿言ってんのよアンタ達」
Meteonellaの簡単なチェックを終えたリディーナが余計な割り込みで茶々を入れる。
「え……」
「あ、当たり前の会話をしているつもりだが……」
「……」
意味の判らぬ拾い方をされ戸惑うオルティスタとデラロサ。ラディアンヌがいよいよ顔を両手で隠した。
「ハァ……こんな物を持ち出されたら、いよいよ俺達の出番無くなるかもな」
オルティスタが本音と共に溜息を吐く。
「俺達とは何だぁ! 生身で戦うお前と一括りにすんじゃねぇ! 俺とマリーには人型兵器が在る!」
この発言に盾突くデラロサ。半裸のオルティスタへ拳を突き出し突っかかって往く。その気がないにせよこれは余りに近過ぎる距離。
「悪いがあの玩具とは次元が違う動きをしていた。このラディも言ってたぞ。──ってお前等、二人してあの騒動で良く寝られたものだ」
──お、お願いだから話に巻き込まないでくださいよぉぉ。大体『二人して寝られた』とかそんな煽り止めて下さいぃ。
「オルティスタさん、それは気が早過ぎてよ。貴女達が居なくちゃ一体誰が裸の王様を守るって言うのよ。ねぇ……将棋好きなデラロサ様」
2人まとめて窘めるリディーナなのだが、もう何聴いても隠語として直訳される女武術家にまで気が回らない。
「そいつは結構な話だ。しかしだなリディーナ博士。良い加減、俺とマリーをただの歩じゃなく飛車角に成る機会を与えて欲しいもんだぜ」
親指を立て自分を指しつつ踏ん反り返るアル・ガ・デラロサ。彼は『俺とマリー』と確かに言った。
空挺部隊上がりの凡人共が中核に成る為には当然、第1格納庫で寝ている2機をどうにかしろと訴えている。しかもこの場に居ない嫁を勝手に巻き込んでいる。
いつもの茶目っ気な顔で真っ直ぐリディーナ博士の目を刺す。この男、冗談も本気も大抵こんな体だから、ただのCrazyなのか実は正気なInsaneなのか判別しづらい時が在る。
「アル・ガ・デラロサ? それ意味承知の上で、この私を煽ってると理解して良いのかしら?」
うって変わってギロリッと銀色の短髪を睨むリディーナ博士。早い話が『俺達の軍試作機と正式採用機にもあの愛らしい黒猫と近しい改造をしろ』彼はそう要求している。
「本当に良いの? 貴方達の玩具がまともにいう事効かなくなっても私責任取れなくてよ?」
「武士に二言なしッ!」
無駄だと知りつつ最終確認を投げ込むリディーナ。彼女に取っても興味深い提案には違いないのだ。武士処か日本人ですらないデラロサが気合いだけの日本語で間髪入れず応答した。
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