【完結】🧚‍♀️カクヨムコン10中間選考突破作品・マーダ『森の護り人・ファウナ』-ローダ第零章-

🗡🐺狼駄(ろうだ)

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第12部 混沌と入り混じる敵味方の思惑

第154話 救われない最期

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 レヴァーラ・ガン・イルッゾが実の母親として、娘ゼファンナを利用された怒り。世界を破滅はめつ寸前まで追い込んだ軍の鬼将──ガディン・ストーナーの行いを糾弾きゅうだんした。

 それを聞いた妹ファウナ・デル・フォレスタ──。レヴァ母親の愛を独り占め出来ない……当然の事実を受け容れられない己の強欲に涙した。

『──これまた不思議な事を言う。ごみ幾らいくら増えた処で塵でしかない。私は進化するであろう人間達を篩いふるいに掛けているのだよ』

 ガディン・ストーナーという無力な独りきりの老人が、現人神あらひとがみ祀りまつり上げられてるレヴァーラ神へ、未だ上からの物言い。神と対等タメを張れてることでたかぶっている。

『それこそ異な事を口にするものだ。貴様にそんな権限が在るというのかこの俗物ッ!!』

 マーダレヴァーラ、実は此方とて耳が痛い。他人の身体を借りた仮初かりそめが神を語り、神に相対あいたいしようとする愚者ぐしゃ裁こうさばこうと言うのだ。

 パチンッ。

『──ファウナ……済まない』

 無線を全回線から直通へ切り替えた上でのレヴァーラからの謝罪。二枚舌で敵の大将と大いに舌戦ぜつせんを繰り広げてる者とは別人の如き力無き声が、ファウナ機の操縦席コックピット内に響く。

母さんマム?』

 操縦席シートに涙をなすり付けてたファウナの顔色が変わる。母親レヴァが自分にしか出来ない頼み事をする。手の平返しで傾聴けいちょうするのだ。

『恐らくこやつの仕掛けは真実。ならばおいそれと派手に爆発させる訳にはゆかぬ。……手伝って欲しい』

 デラロサ隊長から聞いたED01-Rストーナー機の真下に仕掛けられたという爆発物の話。

 こんな気狂いガディン・ストーナーならやりかねない。大事な味方をこんな愚者Foolと巻き添えだなんて到底とうてい容認出来る訳ない。

『今やこの隊列、私はおろかデラロサのものですらない。残酷だがファウナ、お前が指揮を取れ。9番目アノニモ10番目ジレリノ言の葉風の便りで伝令するのだ』

 レヴァーラ、自分には指揮する資格がないと敢えて言ってのける。それを知った上、順列No呼称こしょうする軽薄けいはく

『──わ、判ったわ』

 涙をそでぬぐいながら従順じゅうじゅんたる兵としての応答。流石天然のファウナ、切り替えが早い。

『後はアル・ガ・デラロサ大尉のに全てをけよう』

 戦場に於ける経験値豊かなであれば、敵機を爆散させず殺ってくれるに違いない。正直な話、自分はおろか誰にでも頼めそうなトドメ楽な仕事

 ──されど此処で引き金を引くべきはアル・ガ・デラロサであるべきだ──

 御膳立おぜんだてを整えてまでそうすべきだとレヴァーラは断定した。人の造りし意志を持った人工知能……押し付けの気遣いきづかいという人間じみた判断。

 ▷▷アノニモ、ジレリノ、貴女達にしか出来ない仕事を依頼する。

 風の精霊達が暗殺者アサシンの女と罠使いトラッパーの耳元で囁きささやき伝える。我々のファウナは御願いではなく命令を告げて来た。

 音無しのジレリノ機。応答なしで人工知性体入りのアンカー付きワイヤーを射出。但しストーナー機を切り裂く為ではない。逃走出来ぬようグルグル巻きで拘束こうそくした。

 艶消し黒のアノニモ機──もう……

 ED01-Rストーナー機の天井、景色に溶け込み影無き場所から影の様に出現する。両刀の刃すら黒い。

 ザシュッ!

 影使いのアノニモ、面目躍如めんもくやくじょ。敵のED01-Rの操縦室コックピットハッチだけを斬り裂き剥き出しむきだしにした。

 、慌てふためくかと思いきや意外なる冷静沈着。まるで斬首最期を望む侍の如き出で立ち。やはり覚悟を決めていた。

 向かい側の同じく中身なアル・ガ・デラロサ。既に拳銃の準備セーフティー解除は終えている。後は嘗てかつての友の眉間急所に狙いを定め叩き込むだけ。

 大層贅沢ぜいたくなるひのき舞台を味方はこしらえてくれた。思わず苦笑したくなる程に。しかし葬送おくるのは友であり、恩人である人物。笑ってなどいられない。──手が震える。

 パキュッ!
 バキューンッ!

 これはどうした事であろうか。銃声は二回、地下基地内に鳴り響く。同時だが銃声がまるで異なる。見事ガディン・ストーナーの眉間みけんとらえた。

 涼し気な笑顔の老人の死体、の一撃による勢いで己が機体の操縦室に叩き付けられ跳ね返る。機体の外へ押し出され、憐れ床へと頭から落ちた。

「──マリーッ!? お、お前何てことをッ!!」

 驚き身を乗り出して後ろの蒼白い機体を見やるデラロサ。漂うただよう二つの火薬の匂いと薬莢やっきょうが落ち往く音。

 アルがマリアンダと視線を合わせる。まるでアルケスタ少尉時代の冷たき視線が跳ね返す。どさくさ紛れまぎれに自機の操縦室コックピットハッチを開き、昔ながらのライフル銃で狙撃手を完遂かんすいさせた。

大尉アル……失礼ですが貴方には正直出来ないと確信しました」

 冷たく言い放つマリアンダ・デラロサ少尉。後で夫からどんな咎めとがめを受けても構いやしない。

 ──アルが自身のケジメとして司令官ストーナー殿を葬送おくる?

 何故か愛する女性として許容出来なかったマリーなのだ。何とも可笑しな感情だと他人は思うかも知れない。

 ──嫉妬しっと。マリアンダの今の気分を一言で片付けるとするならこれだ。

 仮に夫が司令官ストーナー殿のとしよう。夫は生涯しょうがい、罪の意識でさいなまれるのが目に浮かんだ。そんなものを大事な夫に残留して勝手に逝くなど、妻として到底赦し難いゆるしがたい

 その点少尉のなら『さよならGood Bye』さも平然に邪魔者だと消せると思った。

 愛の形とは何ともし難い。綺麗な映画の様に『主人公ヒロイン:アル・ガ・デラロサ』というテロップを流す訳にはゆかない気分。

 寧ろむしろマリアンダ・少尉と悪役ヴィラン呼ばわりされた方がしっくりくるのだ。

 恐らくガディン・ストーナー自身も一番好きだった元部下のを望んでいたことだろう。最後の最期、思わぬ伏兵ふくへいに足元をさらわれた格好。

 その涼し気な末期の顔、彼は果たして自分を葬送おくったのがでないと気付いているのであろうか。今と為っては誰にも判らない。

『──任務完了。全機、撤退する!』

 声を震わし励まし隊長としての任を貫くつらぬくデラロサである。戦争になさけは無用の長物、彼自身が一番良く理解していた。

 終始無言で隊長の命に従う特殊空挺部隊。完全に掃き溜めはきだめだけと化した軍最高の機密基地を這いはい出るEL97式改エル・ガレスタの群れ。

 殆どほとんどがこの葬儀そうぎで見送る者のことを良く知らない。人付き合いで不意に冠婚葬祭へ呼び出された者達の気分など、たかが知れてる。

 母艦であるチェーン・マニシングが化けた白い竜に無事帰還を終えた。

 後始末はこの母艦のお仕事。高く空へ舞い上がった後、アビニシャンが示す基地最深部へ向け、巨竜の息ドラゴンブレスよろしく、最大出力の荷電粒子砲による光の筋を浴びせた。

 ガディン・ストーナーが自ら用意した棺桶基地火葬場大量の火薬。連合国軍最強最後の基地、何ともあっけない幕引き。地上に巨大な憐れな花火が咲いた。

 ──第12部 混沌と入り混じる敵味方の思惑 完──
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