【完結】🧚‍♀️カクヨムコン10中間選考突破作品・マーダ『森の護り人・ファウナ』-ローダ第零章-

🗡🐺狼駄(ろうだ)

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最終部 ファウナ・デル・フォレスタ

第198話 仕込み済みな魔術の種

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「あ、嗚呼……そ、そんな。あ、余りにも残酷過ぎるわ」

 事の重大さをようやく受け容れ、肩揺らし涙浮かべるMeteonellaメテオネラ操縦者パイロット、ゼファンナ・ルゼ・フォレスタ。

 ゼファンナ・ルゼ・フォレスタは、妹がマーダに取り込まれた生き地獄に心奪われ、閃光エンツォはおろか、操縦に意識を使う余裕などない。

 そして何より後部座席に居た森の女神、ファウナ・デル・フォレスタは、マーダの内に持って往かれこの世界軸から消失した。

 Meteonellaメテオネラ、完全に沈黙。操縦士パイロットが失われた以上、もはや二度と起動する機会が訪れるときは巡って来ない。

 涙が川の事始めである湧き水が如く、全く以って堰きせき止められぬゼファンナの哀しみ。

 彼女の脇、ディスラドこそ喪失そうしつしたがレヴァーラと実娘ファウナ。二人の女神を手にしたマーダ。数奇すうきな人生の巡りにさぞや御満悦ごまんえつしてると思いきや、様子が奇妙極まる。

「ア、アァ……ンッ。な、何だこれッ!?」

 未だ少年染みたアンドロイド姿のマーダが頭を抱え、何とも不可思議な喘ぎあえぎ入り混じる声音こわねもだえる。

 金色こんじきの輝きを散らし、床で転げ回るマーダ。短髪が急激に伸び始め、身体全体も膨らみ帯び始める。男性型アンドロイドであった筈の全身が、明らかに違う性別へ転じる。

「──こ、これはまさかッ!」

 服装こそ黒服男装なのだが、あからさまに丸みを帯びる様子。涙目で見つめるゼファンナは、確信に至る。

 ◇◇

 意識薄れ往くレヴァーラにファウナ・デル・フォレスタが森の魔導を用い、性別を超越ちょうえつした繋がりを成し得た時の話。

 レヴァーラが女性しか持ち得ぬ命の欠片かけらをファウナに与え、結果Meteonellaメテオネラの起動承認を達したクリアしたくだりは既に触れた。

 実の処ファウナもレヴァーラに同じ欠片かけらを与えていた。

 何しろファウナの方から接触を持ち掛け、意識の時間を引き延ばすべく精気を流し込んだのだから、寧ろむしろ必然と言える。

 二人は互いの欠片を交換し終えた次第。それはマーダがレヴァーラの意識を喰らい尽くした後も失せる事無く漂いただよい続けた。

 女性だけに赦されるとは一体何か──。

 嘗てかつてリディーナが『女性の方が染色体、X未知が多い優れた存在。男は子供すら』とレヴァーラをそそのかした例の

 何とも回りくどい言い回しなれど、男性のだけ。何とも歯切れ悪き隠語いんごめいた説明だが、最早もはや子供でも判る答え例え

 レヴァーラが実娘ファウナに残した命の欠片。
 逆にファウナが実母に与えし命の欠片。

 ファウナの欠片は取り込んだレヴァーラを通じ、マーダの意識へ影響を及ぼした。この先んじた仕掛けが誘惑ゆうわくもれあそばれ、好きに操られる流れへ通じた。

 さらにレヴァーラの欠片抱くファウナさえも余す処なく取り込み罠に堕ちる。Male男性が二人のFemale雌性体内胎内孕ませた潜ませた文字面もじづら通りの

 マーダは確かにレヴァーラの身体と能力を奪い去った。然しレヴァーラ×ファウナが宿やどした新しき命の形。鬼子別の個体として生涯しょうがい背負うせおう羽目に陥るおちいる

 何とも恐るべきファウナ・デル・フォレスタの執念しゅうねん
 レヴァーラに救命好意行為を施した際から、魔術Magic仕掛けは既に始まっていた。


 ◇◇

 パルメラ・ジオ・スケイルが召喚した殺戮さつりくの女神カーリーとデラロサ隊の戦闘。
 一見、デラロサ隊がカーリーの足止めに成功して押してる感じに見えなくもない。

 然し実の処、カーリーはおろか術者パルメラにも大した攻撃が通ってない。

 加えてオルティスタ機が全損ぜんそん。戦線復帰は恐らく不可能。他の連中もエネルギー回生する余裕がないのでBatteryバッテリー残量もジリ貧の一途いっと

 まともに動けそうなのはエネルギー供給自体謎のチェーン・マニシングだけの現状。起死回生の攻撃を決めねば悲惨ひさんな敗北の未来しか見えない。

「──母様。に変化したの始めてなので時間が掛かりました。ようやくこの身体に慣れてきました」

「ジオッ!? 大丈夫なん? う、ウチが調子に乗り過ぎたんよ」

 おぞましいカーリーからは想像つかない少年ショタ声がパルメラの耳に届く。

 母パルメラ、いつになく猛省もうせいしている。
 大量の魔力マナを消費した上、可愛い息子にまたもや無茶をいてる母失格の烙印らくいん

「それより母様の方は大丈夫ですか?」
「そ、それが流石に魔力マナ を使い過ぎたわ。多分大して残ってないんよ……」

 パルメラ、物凄ものすごく申し訳ない状況をジオへ率直に話す。

「判りました。後は僕にお任せあれっ! 父様と母様から頂いた誇りを僕は決して無駄にしないっ!」

 何とも頼もしいジオ息子の声。母は涙腺が壊れそうになる直前。
 ジオは嘗てかつてパルメラから教えられた殺戮の女神の造形イメージより深める事に専念した。

『──お、おぃアレ見ろよ』
『か、カーリーが変身変化してる

 先ずNo10ジレリノが異変に気付き、無線で仲間に伝言する。

 或るある意味ただの巨神であったカーリーの姿形が変化へんげしてゆく。

 東洋の白い着物風な衣装、血糊ちのりなのか或いあるいはそうした模様なのか。
 口からも血をらす、敵を喰い殺した伝承でんしょう彷彿ほうふつさせる。

 腰帯や頭部の飾りも赤中心だが、神らしい威厳いげんあふれる姿へと移り変わりを見せる。

『此処からが本番だ憐れな人間共』

 生まれ変わった感じのカーリー。
 デラロサ隊の絶望度合が増大の一途いっと辿たどる。

『ま、待て……あ、アレ浮いてる?』

 No9暗殺者アサシンアノニモが珍しく震えを交えた声を無線で皆に届ける。オルティスタ機とディーネ機が死に物狂いものぐるいで膝までへ沈めた。

『巨人族を倒すには先ず起動を奪うのが先決』

 誰が言ったかは知らぬ。だが的を得ている。
 人間ですら一番重い頭部を無意識の内、支えながら戦うものだ。

 増してや巨人、腕の長さリーチは無論出来るものなら斬り落とすべき。然し先ずは親指、足裏、膝といった具合に届く場所から撃ち滅ぼすべき。子供でも判る理屈

 地味だが確実。
 此方へ飛ぶように駆ける脚部をいだ上で、致命を狙うが必然。

 それにも拘わらず気球の上昇の様にゆっくりではあるが、折角せっかく仕掛けた足止めが台無しと化した。

 腰から下の着飾りがやけに映える。これまで殺害してきた者達の血で染め上げた? 無駄な妄想をはかどらせるのに充分過ぎる赤帯がヒラリ舞い踊る。

 殺戮の神。
 由来とはいえ、美意識を強調された処で相対あいたいする者共達の怯えおびえはかえって増すばかり。

『おぃ、あのむちみてぇな剣。いつの間にか直刀に変わってやがんぞ』

『恐らくどちらでも変幻自在。それより血糊ちのりと言うより剣自体が吸った血ぃ吐いてる感じ。やはりこれが本来の姿本気モード……』

 暗殺特化なジレリノとアノニモが無駄口を叩き続ける程の不気味さ加減。上半身すら返り血の量が増した。

 ズギューーーンッ!!

 独り、たった1名。恐れ知らずな荷電粒子砲が返り血だらけのカーリーの胸を穿つうがつ紛れまぎれもなくチェーンの射撃。

 されど余計に胸元の血が増量したのみに終わる絶望。己の血を見て増々戦意向上。戦場が全て死人と化すまで戦いを決して止めない狂戦士バーサーカーさま

 ガシャンガシャンッ!

「えっ?」

 戦意──そんな言葉さえ知らないてい白狼チェーンが、真っ白なEL-Galestaエル・ガレスタを強引に自分の背で担ぎかつぎ上げた。

 マーダ操る星の屑を見た途端とたん戦意喪失せんいそうしつしたラディアンヌ・マゼダリッサの省電力状態な機体を背に乗せたのである。
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