【完結】🧚‍♀️カクヨムコン10中間選考突破作品・マーダ『森の護り人・ファウナ』-ローダ第零章-

🗡🐺狼駄(ろうだ)

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最終部 ファウナ・デル・フォレスタ

第202話 殺戮の悪足掻き

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 ラディアンヌ・マゼダリッサ驚異の本気が殺戮さつりくの女神から怯えおびえの感情を呼び覚ます。

 腕を1本蹴り千切ったのち、電撃帯びた掌底しょうていをカーリーに押し付ける容赦なきラディアンヌ機。在り得ぬ痺れしびれで動き危ういカーリーと中の母親パルメラ

 やはりカーリーを空へ上げる行為は、パルメラの増長ぞうちょうが生んだ最悪手さいあくしゅと言わざるを得ない。或いあるいはNo6チェーン・マニシングの呼び込んだ奇跡がパルメラさえも狂わせたのか。

 何れにせよこのままでは、身動き取れず終いでデラロサ隊にGod殺しSlayerの称号が付くのも時間の問題。

 ──ま、負けないッ! 僕は誇り高き二人両親の子供。それに神の力カーリーを授かった存在。絶対負けるもんかッ!

 ググッ……。

 満身創痍まんしんそういジオ。ラディアンヌ機による掌底しょうてい打ちのてのひらをガシリッと掴みつかみ、感電している自らへ引き寄せる若い勇気無謀の為せる行為。

 これが大人であるなら感電元である敵を突き飛ばすのが先決。効率重視の思考が働く筈だ。

「ぐっ!? ま、まだそんな力が残って……」

 殺戮の女神から頬の寄せ合いチークダンスの誘い。途轍とてももない強引な恐怖のリード。

 豪傑ごうけつラディアンヌでさえこの誘い、安易あんいに断れない。『わらわと共に』そんな冗談では済まされないのだ。

 ズギューーンッ!

 女神からの誘いの手を正確無比せいかくむひ超電磁砲レールランチャーの狙撃が地上から貫くつらぬく。マリアンダ機、お得意の銃撃。

 それでも手を離さないカーリーの熱烈秘めた色仕掛けラブコール。さらに違う手握る剣をウルミに変え、恋路黄泉路の邪魔する不届きふとどき千万せんばんやから一閃いっせん

「えッ!? あの距離から届くだなんてぇ?」

 ──二度も同じ場所から狙撃などッ! このカーリー、舐めてなめて貰っては困るッ!

 これはマリアンダらしからぬMissTakeミステイク

 何しろ殺戮の女神が扱うウルミなのだ。人間の感覚値で間合いリーチ推し量るおしはかるのは迂闊うかつ過ぎた。機体の左腕部毎、超電磁砲レールランチャーを巻き取られ破壊に至る。

「ぐぅ、このまま共に地面へ落下するつもりですかッ!」

 流石のラディアンヌとてこれは実に面白くない。敵は自機の2倍ある上、執拗いしつこい兎に角とにかく神の依り代よりしろ。一緒に落ちても殺られるのは、自分ラディだけの未来が透けて見える。

 ザーッ!!

 ──あ、雨? うぐぁッ!

 余りに不自然極まる局地的ゲリラ豪雨がカーリーとラディアンヌ機だけに降り注ぐ。電気帯びたカーリーの感電力が水を通じてより高まる。

「これでも手を離さない、ならばッ!」

 豪雨が突如とつじょ巨大な氷柱つららに転じ、カーリーの全身を貫き始める。ラディアンヌ機を巻き込む恐れを勘定かんじょうに入れるゆとりは皆無。

 大気を操り雨雲を呼ぶ。此処までならNo7フィルニアの領分りょうぶん
 雨粒達を氷柱凶器に転じる作業だけは、これまでもNo8ディーネがになっていた。

 空気中の水蒸気水の精霊を集め、独りで完遂する水使いディーネの面目躍如めんもくやくじょ

 巨神過ぎる故、的が大きいあわれなカーリー。
 ラディアンヌ機を掴むつかむ手へ無数の氷柱が刺さり、手を離す羽目に陥るおちいる

 九死に一生を得るラディアンヌ機だが、握られた腕が潰れ破損はそんまぬがれなかった。

 銀色Silver緑迷彩ArmyGreen金色Goldなど百花繚乱ひゃっかりょうらんだったデラロサ異能空挺部隊。遂に無傷な機体EL-Galestaが残り僅か。水色のディーネ機、漆黒しっこくのアノニモ機だけ。後は何れも片腕を損傷そんしょうした。

「ガァァァッ!!」

 1忘れちゃいないか──?

 そう、1じゃなく1だ。間違っても1って呼んだらその頭毎、嚙みかみくだかれるから覚悟しな。

 カーリーの腕をへし折る大車輪の活躍見せたラディアンヌ機を拾いに掛ける自由なる白狼、チェーン・マニシング。人間らしいお喋りでなく、母親譲りの脚力と雄叫び気合の咆哮を大いに活かす。

 ガシャンッ!!

 跳ね上がり、甘噛みでラディアンヌ機を受け止めた意外なる器用ぶり。
 背に乗せると即、その場を離脱りだつ

 自由を戦場に持ち込むにはそれが戦況へ影響を及ぼさないのを証明出来る能力が不可欠。
 彼女には確固たるソレが存在していた。

「ラディアンヌ、大丈夫か?」
「ご、ごめんなさい。腕1本だけで……」

 カーリー4本の腕の内、1本。されどラディアンヌ機も等しく1本失う。実は世辞せじにも言えぬ結果。さも申し訳ない声でチェーンに謝るラディアンヌである。

「馬鹿言ってんじゃねぇよ! しびれたぜあの背面蹴りオーバーヘッドッ! やっぱ僕の目に狂いはなかったっ!」

 またも堕ち掛けてたラディアンヌの気分を上書きする勢いの圧倒的折角せっかくやる気再燃さいねんし始めたラディアンヌ魂の炎を焚付たきつける。

「──で、次はどうする?」

「これで此方も上が取れる事をあの神様に焼き付けました。次こそです、。貴女となら必ず成し遂げられます」

 白狼の質問へ敬称けいしょうをワザと略す心の通じ合える様をみせるラディアンヌ巧みたくみ。この両者、カーリー戦だけで随分ずいぶん心通わせられる相棒バディに成れた。

「──では手筈てはず通りに」
「よっしゃァァッ! 任せなッ!」

 ホバリング全開、ラディアンヌ機がチェーンの背中より離脱りだつ。瞬間宙へ上がる仕草をカーリーに見せ付ける無駄な動きフェイントモーション

 一方疲労知らずのチェーンがカーリーの足元をの様に駆け回る。ディーネ機が造った泥水、街の瓦礫がれき蹴散けちらし、否が応いやがおうでも殺戮の女神より視線意識を奪う気満々。

 ズギューーーンッ!! バシュッ! バシュッ!

 自由自在に駆けた後、あごの内に潜む荷電粒子砲とミサイルを、カーリーの上半身目掛け一斉掃射いっせいそうしゃ

 黄緑色の奴ラディアンヌ機が一瞬上昇するかと思いきや、足元巡る白犬チェーン血塗れみまみれの胸元狙う裏を取る動きポジションチェンジジオカーリー瞳孔どうこうが勝手に回る。

 スーッ。

 ──ッ!?!? !?

 地上へ舞い戻った黄緑色ラディアンヌ機が僅かなる一旦停止。カーリー、訳が判らぬ急変を感じる。残った左目を頼りに彼女は戦況を凝視ぎょうししている。血が入り邪魔するが如何どうにか機能して見えていた。

 視界の端々に映るうざったいと黄緑色の。それにもかかわらず、両者から重なる気配を感じてしまった。

 ラディアンヌ・マゼダリッサが、またしても
 チェーンの意識と同調シンクロ決める異端いたんなる呼吸術。
 遂に愛するファウナ様以外相手でこれを成し得た。

 一体自分は意識を向けるが正解なのか?
 巨大過ぎる脳裏に血が足りなくなる解せない。配信動画の様に一時停止&巻き戻し出来ぬもどかしさ。

『話を理解したけりゃ金を払って何度も劇場へ足を運びな』

 生中継LIVE解説動画怠けた気分切望せつぼうするカーリー。
 生き物の延長である彼女にそんな、望める訳ない。

 ヒュンッ。

 ──ワイヤー? クッソまたあの空色の奴か!

 カーリーの左足元巻き付くワイヤー。りる事無く罠使いジレリノ機射出しゃしゅつしたアンカー付きワイヤーだと思い込むのが当然の理解。

 また蹴散らすのみ、そんな軽い機体じゃ足枷重りになんか成れない。さっきのやり取りでさとれなかったか。

 だが間違っていた認識。
 それは地上に落ちてたワイヤーを拾ったラディアンヌ機が手ずから投げただけの代物偽物

 ガシャンッ!!

 ──ウグッ!? み、右ぃ!?

 息つく暇すら与えられぬ次なる連携。右足首上から異様に硬質な何かがぶつかる感触と足裏から刺す激痛。

 ラディアンヌ機、白狼チェーンと同調した幻覚まやかしとカーリーが失った右目部分の死角より回り込んだ位置から全霊込めた左の飛び蹴り。

 此方は一体何時合図したのか?
 アノニモ機がその蹴りを邪魔ブロックするキーパーの如き絶妙なる間合いで黒いナイフ二刀を下側から合わせる奇跡スーパーセーブ

 カーリー、右足首が大層嫌な音ひびかせ、複雑骨折したのを粉々にされたのを感じる。
 然も上下同時に押され、下からの黒いナイフも足首へ届いた最悪。

 もう二度とを踏めぬ事象が確定した。後はで浮遊し続けるしかない選択肢。敗色濃厚はいしょくのうこうを感ずる女神、此処からは相打ち覚悟の玉砕ぎょくさいあるのみ。
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