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第3章 レッドフェイスを止めろ!

21.対決、レッドフェイス

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§

 四階に到着すると、黒い煙が漂っていた! 黒い煙の出どころは、屋上に続く扉の付近だ!
「……屋上の扉が破壊されているのです!」
 屋上の扉は、粉々に砕けていた! まさか、誰かがカギごと扉を破壊したの!?
「これは……」
 粉々に砕けた扉の付近で、カヤトくんは小さな紙の切れ端を拾い上げた。少し焦げたそれを見たカヤトくんが、こう断言する。
「一部しか読めねえが、起爆式が書かれていやがる! 設置型魔法を使ったんだ!」
「誰が!?」
「レッドフェイスに決まってんだろ! くそっ!」
 もしかして、さっきの音はレッドフェイスが設置型魔法で扉を壊した音だったってことなの!? ということは、この先にレッドフェイスが居る!
「これ以上好き勝手させるわけにはいかない! みんな、追うよ!」
「当然だ! 絶対、追い詰めてやる!」
 私たちは扉の残骸を乗り越えて、屋上に出た! すぐ目の前に、時計台の入り口がある! きっと、レッドフェイスはあの中だ!
「恐らく、レッドフェイスは結界石を壊すつもりなのです!」
「壊すと言っても、結界石は頑丈だからちょっとやそっとの衝撃じゃ壊れないと父上から聞いているでござる!」
「小さな紙に起爆式を書いた設置型魔法程度では壊れないと思うのです! けれど、近くに大規模な魔法陣を書いて大規模な設置型魔法を発動されたらやばいのです!」
 走りながら、チトセちゃんとウィガルくんが叫ぶのが聞こえた!
「魔法陣を書かれる前に止めればいいだけだ! 突入するぞ!」
 私たちは時計台の中に突入した!
 時計台の屋根はガラス張りで、青空が良く見える構造だった。奥の方には、台座に乗った水晶玉のようなものが日の光を浴びて虹色にキラキラと輝いていた。多分、あれが結界石だ!
「レッドフェイス……!」
 結界石の近くに、赤いフルフェイスのマスクを被った男――レッドフェイスがしゃがみこんでいた。チョークのようなもので、床に何かを書き込んでいる。
 ――設置型魔法を発動させるために必要な魔法陣を書いているんだ!
「フレビス!」
 私は手のひらを前に突き出し、フレビスを発動させた! 狙うのはレッドフェイスの手元だ!
「…………」
 レッドフェイスは懐からすばやく紙を取り出し、それを投げた! レッドフェイスが投げた紙が、私の放ったフレビスに当たって弾ける! 防がれた!
「レッドフェイスぅぅぅぅっ!!」
 カヤトくんが叫びながら、レッドフェイスに向かって魔法陣が書かれた紙を何枚も投げた! レッドフェイスも、同じように紙を何枚も投げる! 
 ――紙同士がぶつかり合い、大きな音を立てて弾けた! 火と水の設置型魔法の衝突だ!
「レッドフェイス! 逃げ場はないのですよ! 出入口はチトセが塞いだのです!」
 私たちがくぐり抜けたばかりの出入口は、いつの間にか巨大な土の壁が塞いでいた! チトセちゃんが、防御型魔法のグラウォルを使ったみたい!
「今しがた床に書いた魔法陣で設置型魔法を発動させ、校舎ごと結界石を吹き飛ばすつもりだったのでしょう。しかし、この状況でそんな大規模な魔法を使用したらあなたも巻き込まれるのです。おとなしくお縄につくのですよ。……警備員さん」
 レッドフェイスとカヤトくんが紙を握りしめたまま、ぴたりと動きを止める。
「……嗅ぎつけるのが妙に早いと思っていたけど、やっぱりバレてたか。つい、油断して肩を確認したって言ったもんなあ」
「あなたは五年前に肩を撃たれた。そういうことなのです?」
「うん。その通りだ」
 レッドフェイスの声は、警備員のおじさんと同じものだった。さっきの発言でもしかしてと思ったけど、まさか本当におじさんがレッドフェイスだったなんて……。
「MCCアカデミーに潜入していたのでござるか?」
「数か月前からね」
「なぜこんな回りくどいことをしたのです? 予告状を出さずにいきなり犯行に及べばスムーズに爆破できたのでは?」
「それじゃつまらないでしょ。爆破を必死で阻止しようとする連中を翻弄し、目的を達する方が楽しいからね。いわばこれはゲームだよ」
「ゲーム感覚で他人に迷惑をかけてんのか! てめえは!」
「信じられないでござる……」
 そんな理由でこんなことを繰り返しているなんて! そのせいでパパやカヤトくんの家族を含む沢山の人の命が奪われたなんて!
「何故、今日爆破をしようと思ったのです?」
「ほら、今日は混界化が起きた日じゃん。それを祝って景気付けにドカンとするのも悪くないでしょ?」
「そんな理由でMCCアカデミーを爆破しようと思ったのでござるか!?」
「まあね。だけど、そこの女の子……朝火ヒナコさんが入学してきたから、もう一つ理由ができた」
「えっ?」
 私が入学してきたから、MCCアカデミーを爆破する理由がもう一つできた? 一体、どういう意味なの!?
「君、桜嵐タワーに居た警官におんぶされていた子だよね? 面影があったから、初めて会った時にすぐに気づいたよ。元々爆破しようと思っていた学校に、君が来たのは本当に嬉しかった」
「何で!?」
「あの時おじさんの肩を撃ったバカ警官の娘を、学校ごと派手にぶっ飛ばしたら……すっごくスッキリするだろうと思ってさあ!」
 レッドフェイスが自らの右肩を押さえながら、大声で笑う。
「……許せない!」
「クソ野郎が!!」
 私はレッドフェイスの手元に向かってフレビスを飛ばし、カヤトくんもまた魔法陣が書かれた紙を投げつけた! だけど、レッドフェイスも紙を投げつけてそれらの魔法を再び無効化してしまった!
「吹き飛ばすでござる! ストジェ!」
 ウィガルくんが突風を起こす魔法であるストジェを唱える! だけど、
「おっと危ない。『シャギレム』」
レッドフェイスの前に大きな炎の壁が現れて、防がれてしまった!
「これは、火の防御型魔法なのです!」
「防御型魔法まで使えたの!?」
「ははっ。君たちにそれが破れるかな?」
 火の壁の向こうでレッドフェイスが再び地面に何かを書き込み始める! 設置型魔法陣を完成させるつもりだ! 逃げ場はないのに!
「みんなで同時に魔法をぶつけて破るのです!」
「それしかないでござるな!」
 フレビス、ウォプロド、ストジェ、グラスト……。私たちは、四属性の魔法を火の壁に向けて同時に放った!
 ――四つの魔法の直撃を受けた炎の壁が爆ぜて、消滅する!
「おお。すごいすごい。でも、残念。もう魔法陣は完成したよ」
 火の壁を破られても、レッドフェイスは涼しい顔をしている。
「それがどうした! 大規模な設置型魔法を発動させたら、お前も巻き込まれる! この状況で発動させることはできねえはずだ!」
「それはどうかな? 死なばもろともって言葉を知っているかい? 君たちと一緒に心中する可能性もあるかもよ」
「そんな脅しが通用すると思っているの!?」
「本当にただの脅しで済むかな? これ以上攻撃してきたら、本当に発動させちゃうかもよ」
 レッドフェイスの声は、とても楽しそうだ。……こいつ、本当にゲーム感覚で楽しんでいる!
「そこで君たちに提案。ここで逃げちゃえば、命は助けてあげるよ。こんなおじさんと一緒に爆発して死にたくないだろう?」
「てめえを見逃せってのか!」
「そうだよ。見逃せば、校舎と結界石は破壊されるけどここにいるみんなの命は助かる。みんなまとめて死ぬよりかは賢い選択だと思うけどなあ」
 私たちシルティアの四人は、お互いに顔を見合わせた。そして、頷く。
「私たちは死なないし、校舎も結界石も破壊させない!」
「なるほど。交渉決裂か」
「当たり前だ!」
「コントロールになると決めた時から、皆、命を賭ける覚悟はできているのです!」
「今更、お前の言葉なんかで揺らがないでござる!」
 私たちシルティアはあんな奴の脅しになんか負けない! 絶対、四人で力を合わせて捕まえてやるんだから!
「いいねえ。楽しくなってきたよ。楽しませてくれたお礼に、もう少し遊んであげる」
 そう言って、レッドフェイスが私たちに向かって大量の紙を投げてきた!
「ウィガル!」
「分かっているでござる! ストジェ!」
 ウィガルくんがストジェを唱え、突風で紙を吹き飛ばす! 相手は火の魔法使いだからウィガルくん にとって相性が悪い相手! だけど、相手が魔法を発動させる前なら関係ない! 
 吹き飛んだ紙は、レッドフェイスのすぐ近くで爆発した!
「うーん、危ない。ここはもう一度シャギレムで……」
「させるかよ!」
 カヤトくんは後退したレッドフェイスに突進し、紙を投げてウォプロドを発動させた! レッドフェイスの顔のすぐ前で爆発が起き、フルフェイスのマスクが砕け散る! そこにすかさず、カヤトくんは再び紙を投げた! 私もレッドフェイスに向けてフレビスを放つ! しかし、それらはレッドフェイスが投げた紙に阻まれ、弾けて消えてしまった!
「こらこら。あまり調子に乗らないでね」
「ぐっ!?」
「カヤトくん!?」
 突然、カヤトくんの背後で小さな爆発が起きる! レッドフェイスが、設置型魔法を発動させるための紙をこっそりカヤトくんの後ろに投げていたようだ! 爆風でカヤトくんがよろめいた隙に、レッドフェイスは私たちから離れようとする素振りを見せた!
「逃がさないのです! グラウォル!」
「あいたっ」
 レッドフェイスが逃げようとした方向に、土の壁が現れる! レッドフェイスはその壁に思い切り全身を打ち付けて動きを止めた!
「隙ありっ! フレビス!!」
 動きを止めたレッドフェイスに向かって、私はフレビスを放つ! 火の塊は見事にレッドフェイスの背中に当たった! 体勢を崩したレッドフェイスが倒れる! そして、レッドフェイスの体が炎に包まれる――本来ならそうなるんだけど、私は意識を集中させて魔法を消した!
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