目指すは正義のコントロール! 〜命がけで魔法犯罪を取り締まる中学生活、始まりました〜

神所いぶき

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 レッドフェイスと対決した翌日。先生たちは事件の後処理だのなんだのがあるみたいで、今日は学校がお休みだ。

 朝起きて、寮のホールでテレビを点けるとレッドフェイスの話題一色だった。報道されている内容を簡単にまとめると、こうだ。

 まず、レッドフェイスには妻子がいたが八年前の春に亡くなった。私たちの世界と魔族の世界が混ざり合った混界化の日に、パニックを起こした魔族が放った魔法に巻き込まれたのが死因だったみたいだ。
 レッドフェイスはそれがキッカケで、魔族や、共存を呼びかける人間を憎むようになり、嵐桜タワーで初めての爆破テロを起こした。つまり、初めは復讐心による犯行。だが、いつしか魔法を用いたテロ行為に楽しみを見出すようになり、ゲーム感覚で人間と魔族の命を奪う快楽殺人者になった。

 ……と、テレビでは報道されている。後半の方はコメンテーターの想像も混ざっているから、どこまでが本当かは分からないけどね。
 何にせよ、もうレッドフェイスに誰かの命が奪われることはない。今はただ、それを喜ぼう。

§

「邪魔するぞ」
「おはよう。みんな」
 シルティアのみんなが朝ご飯を食べ終わった頃に、ギアガル校長とレンさんがホールを訪れた。
「父上! ……ではなく、ギアガル校長。 何かと、忙しいのでは?」
 目の下に深い隈があるギアガル校長に、ウィガルくんは心配そうに声をかけた。
 ……もしかして、ウィガルくんは私たちの前で校長を父上と呼んだら恥ずかしいと思っているのかな? わざわざ言い直さなくてもいいのに。
「警備体制の見直しを含む後処理が忙しいが、礼を言う時間くらいはある。……シルティアの諸君。この度は、MCCアカデミーをよく守ってくれた。感謝する」
 そう言って、ギアガル校長は深々と頭を下げた。それを見たウィガルくんが、口をぽかんと開ける。信じられないものを見たって感じの反応だ。
「いやー、まさか学校を防衛したうえにレッドフェイスを捕まえちゃうなんてね。後輩が優秀すぎて、焦っちゃう。今回のミッションで俺は役に立たなかったから余計にそう思うよ……」
 そう言って、レンさんは力なく笑う。どうやら落ち込んでいるようだ。
「レンさん。あの入学試験がなかったら、私たちはレッドフェイスに勝てなかったよ」
「そうなのです。あの試験で絆を深めたから、レッドフェイスとの戦いでチトセたちは上手く連携できたのですよ」
「つまり、今回のミッションを成功させることができたのはレンどののおかげでもあるってことでござるな」
「後輩たちが優しい……!」
 そう言いながら、レンさんが小刻みに体を震わせた。……もしかして、感動しているのかな?
「ウィガルよ。良い仲間たちに恵まれたな。……これからも、励むがよい」
「……はい!」
 ギアガル校長の言葉に、ウィガルくんは大きく返事をした。ウィガルくんがとても嬉しそうで、良かった。ギアガル校長に認めてほしいというウィガルくんの気持ちが、今回の件で報われたよね。きっと。多分、これから私たちが活躍すればもっと認めてくれるはず! もっと活躍して、ギアガル校長を驚かせなきゃね!

§
 
 また、新しい朝が来た。今日から再び学校が始まる。だけど早速問題発生だ。授業が始まるまであと一時間もないのに、カヤトくんが起きてこない。
 私は、部屋を訪ねてカヤトくんを起こしに行くことにした。
「おーい。カヤトくーん。ウィガルくんとチトセちゃんはもう学校に行ったからねー。そろそろ起きないと遅刻しちゃうよー」
 私がそう声をかけると、カヤトくんはもぞもぞと布団から這い出してきた。とても眠そうな顔をしていて、思わず笑ってしまう。
「……何、笑ってんだよ」
「だって、めちゃくちゃ眠そうな顔してるもん。夜ふかしでもしたの?」
「本を読みすぎた……」
 カヤトくんの枕元には、難しそうな魔法の本が置いてあった。カヤトくんはこれを読んで夜ふかししたみたい。
「カヤトくんもチトセちゃんみたいに勉強が大好きなの?」
「別に。強くなりてえから、してるだけだ」
「そういえば、入学試験の時はレッドフェイスを追い詰めるために強くなりたいって言っていたよね」
「ああ」
「今は、何のために強くなりたいの?」
 もう、レッドフェイスを追い詰めるために強くなる必要はない。なら、何のために強くなりたいのか。気になった私がそれを尋ねると、
「そりゃ、悪人やモンスターから仲間を……ヒナを守るために……」
 カヤトくんは、そう答えた。後半はとても声が小さかったけど。
「って、何言わせんだよ!」
「あはは! カヤトくん、顔真っ赤ー!」
 やっぱり、カヤトくんは恥ずかしがり屋だなあ。
「お前も、顔が赤いぞ」
「うそー!?」
 確かに、顔が熱い! もしかして私も恥ずかしがり屋だったの!?
「ゆでダコみたいだな」
「うわっ! やっぱカヤトくんデリカシーない! ふーんだ! こんなデリカシーなし男は置いてっちゃう! 遅刻してもしーらない、っと!」
 有言実行! 私はカヤトくんを放置して部屋を出た!
 ……部屋を出る寸前、聞こえちゃった。カヤトくんが、「ありがとな」ってお礼を言ったのが。だから私も、扉越しにお礼を返す。

「こっちこそ、ありがとう。私たちと一緒に進む未来を選んでくれて」


 ……きっと、私たちシルティアが進む未来は楽しいことばかりじゃない。中々乗り越えられない問題にぶつかったり、また命を落としかけたりすることがあるかもしれない。

 ――だけど、きっと大丈夫! 私たちは、一人じゃない! だから、何度だって限界を超えられるんだ!

「さーて、今日も頑張って勉強するぞー!」

 私は悪い魔法使いが大キライ! 
 だから私は、悪い魔法使いをこらしめる正義の魔法使いになるんだ! 

 ――MCCアカデミーの、仲間たちと一緒に!

【了】
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