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第二章 火の女神リクシスの加護
18 新たな就職先
しおりを挟む「しかし……」
カウンターの奥に座るエウカさんは、唇を舐めると説明をつづけた。
「いいですか、ラクト様。あなたの魔力は数字でいうと80です。これは上級魔法を一発でも放てば枯渇する程度のマジックポイントだと思ってください。所詮、レベルは22なのです。よって、アドバイスとしてやはりレベルアップして魔力のスタミナをつけるべきだと思います。賢者クラスの魔力は最低でもMP600は欲しいですから」
「なるほど、わかりました。やっぱり努力はしないとダメですよね?」
「あたりまえですっ! 簡単に賢者になってごらんなさい。他の冒険者からしたら、なんであいつだけって目で見られ、嫉妬の嵐ですよ」
「たしかに……」
ラクト様、と改めてエウカさんから名前を呼ばれた。
その目は受付嬢としての威厳がこめられているように見える。
「今だから話しますが、あなたに“いつか賢者になる”というキャッチコピーをつけたのは、他でもないあなたの母親なのです」
「え? 本当ですか?」
「はい。そうでもしないと、ラクト様のような努力もしない最弱な冒険者など、どの勇者様も嫌います。みなさん即戦力が欲しいですからね。そんななか、フバイ帝国でもNo. 1の実力があるアフロ様があなたをパーティに入れてくれました。私は正直に感動しました。彼のパーティは強いですからね。最弱なあなたを育てようとする余裕があったのでしょう。なかなかいないですよ、そんな心の広い勇者様パーティは」
「……はあ」
僕はエウカさんの話しを聞きながらうなだれた。
真実を話してやろうかな、と思ったがやめておく。
とても信じてはもらえないだろうから。
エウカさんの話しはつづく。ったく、お姉さんの説教は長い……。
「それなのに、あなたときたら、呆気なく勇者パーティを辞めてしまった。ああ、もったいない。いったい何を考えているんですか? イケメンのアフロ様と一緒に冒険できるだけでも光栄なのに、やっぱりあなた、なにかやらかしたでしょ?」
「いやいやいや、むしろ向こうがっ」
言い訳は結構、と言ったエウカさんはぴしゃりと手を払った。
むぅぅ、なんでお姉さんって喋りだすと止まらないんだろう。
もしかして、ストレス発散の吐口は、僕?
横にいるリクシスさんは黙って話を聞いている。なんか言ってくださいよ、リクシスさんっ!
「まあ、とにかく、今のレベル22のラクト様なら紹介できる勇者パーティがあります」
「本当ですか! ぜひ紹介してください」
「でもいいですか、試用期間中は派遣扱いなのでご了承ください」
「はい」
「おそらく、勇者様に気にいられれば、正規に雇ってくれますから、それまでがんばってください」
「わかりました。で、どんな勇者様ですか?」
あちらにいる勇者様です、と言ったエウカさんは指さした。
そのほうを向くと、椅子に座って酒を飲んでいる人物がいる。
僕の心臓は飛び跳ねた。
まさか、あの人が……。
リクシスさんは苦笑いで、
「あれが勇者様?」
と、つぶやいている。
「はい、僕もびっくりです。それでも就職できるなら背に腹は変えられません」
「……はあ、それでは一応、私もパーティに入りますね」
「お願いします」
僕とリクシスさんは、そのように打ち合わせしたあと、求人募集している勇者様を見つけた。そこにいたのはなんと、昨日、ギルド館ですれ違った巨体の勇者様だった。彼は僕らの存在に気がつくと、ギョロリ目の玉を動かし、酒をグイっと飲み干してから、「ゲップ」と一緒にまみれた太い声を放つ。
「うっぇああっ! んあ? クソガキがなんかようか?」
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