47 / 68
第三章 勇者パーティの没落
10 ラクトの家
しおりを挟む「は~い! どちらさまですか~」
開けられた玄関の扉から元気な声が響く。
顔をだしたのは、可愛らしい女性。ラクトくんのお母さんだ。わたしたちはフバイの帝都居住区にあるラクトくんの家に訪ねていたのだが、ラクトくんのお母さんは、アフロ様の顔を見るなり、びっくり仰天した。
「きゃあ、勇者様っ!」
「御無沙汰してます……」
「あ、その説はどうもありがとうございました」
「いえいえ……あのあと、絵画は売れましたか?」
「はい、おかげさまで」
「それはよかった」
アフロ様は胸をなでおろした。
すると、ラクトくんのお母さんは、思いだしたように頭をさげる。
「勇者様、ラクトがお世話になりました。あの子、パーティを抜けてしまったみたいで……」
「……はい。まあ、ラクトくんもがんばってはいたんですが、私どもの育成にはどうも合わなかったみたいで、逆に申し訳ありません」
「いえいえ、あの子は優しすぎることが欠点ですから、ビシバシと鍛えて克服しないことには……とても偉大なる賢者にはなれません」
「うむ、お母さんの言う通りです。修羅の道を抜けた者こそが、偉大なる賢者に辿りつくと私も信じております」
「ああ……甘やかしてばかりにあの子を育てた私の罪です……」
そう言うとラクトくんのお母さんは深々と頭をさげた。
(え? アフロ様とラクトくんのお母さんって知り合いなの?)
省みると、ラクトくんは母子家庭だと言っていたのを思いだす。
ということは、二人はいったい、どういう関係なのか……。
わたしたち女子三人は興味津々で、そのやりとりを見守っていた。
「頭をあげてください。お母さん」
「あ、すいません……で、勇者様、今日は何か?」
「実は、ラクトくんに、もう一度パーティへ入ってもらえないかと頼みに伺いました」
「あら、それはまた、ラクトも喜ぶと思います」
「ラクトくんはいますか?」
それが、と言ったラクトくんのお母さんは、しおらしく肩を落とす。どうやら、ラクトくんは留守らしい。
「ごめんなさいね~ラクトは家にいないのよ~」
「そうですか。どこへ行ったのかわかりますか?」
アフロ様の質問に、ラクトくんのお母さんは、「あ! たしか手紙があったわ」と言ってから、ちょっと待ってね、と付け加え、すたすたと家のなかに戻っていく。そのすばしっこい仕草が、なんだかラクトくんに似てるような気がして微笑ましく思った。
ふと、アフロ様の顔色をうかがうと明るい。心なしか、安堵しているようだ。おそらく、ラクトくんがいなくて拍子抜けしたのだろう。“パーティに戻ってこい”と言う心の準備が、まだできていないようにも考えられる。
すると、隣にいるアーニャさんが腕を組んで感心していた。
「ラクトのお母さん、相変わらず綺麗だな~」
「知り合いなんですか?」
と、わたしは訊いた。
アーニャさんは顎に手を当てて、思いで話を語る。
「うん、何回か見たことあるよ。ラクトはうちの出身校、帝都魔法学校の後輩なんだ。ラクトはあの頃から平凡でさ。なにをやらせても、パッとしない。私らはよく、ラクトの剣術や魔法演習なんかを笑ってみていたよ。だってさ、ラクト以外の生徒はみんな貴族で英才教育を受けているからな。今思うと、あんなエリート学園はラクトに合ってない気がするよ。お母さんには悪いけどね。ラクトは、もっとのびのびとした学園のほうがいいのにな」
「たしかに……それでも、ラクトくんがそんなエリート学園にいたなんて、意外」
「いや、ぶっちゃけお金さえ払えば誰でも入れるよ。理事も先生も貴族たちからの賄賂にまみれたクソ学園だもん。まあ、ラクトくんのお母さんくらい美貌があれば、お金の力はいらないかもね。他にもいろいろと入学方法はあるからさ……」
そっか、と言ったわたしは、ラクトくんの家を眺めた。
お世辞にも、お金持ちの家ではなかった。ありきたりなレンガ造りの住宅。外観から台所と居間、あと二つ部屋がある間取りだと思われる。おそらく、ギリギリの経済環境。それでも、ラクトくんが少しでもいい学園を卒業し、将来出世できるよう、お母さんなりにがんばっていたのだろうな、と察した。
しばらくすると、玄関の扉が開き、可愛らしい顔がまたでてきた。
「ラクトの手紙があったのよ、ほら」
アフロ様が受け取った手紙を横からのぞく。
その内容はこうであった。
『リクシスさんの家に泊まります。あと、もし新しいパーティに就職できたらそのまま冒険の旅にでるかもしれません。それでは、いってきます。 ラクト』
綺麗な書体だった。
だが、その内容に驚愕した。
(リクシスさんの家に泊まるですって!?)
リクシスさんとは火の女神様のことだ。しかも、家に泊まるということは、二人は、もうそういう関係になっているということなのだろうか? わたしは急に胸が苦しくなっていることに気づいた。わたし、ラクトくんのことをなんとも思っていなかったのに、今では好きに変わっている。
いったい、いつからこうなったの?
わたし……。
0
あなたにおすすめの小説
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ゴミスキルと追放された【万物鑑定】の俺、実は最強でした。Sランクパーティが崩壊する頃、俺は伝説の仲間と辺境で幸せに暮らしています
黒崎隼人
ファンタジー
Sランク勇者パーティのお荷物扱いされ、「ゴミスキル」と罵られて追放された鑑定士のアッシュ。
失意の彼が覚醒させたのは、森羅万象を見通し未来さえも予知する超チートスキル【万物鑑定】だった!
この力を使い、アッシュはエルフの少女や凄腕の鍛冶師、そして伝説の魔獣フェンリル(もふもふ)といった最強の仲間たちを集め、辺境の町を大発展させていく。
一方、彼を追放した勇者たちは、アッシュのサポートを失い、ダンジョンで全滅の危機に瀕していた――。
「今さら戻ってこい? お断りだ。俺はこっちで幸せにやってるから」
底辺から駆け上がる痛快逆転ファンタジー、ここに開幕!
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
勇者の隣に住んでいただけの村人の話。
カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。
だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。
その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。
だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…?
才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる