いつか賢者になる僕は、追放された勇者パーティから溺愛をうけていた!?〜ごめん、女神様とパーティーを組んでるから戻れません〜

花野りら

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   第三章  勇者パーティの没落

 12  火の神殿への来訪

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 フバイ帝国の首都。栄華を極める白亜の建造物がつらねている。
 あらゆる人々や多種族で賑わう大通り。そこから郊外へ五分ほど歩いたあたりに赤く燃えるような朱塗りの巨大な建物が立っていた。先頭を歩くアーニャさんは得意げに、「あそこよ~」と言って指をさし、わたしたちを火の神殿へと案内してくれていたのだが。
 
「ひゅう! 懐かしいなぁ、ちょっと私、お参りしてきていい?」
 
 そう言ったアーニャさんは駆けだしていく。
 
「おい、遊びに来たんじゃねぇぞっアーニャ!」

 アフロ様の声が境内に響く。しかし、アーニャさんは完全無視。るんるんでスキップすると拝殿の前にある賽銭箱に金貨を、チャリンと投げて、ぱんぱんと手を打ってから、ぶつぶつ願い事を唱えつつお参りをする。その表情は清涼としており、心を洗っているように感じた。
 
「あ、わたしもやりたい……」
「ミルクもなのです」

 おいおい、となげくアフロ様を背景に、わたしとミルクちゃんも、お賽銭チャリン、ぱんぱんと手を打ってお参りをする。

「どうかラクトくんが戻ってきますように……」
「どうかおっぱいが大きくなりますように……せめてC、いや、Bでも……」

 え? 驚いたわたしは手を合わせながら、横目でミルクちゃんを見つめた。お尻の尻尾がくるくると踊っている。それにしても、ミルクちゃんにそんなコンプレックスがあったとは知らなかった。むしろ、わたしのおっぱいをわけてあげたいよ……。
 
「おい、そろそろいくぞぉ」

 不貞腐れるアフロ様は灯篭に寄りかかっていた。
 お参りをしたわたしは、ゆっくりとアフロ様に近づくと尋ねる。
 
「アフロ様はお参りしないんですか?」
「はあ? するわけがない。この世で信じられるのは自分だけだ」
「でも、願いごとが叶うかもしれませんよ」
「ふんっ、バカバカしい。願いは自分で叶えるものだ。他力本願こそが俺はもっとも嫌いなんだ。今までの人生で俺は、全部自分の力だけで成り上がってきた。そして、これからもだ」
「……わたしたちの力は必要ないのですか?」
「何を言う、ノエル。おまえたちの力は、もう俺の力みたいなものじゃないか。あれだけ身体を重ねていたら一心同体みたいなもんだろ?」
「はぁ……」
「俺はおまえを信じているぞ、ノエル」
「うぅ……」
「どうした? 今夜もちゃんと愛してやるから安心しろ。そうだ、ノエルだけは特別に一緒のベッドで寝てやろうか? ん?」
「……」

 わたしが黙って下を向いていると、アーニャさんとミルクちゃんが近づいてきた。二人はお守りを買ってきたようで、きゃっきゃっ、とはしゃいでいる。彼女たちはれっきとした勇者様パーティで、数多の戦場を駆けめぐっているのに、これでは一般の参拝者とさして変わらない。
 
「ノエル、見てよこれ、攻撃力アップのお守り買っちゃった」
「へ~、これ、身につけるだけで強くなるんですか?」

 まあね、とアーニャさんは笑う。
 
「ミルクは魔力アップなのです」

 いいね、と言ったわたしに、すっとミルクちゃんは腕を伸ばす。手もとにはお守りを持っていた。

「ノエルちゃんにも買ってきましたよ。ほら、恋むすび」
「恋むすび?」
「はい、これあげます」

 そう言ってミルクちゃんから貰ったのは、ピンクの小袋。表には『恋むすび』と書いてある。触ると柔らかい布の感触と、ほのかに香る花の匂いが心地よい。ミルクちゃんは微笑むとつづけた。

「虫ケラのことが好きですよね? ノエルちゃん」
「……知ってたの? ミルクちゃん」
「はい。ミルクの耳って人の心、つまり心臓の音が、よ~く聞こえるんです。よって、心理分析が可能なのです」
「す、すご……」
「でもこれで、雨降って地固まる、ですね」
「え? どういうこと?」
「両思いですよ。ラクトくんもノエルちゃんのことが好きですから」

 ドキッとした。
 そ、そんな……ま、まさか?
 
「ああ、やっぱりそうか、他に好きな人がいるって言ってたもんな~ラクト」

 横からそう言ったアーニャさんは、腕を伸ばすと首の後で両手を組んだ。

「よおし! ミルクはノエルちゃんとラクトくんがカップルになれるよう全力で応援しますっ!」
「私もだ。戦士として潔く、ラクトの童貞卒業はノエルに譲ろう。そして仲間として祝福をしよう」

 ありがとう、ミルクちゃん、アーニャさん……とわたしは小さな声でささやいた。アーニャさんは、「友達でしょ? 当然だよ」と言ってから、朱色の本殿を指さした。
 
「じゃあ、そろそろラクトに会いに行くか~! 火の女神様は本殿にいるから、きっとラクトもそこにいるだろう」
「手紙では、お泊まりをすると載っていましたね。そうだ、二人がどんな関係なのか……先にミルクが行って、ミニミニの魔法を使ってのぞいてきましょうか? にっひひ……」
 
 その必要はない、とアフロ様は言うとミルクちゃんの頭を、ぽんと叩いた。
 
「あ、アフロ様ぁ」

 と言って顔をあげるミルクちゃん。驚いて猫耳が震えている。ふん、と鼻で笑うアフロ様は本殿のほうを見据えながら訊く。
 
「おまえらは感じないか? この禍々しい魔力と、それと戦う者の戦闘力を……」
 
 あ……と唸ったミルクちゃんが猫耳をぴくり。
 次の瞬間には、目を剥いて叫んだ。
 
「本殿から物凄い魔力が……これは賢者様クラスなのです」
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