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第二章 楽ちん国づくり

2  過去、四年前……

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「さて、ヒイロ、何からつくる?」
 
 土の妖精──ノームが、そう聞いてくる。
 その見た目は、可愛い女の子。
 彼女はグランドツリーに住む守護霊。
 ひょんなことで、僕と友達? みたいになったのだが……。
 
 ──僕、ヒイロ、十六歳は、異世界転移者、土魔道士、レベル28。

 ただいま、絶賛、国づくりをしてまーす!

「うーん、そうだなぁ」
「ヒイロぉぉ! ここにさ、お家を作ってよ! あたし、でっかい宮殿に住みたい!」
「え? ここ?」
 
 うん、とノームはうなずいて、ニッコリと笑う。
 僕は首を振って、あたりを観察した。

 ──いや、無理やろ……。

 グランドツリーの木の根が、まるで蛇のように地面から出ている。
 ここは小高い山となっていて、地形はデコボコ、草はぼうぼう、荒れに荒れていた。
 とても建物をつくれる地盤ではない。
 家をつくるなら、平原のほうがいいな。
 そこで僕は、サクッと頭のなかで、構図を描く。
 まずは簡単な四角い家をつくろう、シンプルなやつ。

「キューブがいいな……」

 と、僕がつぶやいた。
 すると不思議なことに、ステータスがオープンされた。
 浮かんだ枠を見てみると、僕の思い描いた構図が表記されている。
 さらに、指先でいじって修正もできるし、名前をつけて保存もできた。
 どうやら、女神のブレスレットは、パソコンのようなものらしい。
 さらに椅子や机などの家具も、頭で想像した通りに描き出してくれた。
 手で描く必要はない。すごく便利な魔法道具だ。 

 ──ここは神聖なエリアとして、手つかずにしたいな……。

 さらに見渡して、観察する。
 南には川が流れ、北には雄大な山、西と東には森が広がっている。
 敵が攻めてくるとしたら、西と東だ、とりあえずここに砦を築こう。
 広い平原は、農場と工場地帯にして、居住区は、そうだな……。
 うん、あの丘がいい。
 見晴らしのいい場所に宮殿をつくり、そこに住もう。
 あ、そうだ! 美味しいご飯が食べられるレストラン街もつくりたいなぁ。
 うんうん、いい街を作れば、移住してくる人もいるだろうし……。
 あ! 可愛い彼女ができるかも!
 
「ぐへへ、夢が広がりまくりだぁ」

 ヒイロ……大丈夫? と言ってノームが上目使いして見てくる。
 我に返った僕は、ほっぺを指先でかいた。

「大丈夫! とりあえず平原に家をつくるよ」
「えー! 平原なんてつまんない」
「いいから、いいから、僕にまかせなさーい」

 むぅ、とほっぺを膨らませるノーム。
 僕は彼女を、ヒョイっと肩車させると、歩き出した。

「さあ! 家をつくるぞー!」

 僕の身体は軽くて、下山も速かった。

 ──なんこれ? 運動神経抜群になったんだが。
 
「ヒャッホー! ヒイロ、足速いねー」

 ノームは大喜び、でもだんだん肩が痛くなってきた。
 これ、ふつうに肩こりだわ。

「ん?」

 ふと横を見ると、大型犬の魔獣──ガルルがいるではないか!
 
「おまえもいっしょにくるか?」
「拙者もマイホームが欲しいでやんす」
「え? そうなの?」
「ガルル、いつも野宿、つらまろ」
「それは可哀想だな……よし、僕が犬小屋を作ってやるよ」
「おお、それは圧倒的感謝!」

 あはは、と僕は苦笑い。犬がしゃべるって、やっぱり怖い。

「じゃあ、ちょっとノームを乗せて、僕、肩こったわ」
「まじっすか? 体力減ったら、またグラツリに触れるといいよん」
「グラツリ?」
「グランドツリーのことだってばさ」
「あはは、わかった。なんかあったらグラツリに触るよ」
 
 僕はノームをガルルに乗せると、また走り出した。
 しばらくして、平原に入り、川が見えてくる。

「よし、この辺りでいいだろう」

 下山した僕は、川のほとりにたどり着いた。
 とりあえず、簡単な家をつくろう。
 川の近くなら、水も飲めるし身体も洗える。
 魚だって釣れるし、排泄物も流せるもんね。

「ねぇ、家ってどうやってつくるの?」

 とノームが聞いてくる。
 ガルルの毛並みが気に入ったのか、寝そべっていた。
 ってか、寝ながら話すでない。

「土魔法のなかに、面白いものがあったから、それを試そうと思う」
「へー、なになに?」

 ──土魔法 クレイプレイ粘土であそぼ

 僕は、大地に両手を置いて、ぶつぶつ呪文を唱える。
 っていうか適当に、

「泥になれ、泥になれ……」

 と言っているだけなんだが。

「はいできた!」
「おおおおお!」

 顔を近づけるノームが大喜び。
 ガルルは、首を傾けていた。

「ヒイロ氏、これシンプルに泥団子ですな、これが魔法とか草」
「ガルル、おまえけっこう言うなぁ、一発目のお試しだから、これでいいんだよ」
「ってか、ノーム氏が食ってるでやんす」

 ふとノームを見ると、パクパクと泥団子を食べていた。
 食べるマネではない。ガチで食ってる!

「おい! 腹壊すぞ、ノーム!」
「んまんま、ん? 大丈夫、だってあたし土の精霊だもん、泥団子は大好物」

 あ、そっすか、と呟いた僕は、肩の力が抜けちゃう。あはは……。

「おかわり!」

 ノームの元気な声が、草原に響いていた。
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