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50.私のせいで
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50.私のせいで
「俺の名前はプロプス。失礼なこと言った後で悪いんだけどさ、君の服はどうなってるんだ?
装飾アイテムがたくさん付いているけど」
「どうなってるって?」
私には何を聞かれてるのか分からなかったけど、スピカちゃんには質問の意味が分かったらしい。
「これも、アカリさまの素晴らしい作品の一つですよ!
なんと、装飾アイテムが3つ付いた上に落下耐性+8の効果付きです!」
「うおぉ! マジか! なあ、頼む、お願いだ!
もうひとつ作って貰えないだろうか?
もちろん、お金は出すし必要な素材があれば狩りに行くから!」
「え、これってそんなに欲しい物なの?」
スピカちゃん用の可愛いワンピースを作っただけなのに、ガチムチお兄さんに欲しがられるとは思わなかった。
「もちろん、めちゃくちゃ欲しいっす! ちょっと、クラマスー!!」
プロプスさんはポルックスさんを呼びに走って行ってしまった。
ちょうど良いタイミングだし、少し人々の輪から外れてスピカちゃんとこそこそ相談する。
「スピカちゃん、私はこの世界の人がこんなに魔物
に怯えて暮らしてるなんて全然知らなかったんだけど、スピカちゃんは知ってた?」
「いいえ、私も知りませんでした」
「そうだよね。知ってたらもっと多くの人に届けるように、って言うよね」
「もちろんです。ベガさまは世俗との関わりをほとんどしない方でしたので、知らなかったのだと思います。
500年ほど前、ベガさまが街に住んでいた頃は、ここまでモンスターの脅威に曝されてはいませんでした。
家を異空間に作ったのは、魔物に襲われるからではなく、主に人間同士の面倒事を嫌っての事だったようですし」
「正直言って、私の《麻婆豆腐》でここまで感謝されて、多くの命を救えたとか言われたら、作る量は今のままじゃダメだと思う」
「より多くの人に届けられるようにする、ということですか」
「うん、そう。例えめんどくさいことになったとしても、もっと良いアイテムをみんなに使ってほしい」
「とても良い心がけだと思います。さすが、アカリさま」
「ううん、私はそんなにいい人じゃないよ。
私のせいで人が死ぬのが怖いだけ」
「アカリさまのせいで、ですか?」
「そう。だって、今のプロプスさんの言い方だと落下耐性が活躍する迷宮があるんでしょ? そこのモンスターに襲われる人もいるんでしょ?
もし、その迷宮のモンスターのせいで、誰かが犠牲になったら?
今までの私はそんなこと知らないから呑気に居れたけど、私は知っちゃった。
それに、今後はカストルさんからそういう情報も入ってくるだろうし。
私が作るものがあれば助かった命がある、なんて。
それは私が殺したのと同じじゃない?」
私は、不安なんだ。
ここは自分の想像より遥かに厳しい世界で、自分の行動一つで誰かが助かったり死んだりするってことが。
スピカちゃんも、悩んでいるようで口を閉ざしたままだけど、背後から力強い言葉が掛けられた。
「アカリさん、あなたの作るアイテムによって、助かる命はあれど失う命はない。
あなたは、あなたに出来ることをすればよいと思うが、違うか?」
鋭いけれど暖かい、二対の翠眼が私を見つめてくれていた。
「俺の名前はプロプス。失礼なこと言った後で悪いんだけどさ、君の服はどうなってるんだ?
装飾アイテムがたくさん付いているけど」
「どうなってるって?」
私には何を聞かれてるのか分からなかったけど、スピカちゃんには質問の意味が分かったらしい。
「これも、アカリさまの素晴らしい作品の一つですよ!
なんと、装飾アイテムが3つ付いた上に落下耐性+8の効果付きです!」
「うおぉ! マジか! なあ、頼む、お願いだ!
もうひとつ作って貰えないだろうか?
もちろん、お金は出すし必要な素材があれば狩りに行くから!」
「え、これってそんなに欲しい物なの?」
スピカちゃん用の可愛いワンピースを作っただけなのに、ガチムチお兄さんに欲しがられるとは思わなかった。
「もちろん、めちゃくちゃ欲しいっす! ちょっと、クラマスー!!」
プロプスさんはポルックスさんを呼びに走って行ってしまった。
ちょうど良いタイミングだし、少し人々の輪から外れてスピカちゃんとこそこそ相談する。
「スピカちゃん、私はこの世界の人がこんなに魔物
に怯えて暮らしてるなんて全然知らなかったんだけど、スピカちゃんは知ってた?」
「いいえ、私も知りませんでした」
「そうだよね。知ってたらもっと多くの人に届けるように、って言うよね」
「もちろんです。ベガさまは世俗との関わりをほとんどしない方でしたので、知らなかったのだと思います。
500年ほど前、ベガさまが街に住んでいた頃は、ここまでモンスターの脅威に曝されてはいませんでした。
家を異空間に作ったのは、魔物に襲われるからではなく、主に人間同士の面倒事を嫌っての事だったようですし」
「正直言って、私の《麻婆豆腐》でここまで感謝されて、多くの命を救えたとか言われたら、作る量は今のままじゃダメだと思う」
「より多くの人に届けられるようにする、ということですか」
「うん、そう。例えめんどくさいことになったとしても、もっと良いアイテムをみんなに使ってほしい」
「とても良い心がけだと思います。さすが、アカリさま」
「ううん、私はそんなにいい人じゃないよ。
私のせいで人が死ぬのが怖いだけ」
「アカリさまのせいで、ですか?」
「そう。だって、今のプロプスさんの言い方だと落下耐性が活躍する迷宮があるんでしょ? そこのモンスターに襲われる人もいるんでしょ?
もし、その迷宮のモンスターのせいで、誰かが犠牲になったら?
今までの私はそんなこと知らないから呑気に居れたけど、私は知っちゃった。
それに、今後はカストルさんからそういう情報も入ってくるだろうし。
私が作るものがあれば助かった命がある、なんて。
それは私が殺したのと同じじゃない?」
私は、不安なんだ。
ここは自分の想像より遥かに厳しい世界で、自分の行動一つで誰かが助かったり死んだりするってことが。
スピカちゃんも、悩んでいるようで口を閉ざしたままだけど、背後から力強い言葉が掛けられた。
「アカリさん、あなたの作るアイテムによって、助かる命はあれど失う命はない。
あなたは、あなたに出来ることをすればよいと思うが、違うか?」
鋭いけれど暖かい、二対の翠眼が私を見つめてくれていた。
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