ゲームちっくな異世界でゆるふわ箱庭スローライフを満喫します 〜私の作るアイテムはぜーんぶ特別らしいけどなんで?〜

ことりとりとん

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51.レシピの公開

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51.レシピの公開

「盗み聞きをしてしまったことは悪いと思う。しかし、君は物事を深く考えすぎじゃないか?」


ポルックスさんは身体に似合わない穏やかな笑みを浮かべて、私にそう言ってくれる。


「そう、でしょうか」


「ああ、そうだ。命の責任は、その本人と神様だけにある。
俺たちに出来ることは限られていて、その中で精一杯やっていくしかないんだ」


うん、そうだよね。
私は初めてこの世界の厳しさを知って、少しナーバスになっていたのかもしれない。
私に出来ることをする、それだけでいいんだな。


「はあい! アカリさんは、少なくとも私の命を救ってるよ?
だから、元気出して私に麻婆豆腐をもっとちょうだい!」


水色の髪をたなびかせたお姉さんが颯爽と登場する。
あまり話しても居ないのにこんなに騒がしい雰囲気の人も珍しいな。


「命を救った、って?」


「私は《鳳凰フラカン》の討伐リーダーなんだよ!
麻婆豆腐が無かったら、私は絶対死んでたから!」


あはは、と笑う彼女を見て、ここの人たちは明るくてとても素敵な人だな、と思った。
はじめましての私を、みんなで元気づけようとしてくれる。

この人たちなら、麻婆豆腐のレシピを渡しても上手く使ってくれるんじゃないか、独り占めせずに多くの人に伝えてくれるのでは? そう思えた。


「皆さんありがとうございます。
ちょっと考え過ぎていたかもしれません。
あの、提案があるんですけれど……」


そう話を切り出すと、ポルックスさんが一歩下がって代わりにカストルさんが正面に立つ。
まあそうだろうなという予想通り、外部との話は主にカストルさんの担当らしい。


「私の持っている麻婆豆腐のレシピを多くの人に知って貰いたいんですが、どうしたらいいと思いますか?」


「レシピは生産職にとって生命線だろう? 容易く公開していいのか?」


先程まで丁寧だったカストルさんの口調が崩れる。
そんなにびっくりすることかなあ?


「麻婆豆腐以外にも公開したいレシピは沢山ありますし、今のところもっとレシピが発見出来ると思っています。
なので、麻婆豆腐を作る時間がもったいないんですよ。量産を誰かに任せて、レシピ発見に力を入れたいんです」


「なるほど。麻婆豆腐のレシピを俺たちのクランに渡して、量産する代わりに一部をレシピ代として渡せば良い、と?」


「まあそれでも良いですけど、理想としては完全に無料で公開したいですね」


「……すまんが、話が分からない。それではあなたに何のメリットも無いだろう?」


「私としては、もう充分にお金は貰ったと思ってるので、メリットはありましたよ?」


「本当に欲のない、女神のような人だな、あなたは」


……いや、私は欲に塗れた普通の人間ですよ?
単に自分が傷つきたくないだけの小心者ですよ?



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