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22.笑顔
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ダイニングでカイルとエルと一緒に朝ごはんを食べた。
「今日はツィリムはお休みなのかな?」
「いや、昨日夜勤だっただけだろ。さっき帰って来てそのまま寝たと思う」
「あっ、そうなんだ。夜勤って朝までなの?」
「俺らの勤務は4交代制だからな。
0:00、6:00、12:00、18:00が区切りで、勤務以外に2時間くらいの訓練がある」
「てっきりエルと同じで3交代だと思ってたよ。
みんなの勤務が複雑すぎて、勤務カレンダー作って欲しいくらい」
「イズミルは俺らの勤務知りたいのか?」
「出来たら知りたいかな。
昼間に何するかとか、予定立てたいし」
「それなら一覧にして貼るようにするか」
「ありがと。その方が便利かな」
雑談しながらのんびり朝ご飯を食べてから、2人を見送る。
「いってらっしゃいー」
軽く抱きしめてキスをしてから出て行った。
「よし。今日は何しよっかなー」
クッキーでも焼こうか、そういえばこの前茶碗蒸し作った時に次はプリン作るって言ったからプリンにしようかな。
ツィリムが家にいるし。
でもまだ起きないだろうし、先に刺繍でもして待ってよう。
とりとめもないことを考えながら二階のリビングへ行くと、何故だかツィリムがソファで寝ていた。
「ツィリム、こんな所で寝てたら風邪ひくよ?」
起こすのも可哀想かと思ったけど、こんな所で寝るのはダメだ。
しっかり寝る為にも部屋のベッドで寝た方がいい。
「ぅー……」
軽く揺すって起こそうとしても、全然起きない。
眠り深すぎるでしょ!?
地震が起きてもそのまま寝てそうなくらいだよ?
まあ、起きないものは仕方がない。
せめてと思って自分の部屋からブランケットを取ってきて掛けたから、これでいいか。
ツィリムはそのままにして、隣で本を読み始めた。
この前イフレートに頼んで買ってきて貰ったもので、魔術研究に関するもの。
自分の身体のことがちゃんと分かっていないのは怖いことだから、少しずつ知識を貯めようと思ってる。
この本は龍脈と魔素の流れの話。
私の感覚では水の循環とかが近いかなーと思って読んでるとなかなか楽しい。
インドア派の私は読書も大好きだから、いつまででも読んでいられる。
途中で廊下の掃除を挟んたものの、午前中は本を読んで過ごしていたら、昼過ぎにツィリムが起きた。
「むにゃ……ふあぁ、おはよ」
「おはよう、ツィリム。ソファでも良く寝れた?」
「うん。起きてすぐにイズミがいたから、幸せ」
「それなら、良かった」
最近ちょっと慣れてきて、この手のキザ台詞にもあんまり動揺しなくなってきたかも、って思ってるんだけど。
「イズミの顔が赤くなるの、かわいい」
やっぱり赤くなってるよねぇ!!
恥ずかしいもんは恥ずかしいんだよ!!
相変わらずツィリムは私の顔が赤くなってるの好きだし……
思わず手で顔を覆ったけど、容易く外されてしまった。
「今日のイズミは俺だけのものだから、もっとよくみせて?」
ガッツリ顔を覗き込まれてもっと顔が赤くなる。
この世界の男子はもうちょっと草食系になった方がいいと思う。
切実に。
大きなソファだからツィリムが寝てるのと同じソファに座ってたんだけど。
近いよ、近い!
でも、いっつも私ばっかり慌てて他の皆は余裕たっぷりなのがちょっとムカつくし、意趣返しも込めて軽くキスしてみた。
ちょっと顔を近づけるだけ。
そうしたら、今まで見たことのなかったツィリムの満面の笑みが見れた。
ツィリムが笑う時は本当にちょっと口角が上がるだけだと思ってたけど、こんなに自然に笑える人なんだ。
「ツィリムの笑顔、すごく素敵だよ。
今までみたいに固くないし、そうやって笑ってて欲しいな」
そう言うとツィリムがすごくびっくりした顔をした。
「なんで?」
「なんでって……いつもはほとんど表情が動かないのに、今日は笑ってくれたから」
「ちゃんと、笑えてた?」
「うん。すごく可愛いよ。
あっ、可愛いって言われるのは嫌かな」
「それは別に構わないけど。
俺、あんまり顔が動かないらしいから。
昔から怖いって言われてて、可愛いなんて言われることなかった」
「ツィリムは普段、静かだからねぇ。
あんまり外に出さないだけで感情は豊かだと思うんだけど、付き合いの浅い人とかは気づかないのかもね」
「ちゃんと見ててくれて、ありがと」
それだけ言うと、ブランケットを抱えてサッと立ち上がり、部屋を出て行ってしまった。
本当に、気まぐれなネコみたいだな、って思う。
さっきまで上機嫌だったのに、いなくなっちゃった。
たぶん照れてる所を見られたくないんだろうから、私のブランケットを取り返しに行くような野暮はしないでおこう。
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