1 / 7
プロローグ
しおりを挟む
「ねえ、またじゃない? 秋ちゃんのバイト先、今月で閉店だって」
カフェの席で、美香ちゃんがホットココアをすすりながら言った。
「……は?」
一瞬、聞き間違いかと思った。
「さっき通ったら貼り紙あったの。『今月末で営業終了』って。あのコスメショップ、でしょ?」
私はカップを持ったまま、視線を伏せた。
「……マジか」
「マジだってば。てか、今回で五回目? 秋ちゃん、それもう運とかじゃないよ」
美香ちゃんは語気を強めながらも、心配そうに私を見つめた。
「……私がいると、潰れるのかな」
「秋ちゃんのせいなわけないでしょ。でも……それにしても異常すぎる」
美香ちゃんは誰とでもすぐ仲良くなれる“コミュ力おばけ”だけど、
私のことになると、一気に本気モードになる。
ちょっと恥ずかしくて、でも、それがありがたかった。
「……私のせいじゃないよ。たぶん」
「その“たぶん”が怖いんだよ……」
昔、知り合いの占い師に言われたことがある。
『あなた、ちょっと強めの“浄化体質”かもね』
そのときは笑い飛ばしたけど、今ではなんとなく、納得してる自分がいる。
私がいると、空気が変わる。
表に出ていなかった“何か”が、あぶり出される。
「……まあ、彼氏の話はまた今度でいいや。あれはそれで、いろいろね」
話題を切り上げて、私は美香ちゃんのカップをちらりと見た。
飲み干されたカップの中で残ったココアの跡が何かを示すように無数に散らばっている。
カフェの席で、美香ちゃんがホットココアをすすりながら言った。
「……は?」
一瞬、聞き間違いかと思った。
「さっき通ったら貼り紙あったの。『今月末で営業終了』って。あのコスメショップ、でしょ?」
私はカップを持ったまま、視線を伏せた。
「……マジか」
「マジだってば。てか、今回で五回目? 秋ちゃん、それもう運とかじゃないよ」
美香ちゃんは語気を強めながらも、心配そうに私を見つめた。
「……私がいると、潰れるのかな」
「秋ちゃんのせいなわけないでしょ。でも……それにしても異常すぎる」
美香ちゃんは誰とでもすぐ仲良くなれる“コミュ力おばけ”だけど、
私のことになると、一気に本気モードになる。
ちょっと恥ずかしくて、でも、それがありがたかった。
「……私のせいじゃないよ。たぶん」
「その“たぶん”が怖いんだよ……」
昔、知り合いの占い師に言われたことがある。
『あなた、ちょっと強めの“浄化体質”かもね』
そのときは笑い飛ばしたけど、今ではなんとなく、納得してる自分がいる。
私がいると、空気が変わる。
表に出ていなかった“何か”が、あぶり出される。
「……まあ、彼氏の話はまた今度でいいや。あれはそれで、いろいろね」
話題を切り上げて、私は美香ちゃんのカップをちらりと見た。
飲み干されたカップの中で残ったココアの跡が何かを示すように無数に散らばっている。
0
あなたにおすすめの小説
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる