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14.漁師ハルと“帰還者”
落ちてきたロボット型の宇宙船
しおりを挟むある夜、そのロボットは空から降ってきた。
直接見た人はいないのだけれども、ドーンというのではなく、ズーンという感じで、落ちたというより降りたという感じだと。浜辺防風林で寝ていた半獣機械鳥たちもびっくりしてどこかに飛んで行ってしまって、昼過ぎだというのにまだ戻ってきていない。
落下速度は制御されてはいたようで、大きな損傷は無さそうだが、かといって完全に安全に着地したというわけでもなかったようだ。
現に、それは砂浜よりちょっと海側に降りてしまったし、体半分ぐらいは水中とその下の砂にめり込んでしまっている。めり込んでいてもその姿は空の幾分かを遮ってしまうほどの高さだ。
そしてロボットは機能停止しているようには見えない。
波と風の音に混じって、ブンブン言う気むずかしいハム音が聞こえてくる。そいつはまだ生きているようだ。
噂を聞きつけた街のヤクニンや、スカベンジャーが大勢やってきて、解体できないかと触れようとする。
しかしそのとたんに何らかの防衛システムが働き、光と音がビビビっと発せられ、機械音声が聞こえてくる。
その言葉は理解できないが、近寄ったら危ないという雰囲気は十分に伝わってくる。
どうやらそれは遙か昔に話されていた言葉らしい。
また、夜にはロボットの各部がホワッと光る様子も見えたと。
もしかして中に誰かいるのかもしれない。そう「オチモノ」だ。
中から様子をうかがっているに違いない。
近寄れないヤクニンとスカベンジャーはそれぞれ距離を置いて浜辺の近くにキャンプを作り、長期戦の構えだ。
軌道の関係でこのあたりじゃオチモノは珍しいが、それだけに地元のものにしたらこのロボットは稀有な贈り物だ。
その機器、素材、オチモノの知識は売り物になる。
「オチモノ」たちも、友好的なら貴重な純粋ヒト種としてその継承されているはずの歴史知識とともにコミュニティに歓迎されるだろう。友好的であれば、だ。
気がかりなのはこのロボットがどう見ても兵器ではないかということ。
古代の兵器に乗る住民が友好的かどうか…
そのハッチが開くまで、みな慎重にロボットを見守る。
1人、漁場を荒らされて憤慨するこのサイボーグ漁師のハルを除いて…
ハルは潮風と海水に晒されて塗装の剥げたピンクの外装をきしませながら浜辺をせわしげに歩く。
天秤棒にかついでいるのは昨日獲って機械部分をはぎ取った機械魚だ。
ハルは一匹の黒猫を引き連れ、毒づきながら砂浜を横切る。
「まったく、あんなのが海ん中でブンブンうなっていたら魚がみんな逃げちゃうよ。
それに役人もスカベンジャーどももマナーが悪いったらないね。
浜辺にゴミをいっぱい捨てて汚してくれる。っていうかこれ、古い魚雷のどんがらじゃねえか。
こんなところでドンパチやらかすつもりかよ。全く、俺が書いたこの看板の字が読めないのかねえ。
ああもう、早く解体して持って行ってくれっての!!」
ごもっとも...
といわんばかりに、ハルの飼い猫のクロも、「ニャー」と声を上げた。
このまま飼い主の漁ができないと彼も腹が減るのである。
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